更新日 2005.05.06 | ![]() |
A Bend in the Road |
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(ジャンル:恋愛) | |
著者:Nicholas Sparks | |
邦訳:なし | |
おすすめ度:★★★★☆ |
背景 | 時は現代、場所はアメリカ、ノースカロライナ州ニューバーン。 |
あらすじ | マイルズ・ライアンは保安官。高校時代からの恋人ミッシーと結婚し、ジョナという息子にも恵まれた。この幸せは永遠に続くかと思われた。 だが、一夜にしてマイルズは不幸のどん底に落とされる。 最愛の妻ミッシーが、ひき逃げされて死んだのだ。 夫として、そして保安官として、マイルズは必ず犯人を捕まえると決意し、事件を徹底的に調査した。だが懸命の捜査にもかかわらず、手がかりは全くつかめない。 そうこうするうちに二年が経った。 小学二年生になったジョナの担任として、サラ・アンドリューズが赴任する。彼女は離婚して人生をやり直すため、ここニューバーンへやってきたのだ。 ジョナの勉強が遅れていることを心配した彼女は、父親であるマイルズと話し合う。マイルズは、不幸な事件と、保安官としての仕事のため、息子の問題に気付いていなかった。サラは彼らに同情し、放課後ジョナの勉強を見てやることにする。 ジョナのことで何度か顔を合わせるうち、マイルズとサラは互いに好意を持つようになった。マイルズは亡き妻ミッシーをまだ愛してはいたが、二年の歳月を経てさびしさを覚えるようになっていた。今までは他の女性に目もくれなかったマイルズだが、サラには特別なものを感じるのだった。 二人はデートするようになり、どんどん惹かれ合っていく。 数カ月後、マイルズはサラとの結婚をも思い描くようになっていた。 ところが事態は一変する。「ミッシーのひき逃げ犯人を知っている」という情報が寄せられたのだ。 その情報によれば、犯人はオーティス・ティムソン。オーティスはさまざまな悪事を働いている悪党だが、いつも抜け目なく立ち回っているため決定的な証拠がなく警察や保安官も表立って手を出せない、という男。特にマイルズとは因縁があり、マイルズは何度もオーティスから嫌がらせを受けている。 そのオーティスがミッシーを殺したと話しているのを聞いた、という情報に、マイルズは冷静さを失ってしまう。令状も取らずにオーティスの住処に押しかけ、頭に銃を突きつけて連行するという強引な手段に出る。 当然、これは問題を引き起こした。検事やオーティスの弁護士は不当逮捕だと言い、オーティスを釈放した。マイルズは容疑者に暴行を働いたかどで停職処分を受ける。 サラは彼に冷静になるよう説得しようとするが、マイルズは耳を貸さない。オーティスが犯人だというのは明白であり、妻を殺した犯人を野放しにするのかと怒りまくる。 だが、事件は更に意外な方向へと動き出すのだった・・・ |
感想 | 物語は最初、ある人物の一人称によるモノローグから始まる。そして三人称で書かれた物語に、この人物のモノローグの章がはさまる、という構成で展開する。 これ自体は珍しい構成ではない。主人公に近い立場にある人(家族や友人など)が、物語を回想する、という形でこのように進む小説はよくある。 ところが、ここがクセモノだった。物語が進むうちに、一人称で書いている人物が、「意外な」人物であり、物語全体に非常に重要な役割を演じているということが明らかになってくる。 私はここにニコラス・スパークスのうまさを感じた。途中でこの仕掛けに気付いた時には、「へぇーっ」と感心してしまった。 もちろん、マイルズとサラの二人の恋愛も抜かりなく描かれている。 高校時代の恋人とそのまま結婚したマイルズには、大人になってから女性をデートに誘った経験がない。だからサラにどう切り出していいかわからず、突拍子もないことを言い出したりする。 そういうぎこちなさがとてもほほえましく、おずおずと進んでいく恋愛が好ましく感じられた。ユーモアも十分発揮されている。 ひき逃げ犯人探し、という観点から言うと、ちょっと「?」と感じるところもある。 どうして事件から二年経って突然情報が出てきたのか、そのあたりのところがきちんと解決されていないように感じた。この疑問は、作中でマイルズの上司であるチャーリーも感じているのだから、作者もわかって書いているはず。ところがそれが説明されないままほったらかしになっているようなのだ。このあと事件が違う方向に展開してしまうため、説明しようにもできなくなってしまったのかもしれない。だとすると構成上のミスと言わざるを得ない。 それから、妻の墓に常に花が供えられていることに、マイルズが何の疑問も抱かなかったというところも納得いかない。そこに事件に関する重大なヒントがあるのだが、保安官のくせに何も気付かなかったのだろうか? もちろん、気付かなかったからこそこの物語が成り立つわけだが、その「気付かなかった」という前提が少々不自然というかご都合主義ではないだろうか。 残念ながらこういったことで星一つ減点。 だがそれを除くと、秀逸な物語であることは確かだ。 マイルズやサラの揺れる心が細かく描写され、こちらも一緒になって二人の行く末を心配してしまう。マイルズが我を失ってサラに怒鳴る場面では、「やめて!」とマイルズを止めにいきたくなった。 この二人は最後にどうなるのか、ハラハラしながら読んだ。なにしろ、この作者は必ずしもハッピーエンドを用意してくれるとは限らないのだから。(読者のために、結末は言わずにおく) |