平成25年(2013)上半期


明けて喜寿白味噌雑煮朱の椀に


孫ひとり増えし親族(うから)や雑煮膳


光る糸微かに弛む凧日和


一歳の鉛筆くねくね筆初め


雪山や兎猪鳥鹿の跡を踏む


スキー翔ぶ刹那に少女鳥になり


大気凍つ遠き峰々紛れなし


喜寿中に丑年三代スキー履く


滑降の風を切り継ぐ樹氷界


コーボルトヒュッテ6

今上天皇(プリンス)も囲みし炉あり山の歌


吹雪の夜ハモニカ奏者八十歳


揺る炉の火声帯無き人歌に和す


吹雪く山小屋「ねずみ出ます」の紙黄ばむ


雪の小屋洗面奢侈の暮らしかな


女医炊ぐ男ら雪を大鍋に


ベトナム7

木の洞に兵士秘めし日栃若葉


翻るアオザイの裾古寺凉し


天秤棒揺らす商ひ菅の笠


漢字古碑読めぬ子孫や散り蓮華


宮廷風料理の宴の蜥蜴かな


白服の女ドリアン試食させ


黄昏て機内に匂ふ若布汁


チェジュ

まほろばや溶岩流の洞凉し


汚染の地片栗の花変はりなく


至仏山

断念す指呼の頂上吹雪中


吹奏楽楽器持てざる新入生


強き旭や菜の花を座に鳥海山


母の日や父も感謝の仲間入り


極め難きヨガのポオズや雷響く


後進で客船始動梅雨濁り


雲の峰浮き桟橋の胸揺るる


歳月やギヤマンに透く琥珀色


わが地産梅の実ジャムを白磁器に


立ち上がるつど「どっこいしょ」籐寝椅子


山行はまたも中止に梅雨深む


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