駒落ちに対して、旧来の定跡ではなく、戦法を固定して臨むことができる。 著者は、次の三種類の戦法を各章で提示する。
これらの戦法に対して、下記の駒落ちをそれぞれ取り上げ、具体的な勝ち方を示す。
これはもう、ものすごく共感する。 先崎さんの本が、旧来定跡と新定跡の並列だったのに対し、 高橋さんの本は、駒落ちという概念を覆していて、 それぞれの戦法から解き起こしている点だ。 特に、飛車落ちの下手定跡とされている右四間飛車からの攻撃は、 もう私は絶対にしたくない。難しいのだ。 この本の著者である高橋さんも、 本書の 75 ページで「この定跡だけはやや疑問視している人も少なくないはずだ」 と述べている。
かといって、山口瞳さんの「血涙十番勝負」で採用した 6 筋位取り戦法も指しこなせない。 どうすればよいだろうか。 平手に応用できるのがいい。
そうなれば、この本の考えかたの通りだろう。 先崎さんの本では、4枚落ちや6枚落ちでは平手の戦法を述べていたが、 2枚落ちは 四筋の位を取る駒落ち特有の戦法、すなわち二歩突っ切りと銀多伝のみの紹介だった。 その点、この高橋さんの本はよい。
平手に応用できるのはよいが、駒落ちであることの意味を考えなければいけない。 たとえば、この本による矢倉戦では、下手玉は8八ではなく、 8七に上がったり(飛車落ち)、 7九のままだったり(飛香落ち)、7八だったり(香落ち)する。 これらの理由は、上手居角の角筋から逃れたり、速攻をするためだったりする。 こういった意味を理解するのがよいだろう。 駒落ちは、弱点があらかじめわかっている平手戦、と考えていいのではないか。
書名 | 駒落ち新定跡 |
著者 | 高橋 道雄 |
発行日 | 2005年 5月20日 |
発行元 | 創元社 |
定価 | 1600 円(本体) |
サイズ | A5版 |
ISBN | 422-75099-6 |
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