大型ウッドホーン M2380Wについて
  

 
タイトルバックの写真は、作っては壊した
M2380Wの試作品のひとつです。前から見ると、単にメイプル材の木製ホーンですが、じつはこの後ろに有名なJBLの2380Aホーンが付いている、自慢のチューニング製品です。

JBL2380Aは、定指向性の優れたホーンなのですが、小型化するため、先を切り捨てたショートカット・ホーンになっています。500Hzクロス推奨と言われても、耳の肥えたマニアなら、1000Hz以上でしか使えないのが実情でした。

そこで、M2380Wがやったことは、左メニューの記事にもあるように、メーカーが切り捨ててしまった大切な部分を取り戻して完成させる試みなのです。

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ホーンの歴史は古く、写真のエジソン蓄音機にまで遡ります。
これをまっすぐに伸ばし、サウンドボックスの代りに、ドライバーを付けると、現在でも一般的なエクスポーネンシャル・ホーンになる。指数曲線を、カットオフ周波数(fc)で決まる大きさまで広げるので、2インチドライバーで、500Hzから使う(fc250Hz)なら、直径43cm強、長さ50cm近いラッパ形になります。
一時は、こんな大小のホーンを並べるのが、ハイエンド・マニアのシンボルでした。しかし、円形では指向性が悪いので、扇形にしたり、出口をマルチにしたり、音響レンズを付けたりしたが、どれも一長一短。
やがて、D.B.キールjrがAESに、初めて指向性を重視したホーンの論文を発表したのがきっかけで、JBLやEVから新しい定指向性ホーンが製品化された。2380も、こうして生まれたもののひとつです。

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2380Aは、さすが定指向性の威力で、かなり試聴位置を動いても定位が崩れない。従来の広指向性ホーンとは、一味違った音場感もあります。しかし、長さ24cm弱でショートカットしたため、音質的には、明らかにホーンの良さが半減しています。
そこで私たちは、木製ホーンを前に継ぎ足して大型化した。音道も微妙に修正した。鳴きも押さえ込んだ。木工細工だけでは無理なので、木粉入り樹脂で完全に充填した・・・
これによって、がぜん、2インチ・ドライバーの威力と求心的なまでの音質が発揮されるようになりました。これが新製品
M2380Wですが、一本ずつ手作りのため、現在は受注生産となっています。

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定指向性のショートカット・ホーンを大型化した好例がEVにあります。
500Hzクロス推奨のホーンに、HP940(左)と形も(値段も)倍以上のHP9040という大型版(右)がありますが、比較試聴するとあまりの音質差に愕然とします。
評論家の言葉を借りると、低音の豊かさと安定感は当然として、音の品位、鮮度、音場の見通しが増し、クセっぽさも全く消えて、SNが上がったようにさえ聴こえる、ということになります。

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音を言葉で語るのは、じつに空しいことですが、測定データを見て、ある程度のことは想像いただけるかもしれません。
左のグラフの実線部分がJBL2380A、グレーの部分まで拡大したのがチューニング版
M2380Wの再生帯域です。ホーンを延長したことで、グレー部分の低域が取り戻せて、これなら、本来の500Hzからの使用が可能になったと判断できます。
次回は、実際に、このM2380Wを愛用されている音楽一家、T氏の感想記とホーンを使った4Wayシステムの写真紹介をさせていただきます。