もう一つの演奏会曲目解説(2003年)

作成日:2023-01-22
最終更新日

以下、全く解説になっていない解説です。

モ−ツァルト ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467

私がこの曲を知ったのは、演奏を通してではない。 また、本曲の第二楽章が使われていることで有名な映画「みじかくも美しく燃え」を見たのでもない。 マンガで知ったのである。

しかし、そのマンガは何か、ほとんど忘れている。 記憶の彼方から呼び寄せると、陸奥A子の「ソリの音さえ聞こえそう」である。 少女マンガ誌「りぼん」に掲載された、読み切りのマンガだった。 註:http://www2.plala.or.jp/eiko/ribon/history/r197712.html というページがあったが、現在はリンク切れ。

なぜ「りぼん」を読んでいたかというと、妹が購読していたからだ。 普通男は少女マンガを読まないが、なぜか私は少女マンガが好きだった。 といっても、他の少女マンガ誌は知らない。

さて、「ソリの音さえ聞こえそう」とこの曲の関係について記さねばならない。 これまた遠い記憶になるのだが、こんな感じである。 若い男と若い女が恋仲なのだが、なかなかお互いの感情が相手に伝えられない。しかし、男が女に、 「モーツァルトのピアノ協奏曲第21番を聴きに行きませんか」と音楽会に誘って、 ハッピーエンドに終わる。

私はこのマンガを読み終えて、不思議に思った。なぜ第21番なのか。 私が当時知っていたモーツァルトのピアノ協奏曲は、第20番と第23番しかなかった。 (ひょっとしたら第17番と第19番がそれに付け加わっていたかもしれない)。 第21番は、無名の曲だった。私は当時NHKのFM番組のみでクラシック音楽に接していて、 そのころは第20番と第23番しかFMではオンエアされなかった。それで、 なぜあのマンガで21番を出すのだろうか、 もっと有名な曲があるのに、不思議でならなかった。

私が第21番を初めて聴いたのは、この1年後だったと思う。聴いてはみたものの、 「ソリの音さえ聞こえそう」がこの曲を採用した理由は、見つけられなかった。 第20番や第23番では合わないし、第17番や第19番でも合わないといえるかもしれないが、 それは後になってからの話である。なお、 発表時期の関係からかこのマンガはクリスマスにちなんだ設定がされていたが、 第21番にクリスマスを思わせる雰囲気の個所はどこにもない。 私が邪推するに、第21番は映画で使われたことをマンガの作者は知っていただろう。 そのムードを買って、第21番を採用したのではないか。 しかし、この映画は、或る軍人とサーカス芸人の美女の哀しみの運命を描いたものだそうで、 ハッピーエンドとなるマンガにはどうも合わない。

ちなみにこの曲を採用した映画は「みじかくも美しく燃え」という邦題であるが、 原題は「エルビラ・マディガン」というヒロインの名前だそうだ。 邦題を考えたのは作詞家の岩谷時子さんである。

ついでに調べてみると、岩谷さんはなんとこの第二楽章に歌詞までつけている。 歌っているのは益田宏美(岩崎宏美)である。怖いが、聴いてみたい。

さらについでに言うと、モーツァルトの第23番協奏曲の第二楽章にも歌詞がつけられている。 (作詞者は不詳) こちらは、薬師丸ひろ子が歌ったレコードがあり、私も聴いたことがある。 CD としても手に入るようだ。

ついでにどうでもいいことを並べると、ウルトラセブンでダン隊員が告白するシーンでは、 シューマンのピアノ協奏曲が使われている。当時のプロデューサーは、こちらか、 ラフマニノフの第二番にするかで相当迷ったらしい。シューマンを選択したことに、 確たる根拠はなかったようである。 (別の説では、プロデューサーはラフマニノフの第二番の節が好きで使いたかったが、 そろえられたレコードにはなかったので、レコードとなっているシューマンを使ったという)。

ここまで何が言いたいのかと問われれば、音楽と映画(やマンガ)の関係は、 思ったほど重要な関係とはいえないのではないか、ということだ。

演奏会の案内があります。


MARUYAMA Satosi

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