鉄道における交差と駅構造

作成日 : 2005-06-21
最終更新日:

尼崎駅の構造

たまには、私もまじめなことを考える。 尼崎駅手前で、福知山線の快速電車が脱線し、多数の死者、けが人が出た。 この原因や理由について、いろいろな意見がある。そのなかで、私の友人の意見が気になった。 朝の尼崎駅は、山陽線からの電車と福知山線からの電車がくる。それを、両方の路線とも、大阪方面と、 東西線方面に振り分けている。 これでは、尼崎駅の乗り換えに余裕がなくなる。 一方の遅れが他方の遅れに直結し、 余裕がなくなる、こんな意見であった。

同じ趣旨の意見として、神戸新聞の記事をリンクする(2012年10月18日現在、リンク切れ。 Google のキャッシュはある)。 電車立ち往生日常化 尼崎駅、数十秒差でホームに

さて、私が知る限りで尼崎駅の図を模式的に描くと、こんな風になろうか。

B
\
 \
  \
---===---
A  尼崎駅\  A’
       \
        \B’

AA’は山陽本線(神戸線)、Bは福知山線、B’は東西線である。 現状は、AからA’へ、AからB’へ、BからA’へ、そして、BからB’へとつながる4種類の方向をもつ、 すべての電車がある(以下、このような分岐を便宜上X分岐と称する)。 このような便利だが複雑な構造を整理し、一部例外を除きAA’とBB’のみにすべきというのが、友人の意見である。

友人は関西育ちで関西の路線に詳しい。彼は東京にも何年間か住んでいて関東の路線にも詳しいはずであるが、 関東の路線に対する意見はまだ述べていない。そこで、私が調べてみた。 以降、旧国鉄(現、東日本鉄道株式会社)の東京近辺の路線と、 私鉄の東京近辺の路線の実態を明らかにする。 でも、きっといわゆる鉄ちゃんはやっていると思う。だれか教えてください。

千葉県の旧国鉄

千葉県の鉄道は、房総半島を巡る海に近い方面と、常磐線に代表される陸地を通る方面に分けられる。

海に近い方面の鉄道路線は、昔は鼻メガネの枠に近い形だった (内田百閒の受け売り)。 両国から出た列車は、千葉で2つに別れる。そのうちの1つの枠は外房・内房線であり、外房線と内房線は蘇我で分かれ、 安房鴨川で合流する。もう1つの枠は総武本線・成田線であり、総武と成田は佐倉で分かれ、銚子の手前の駅で合流する。 なお、2つの枠を下支えするのは東金線であり、外房線の大網と総武線の成東を結んでいる。 これらを見る限り、尼崎駅のような4方向の分岐の駅はない。昔はそういってよかった。

しかし今は、蘇我からは京葉線も出ている。京葉線は、千葉を通らず、さらに海岸線に近い経路を選び、 京葉線の東京駅まで行く。 さて、京葉線の電車は昔はすべて東京<−>蘇我の運転であり、蘇我が終点であった。 最近は、内房線の木更津・君津や、外房線の上総一ノ宮、東金線の東金からの直通電車が、蘇我を途中駅として、 京葉線経由で東京に行くこともある。また、内房線、外房線の特急列車は、 すべて京葉線経由である。その数は1割以下程度と思われる。 そして残りの電車は千葉駅止まり、あるいは千葉から総武本線で東京以西に行く電車である。 これを考えると、 蘇我駅はかなり尼崎駅に近い構造といってよい。ただ、気のせいか、そんなに殺気立った感じはしないのではないか。

下の図で、AA’は内房線、AA”は外房線、Bは京葉線である。ABは立体交差(Bが高架)、AA’は平面交差である。

B   A
\  | 
 \ | 
  \|
   ‖蘇
   ‖我
   ‖駅
   |\  
   | \
   |A’\A”

あと、怪しいのは西船橋駅である。こちらは、AA’に相当するのが総武線、Bに相当するのが東京地下鉄東西線、 B’に相当するのが東葉高速鉄道である。通常AA’、BB’は直通であり、他の組み合わせはない。 しかし、朝夕のラッシュ時のみ、A’Bの路線がある。しかし、割合は少数。また、AB’の路線はない。 そのため、尼崎ほどの問題は出にくいと思われる。ABの交差なし、A’B’は立体交差(Bが高架)である。 なお、下の図には、南北にまたいでいる武蔵野線は描いていない。

         B’
        /
       /
      /
ーーー===ーーー
A /西船橋   A’
 /     
/       
B

陸地を通る方面でいえば、常磐線のほか武蔵野線がある。しかし、4方面にまたがる合流はない。

埼玉県の旧国鉄

埼玉県の旧国鉄は、大宮駅を中心に考えるとよい。新幹線をはじめ、高崎線、東北本線(宇都宮線)、京浜東北線、 埼京線、川越線が集積する、一大ターミナルである。しかし、この駅でこんがらがることは少ない。 まず、上野から来た高崎線は、高崎方面と宇都宮方面で分かれるY分岐である。京浜東北線は終点である。 埼京線と川越線は直通である。したがって、ややこしい事態は起こらないはずである。

しかし、ときどき埼京線から高崎線や宇都宮線に抜けてしまう電車がある。湘南新宿ラインと呼ばれる電車で、 この路線は大宮から東北貨物線を通って池袋にいき、池袋から埼京線に合流する。 ということは、湘南新宿ラインを考慮すると、X分岐は大宮駅にもある。 湘南新宿ラインの本数は、まだ調べていない。

下の図で、AA’は高崎線、AA”は宇都宮線、Bは湘南新宿ラインである。高架か、平面交差かは不明。

  A’  A”
  |  / 
  | / 
  |/
  ‖大
  ‖宮
  ‖駅
 Г⌒ヽ
 | |
 | |
B  A

そのほか、武蔵野線と南武線どうしの乗り入れ、武蔵野線と埼京線の乗り入れが行なわれるが、 よくわからない。一度武蔵野線から鎌倉駅直通という電車に乗ったが、どこを通っているのかさっぱりわからなかった。

神奈川県の旧国鉄

私が生まれ育った県だが、鉄道事情には疎い。東海道線近辺は、湘南新宿ラインの影響でややこしいことにはなっている。 しかし、尼崎のように一つの駅ですぐ行き先を分岐する作りにはなっていない。 また、宇都宮線の直通は横須賀線のみ、高崎線の直通は東海道線のみとしていて、闇雲に種類を増やすことはしていない。 これが救いか。

ややこしいといえば、鶴見線の支線がいくつもあることだろうか。これは、そんなに問題とはならないだろう。

ほか、南武線、横浜線、相模線などがあるが、4方向をもつ駅はなく、問題にはならない。

東京の旧国鉄

3方向の分岐はあるが、X分岐はないはずだ。

私鉄

X分岐はないが、怪しい例があるので探ろう。

京成線

隣接する青砥駅と京成高砂駅の間が恐ろしい。 青砥からは上りが上野方面Aと押上方面Bの2系統となり、 京成高砂からの下りは、京成本線A’、金町線B’、北総開発鉄道C’の3系統となる。 どのような路線になっているのか、見当もつかない。

路線としては、上りはCB,CA、A’B、A’A、B’B、B’Aの6種類の組み合わせがすべてある。 ただし、金町線B’はほとんどが京成高砂との間の折り返しで、ラッシュ時はBの押上がほとんどのパターンである。 下りは調べていないが、ほぼ同じだろう。よく電車を捌いているものだと思う。

その後、金町線B’は2010年7月5日からすべて京成高砂との折り返し運転になった。

               B’
              /
             /
            /
---===--====---C
A /青砥   京成高砂\   
 /           \
/             \A’
B

それから、京成千葉線と新京成線をつなげようとする計画があると聞いている。 これが実現したとき、 津田沼駅の電車はどうなるのだろうか、心配である。

東武線(スカイツリー線、伊勢崎線、日光線)

近鉄に次いで路線キロ数で日本第2位であるが(2000年までは名鉄が第2位だった)、 それほど難しい駅はない。 気になるのは、東武本線(伊勢崎線―通称スカイツリー線)北千住駅である。 北千住では、上り方面が浅草行と、東京地下鉄日比谷線との相互乗り入れ用に分かれる。 一方、東武は北千住駅から北越谷駅までは複々線であり。 各駅停車と優等列車(準急、急行、特急など)の線路は別である。 基本的には、各駅停車は大多数が日比谷線に乗り入れ、浅草方面に向かう列車は少ない。 一方、優等列車はすべてが浅草行か途中の曳舟から押上経由で東京地下鉄の半蔵門線に乗り入れる。 日比谷線に乗り入れる優等列車はない。

東武動物公園からは、日光線と伊勢崎線に分岐する。ここは平面交差なのでいろいろ支障はあるが、 X分岐にはなっていない。

私が心配しているのは、東武線沿線の住民が、 「優等列車の日比谷線乗り入れ実現」を目指して運動をしていることだ。これが実現すると、 一種のX分岐となり、尼崎駅の複雑な構造が北千住駅にも持ち込まれることになる。

東武東上線は、複雑な構造はなかったが、副都心線の渋谷延伸で一変した。 東京地下鉄のところで説明する。

西武線

西武線はほとんど乗らないので私にはわからないが、 おそらく複雑な構造はないと思われる。 西武線の問題は、高架が少なく、踏切が多いことである。 なお、東京地下鉄の項を参照。

小田急線

小田急線も、おそらく複雑な構造はないと思われる。 複々線化が進んでいること、多摩急行や湘南急行という、 停車駅が異なるパターンができたことから、全体として複雑化する傾向にはなっている。

代々木上原駅で、上りは新宿行と東京地下鉄千代田線乗り入れの電車に分かれる。 地下鉄からの直通はすべて多摩急行として、新百合ヶ丘から多摩線に入る。 X分岐ではあるが、種別に固定しているということで複雑さは少し減っている。

東急線

東急線は路線が各所で交わっているが、交差駅で分岐することはない。 ただ、いくつかの路線が延伸されたので、 それに乗じて運行パターンが変わった。東京地下鉄の項参照

京浜急行

京急線も複雑ではないと思う。ただ、京急蒲田駅で、羽田に向かう直通電車が、 東から来る品川方面からのものと、 西から来る横浜方面からのものの両方あるのが変わっている。 利便性としてはいいが、中には間違えそうになる乗客もいると思う。対策を怠らないでほしい。

地下鉄

地下鉄のうち、2013/3/15までは、東京地下鉄、都営地下鉄ともにY字型にとどまり、 X分岐のような複雑な構造はなかった。 しかし、2013/3/16に副都心線が渋谷に延伸されたことで、状況は一変した。 小竹向原の駅は、大変なことになっている。 詳しくは Wikipedia の小竹向原駅の図を参照してほしい。 概略は次の通り。

             
             
            D
       / ̄ ̄ ̄ ̄ 
---====-----C
A /小竹向原\   
 /       ̄ ̄ ̄ ̄D
/            
B

小竹向原から下りでは、Aの和光市方面(有楽町線経由東武東上線)とBの練馬方面(西武有楽町線)がある。 上りでは、Cの新木場方面(有楽町線)とDの渋谷方面(副都心線)がある (Dが2本あるのは、上りと下りを意味する)。 これらは、A-C、A-D、B-C、B-Dがすべてあるので、 混乱をもたらす。ちょうど尼崎の駅構造と同じである。 多少の不便は覚悟で、A-CとB-Dに固定すべきではないかと思う。(2008-09-15)

副都心線が、2013年3月16日から渋谷での東急東横線との直通運転を開始した。 ここで、Dの渋谷方面が横浜まで、さらには横浜高速鉄道:みなとみらい線の元町・中華街駅まで伸びたことで、 非常に制御しづらくなっている。

なお同日、東急東横線と東京地下鉄日比谷線の相互乗り入れが中止されている。 当然の判断と思われる(2013-04-16)。

番外:広島駅をはさむ構造

旧国鉄の広島駅からは山陽本線のほかに可部線、呉線、芸備線が出ている。 このうち芸備線は他路線との乗り入れはない。 一方可部線と呉線は乗り入れがある。模式図は次のようになる。

B               
\              
 \            
  \          
---===-(略)-===-(略)-===---A’
A   横川       広島      海田市\
                        \
                         \C

A-A’ 山陽本線
B    可部線
C    呉線

山陽本線では、広島発着はほとんどない。 一方、可部線と呉線はほとんどが広島着だが、 可部線は広島より東の山陽本線や呉線に直通する列車もある。 同様に、呉線も広島より西の山陽本線や可部線に直通する列車もある。 したがって、分岐構造が存在する。

ここで興味深いのは、海田市の西で呉線と山陽本線が立体交差することだ。 広島から海田市(かいたいち)に向かう呉線の列車と、 海田市から広島に向かう山陽本線の列車はぶつからない。

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MARUYAMA Satosi