「次の一手」ならぬ「次の三手」の問題集。双方の最善手を三手読む。
[初級・中級]篇では駒落ちの下手側も(時には上手側も)取り上げられるのが面白い。
検討を要する局面がいくつかある。以下、局面図を引用する。ただし、表示の都合で、成銀、成桂、成香はそれぞれ艮、圭、禾で表示する。
p.228 では解答として次の図が掲げられている。
☖後手 金歩三 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | ||
香 | 桂 | 香 | 一 | ☗先手 角歩二 | |||||||
飛 | 玉 | 二 | |||||||||
歩 | 艮 | 桂 | 歩 | 歩 | 三 | ||||||
銀 | 角 | 金 | 四 | ||||||||
歩 | 歩 | 歩 | 飛 | 五 | |||||||
歩 | 銀 | 歩 | 歩 | 六 | |||||||
歩 | 歩 | 銀 | 歩 | 歩 | 七 | ||||||
金 | 金 | 圭 | 八 | ||||||||
香 | 桂 | 玉 | 香 | 九 |
解説は次のとおりである。
☗3五飛が好手で☖同金は☗3三角成☖1二玉☗2四桂☖同歩☗2三角成以下詰み。(後略)
この手順で☗3三角成に☖2一玉とすると、後手玉に即詰みはなく、一方で先手玉には☖5九飛の一手詰がある。 先手は☗3五飛☖同金☗3三角成☖2一玉のあと☗3二角☖3一玉を決めて☗7九玉と早逃げすれば先手優位は変わらないが、 次の一手問題としての明快さには欠けると思う。
問題を修正するとすれば、先手の2六の歩を除いて先手または後手に歩を1枚加えることが考えられる。こうすると、 上述の手順で☗3五飛☖同金☗3三角成☖2一玉のときに☗2二歩が利き、☖同飛ならば☗同馬☖同玉☗4二飛以下、 また☖3一玉ならば☗4二角☖4一玉☗5一角成以下、いずれも詰む。
誤植と思われる図面を示す。
p.18 の正解図を示す。
☖上手 銀香歩二 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | ||
一 | ☗下手 歩三 | ||||||||||
竜 | 二 | ||||||||||
歩 | 歩 | 金 | 金 | 銀 | 三 | ||||||
歩 | 玉 | 歩 | 四 | ||||||||
歩 | 角 | 歩 | 五 | ||||||||
歩 | 六 | ||||||||||
歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 七 | |||||
八 | |||||||||||
香 | 桂 | 銀 | 金 | 玉 | 金 | 銀 | 桂 | 九 |
この図では4三の銀が上手の駒になっているが、正しくは下手の駒である。同じページの解説は次の通り。
☗4三銀☖6四玉に☗5五角が決め手の一着で寄せが決まった。☖同玉に☗5三竜☖4五玉☗4六金まで詰み、 下手勝ち。
引用した解説からわかるとおり、4三の銀は下手が打った銀である。もし4三の銀が図面の通り上手の駒ならば、最終の☗4六金まで詰み
とあるが、
詰まなくなる。最初図面とこの解説を見て、解説が間違っていると思ったが、解説は正しく、図面が誤っている。
本文の記述にも誤植がある。
p.36 の解説は次の通りである。
解説
☗4二馬に☖同玉は☗5一角☖3一玉☗3二歩☖同玉☗3三角成☖4三金、☖2二玉なら(後略)
ここで最後2手の☗3三角成と☖4三金の間に☖同桂が抜けていて、かつ☖4三金は先手の手である。4三金以降も詰み上がりまでは手数があるので、 次のように直すべきだろう。
☗4二馬に☖同玉は☗5一角☖3一玉☗3二歩☖同玉☗3三角成☖同桂☗4三金以下、☖2二玉なら(後略)
p.84 の次の三手と解説は次の通りである。
次の三手
☗6一桂成☖8二玉☗7二竜解説
☖同玉に☗6三馬(図)☖8二玉に☗7二金☖9三玉☗8二銀☖8四玉☗7三馬☖同金☗8五金で詰み。 ☗6一桂成☖同玉は☗5一馬☖7一玉☗6一馬☖同玉☗3一竜以下の詰み。
図の曲面から解説前半の手順を追うと、☗7三馬の時点ですでに詰んでいる。おそらく著者は解説を次のように書きたかったのではないか。
解説
☖同玉には☗6三馬(図)☖8二玉に☗7二金☖9三玉☗8二銀☖8四玉☗7三馬で詰み。
☖9三玉には☗8二銀☖8四玉☗7三竜☖同金☗8五金で詰み。
☗6一桂成☖同玉は☗5一馬☖7一玉☗6一馬☖同玉☗3一竜以下の詰み。
p.122 の次の三手と解説は次の通りである。
次の三手
☗8一飛成☖同玉☗7三馬解説
以下☖7二金は☗7四桂で受けなし、 ☖6二玉も☗7三馬で☖5九とに☗5四桂☖5三玉☗5一竜☖5二歩☗同竜☖同玉☗6二馬☖4一玉☗4二金で詰み、(後略)
図は省略するが、上記解説で☗7三馬は王手なので次の☖5九と王手放置になり反則となってしまう。 おそらく著者は解説を次のように書きたかったのではないか。
解説
以下☖7二金は☗7四桂で受けなし、
☖6二玉も☗5四桂☖5三玉☗7三馬で☖5九とに☗5一竜☖5二歩☗同竜☖同玉☗6二馬☖4一玉☗4二金で詰み、(後略)
p.212 の解説は次の通りである。
☖1五歩の詰めろには☗4一角成で☖同金は☗3三銀☖同銀☗同角成☖同玉☗2五桂、 ☖同飛も☗3三銀☖同銀☗同角☖同玉☗2五桂☖3二玉☗4一竜以下詰みで先手勝ち。
ここで2個所出てくる「☗同角成」は正しくは「☗同桂成」である。
p.321 の問題図は次の通りである。
☖後手 金桂歩三 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | ||
竜 | 桂 | 香 | 一 | ☗先手 角金歩三 | |||||||
と | 歩 | 玉 | 二 | ||||||||
歩 | 金 | 歩 | 歩 | 三 | |||||||
銀 | 歩 | 歩 | 銀 | 四 | |||||||
歩 | 歩 | 歩 | 五 | ||||||||
玉 | 角 | 銀 | 歩 | 六 | |||||||
銀 | 歩 | 桂 | 七 | ||||||||
竜 | 香 | 八 | |||||||||
香 | 桂 | 金 | 香 | 九 |
これに対する p.322 の正解の解説は次の通りである。
☗5一角が正解で☖9五金☗同銀☖9七角成☗同桂☖8四桂は☗同角成で詰みを防ぎながら、 ☗2二金☖同玉☗3三角成☖同玉☗3二金☖2四玉☗4四竜☖同金☗2五銀の即詰みもねらった一着。(後略)
この手順で「☗4四竜」に対して「☖同金」と取ることはできない。「☗4四竜」に対しては合駒をする一手でたとえば「☖3四金」だろう。 これに対しては「☗2五銀」で詰む(この場合後手の合駒は何であっても詰む)。なお、3四の後手の合駒は何であっても詰む。ところが、今の詰手順で「☗3二金」に対して「☖2四玉」 ではなく☖3四玉でまっすぐ上がられると☗4四竜には☖同玉で詰まない。この場合は☗4四竜ではなく☗4五銀と出れば詰みだ。 ☖同銀には☗同竜だし、☖2四玉にはそこで☗4四竜である。
p.328 の正解図は次の通りである。
☖後手 銀二歩五 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | ||
香 | 桂 | 馬 | 金 | 玉 | 桂 | 香 | 一 | ☗先手 角歩三 | |||
二 | |||||||||||
金 | 歩 | 歩 | 三 | ||||||||
歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 歩 | 四 | ||||||
歩 | 歩 | 五 | |||||||||
歩 | 銀 | 銀 | 六 | ||||||||
七 | |||||||||||
飛 | 銀 | 金 | 玉 | 八 | |||||||
香 | 桂 | 金 | 桂 | 香 | 九 |
同じページにある正解の解説は次の通りである。
☖3二玉に☗4二馬☖2二玉☗3三馬☖同玉☗4二角☖4三玉☗5三金☖3二玉☗3一角成☖3三玉☗4二馬まで詰みで先手勝ち。
この手順の最後まで追っても詰みではない。☗4二馬としても☖2二玉と下がられて☗3一馬としても☖1二玉となると王手が続かない。 したがって、本文の最終の☗4二馬は誤りで、かわりに☗4三金と捨てなければならない。☖同玉と取る一手なので、そこで☗4二馬とすれば、 本当の詰みとなる。つまり、正解手順は次のようになる。
☖3二玉に☗4二馬☖2二玉☗3三馬☖同玉☗4二角☖4三玉☗5三金☖3二玉☗3一角成☖3三玉☗4三金☖同玉☗4二馬まで詰みで先手勝ち。
なお、将棋盤の図は CSS を用いて作っている。
書 名 | 決め手将棋!次の三手 185 問 |
著 者 | 森 信雄 |
発行日 | 2022 年 2 月 1 日 初版第 1 刷 |
発行元 | 実業之日本社 |
定 価 | 1200 円(本体) |
サイズ | 文庫本サイズ |
NDC | 796 |
ISBN | 978-4-408-64047-1 |
その他 | 草加市立図書館で借りて読む |
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