10 分間のピアノ名曲

作成日 : 2022-03-09
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なぜ 10 分間なのか

学生のころ、発表会に出ることがあった。発表会では多数が申し込む一方で時間の制約があるから、 一人当たりの持ち時間が制限される。その制限時間が 10 分間や 15 分間ということが多かった。 ということは、その制限時間内で弾ける曲を弾けばいいのではないか、と考えた。 本当は自分の弾きたい曲から選ぶのが本筋だが、逆に制約から決めるというのもいいかもしれない。

ここでは名曲と銘打っているがこれは主観である。 演奏時間は Duckduckgo で検索した動画から推定した。

バッハのトッカータ集

バッハのトッカータはあまたあるが、ここではチェンバロ用の 7 曲 BWV 910-916 を指す。 これらはどれもトッカータ部分とフーガ部分に分かれている。 トッカータ部は緩やかな部分と急速な部分のいずれか、あるいはこれらの組み合わせになっている。 有名なのはハ短調 BWV 911 で、 これは 10 分以内におさまるかぎりぎりである。 私が好きなのは ト短調 BWV 915 で、トッカータ部分がトッカータの特徴をよく表している。 こちらであれば 10 分以内に収めるのは容易だろう。

バッハの組曲

バッハの組曲は通常 15 分から 25 分ほどかかるが、繰り返しを適宜省略すれば 10 分以内に収められるものがある。 たとえば、フランス組曲第 5 番ト短調 BWV 816 など候補に挙がる。

バッハの平均律

平均律は、前奏曲とフーガの組み合わせで 10 分以内になるものがある。 テンポをうまく取れば第1巻のロ短調 BWV 869 は 10 分以内となる。ただし、 前奏曲の繰り返しは前半・後半とも省略しないとならないだろう。

ヘンデルの組曲

ヘンデルの組曲もバッハの組曲同様 15 分から 25 分ほどかかるが、 繰り返しを適宜省略すれば 10 分以内に収められるものがある。 たとえば、組曲第 5 番ホ長調 HWV 430 は、最後の変奏が「調子のよい鍛冶屋」または 「愉快な鍛冶屋」として知られている。組曲全部を通して弾かれる機会はほとんどないので、 おもしろいかもしれない。私が 10 分間の制限がある発表会で弾いたのがこのヘンデルの組曲第 5 番だった。

ハイドンのソナタ

ハイドンのソナタも通常 15 分以上かかるが、小ぶりなものもある。また繰り返しをやめれば 10 分以内におさまるものもある。ホ短調 Hob.XVI:34 がいい例だ。

モーツァルトのソナタ

モーツァルトのソナタも通常 15 分以上かかるが、小ぶりなものもある。また繰り返しをやめれば 10 分以内におさまるものもある。ハ長調 KV 545 がいい例だ。

ベートーヴェンのソナタ

ベートーヴェンのソナタは通常 20 分以上かかるが、小ぶりなものもある。 第 22 番 ヘ長調 Op.54 は、「ワルトシュタイン」と「熱情」の間に挟まれて日の目を見ないが、 私は好きだ。ただ、第1楽章は速めに弾かないと 10 分ではおさまらない。

シューベルトの即興曲

シューベルトには、D899 (Op.90)と D935(Op.142) という即興曲集がある。 このうち、10 分の名曲にふさわしいのが D935 の No.1 (へ短調)とNo.3 (変ロ長調)である。 へ短調は速めに弾かないと 10 分ではおさまらない。 また繰り返しが多い。これは、リピート記号の繰り返しではなく、 定量的に書かれている同じフレーズが多いという意味である。そのため、うまくひかないとだれてしまう。 No.3 は変奏曲で、こちらはリピート記号を使っているので適宜省略できるだろう。

ショパンの曲

ショパンの曲は奏者によって演奏時間がかなり異なることをお断りする。 だから演奏によっては 10 分を超えるものもあれば、9 分を切る演奏もある。

10 分の名曲となるとバラード第1番ト短調 Op.23 だろうか。ほかにも、舟歌嬰ヘ長調 Op.60 がある。 スケルツォは 4 曲とも 10 分前後だが、この中では第 3 番が比較的短く 10 分以内で弾くことは可能だ。 第 4 番は逆に長く、10 分以内で弾くことは至難だ(ホロヴィッツは 8 分台で弾いているが)。 第 1 番、第 2 番は自分が信じたテンポで弾いて、それで 10 分を超えるなら演奏会に出すのはあきらめるべきだ。 この 2 曲は収めるだけなら中間部を速く弾けばいいだけだからだ。

リストの曲

リストのハンガリー狂詩曲第2番嬰ハ短調が、有名でかつ 10 分以内という条件にあてはまる。 名曲かどうかということだが、私は名曲だと思う。それから、「2 つの伝説」S.175 の第 1 曲 「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」は 10 分で収まるだろう。

アルベニス「アスレーホス」

だいぶ時代は下ってアルベニスである。この「アスレーホス」は未完成のままアルベニスは亡くなっており、 グラナドスが補って完成させた。演奏会向きではないと思うが、名曲だ。

フランクの曲

フランクのピアノ曲で有名なのは「前奏曲、コラールとフーガ」や「前奏曲、アリアと終曲」がある。ただ、どちらも 20 分前後かかる。 「前奏曲、フーガと変奏曲」はオルガン曲からの編曲であるが、版と速さを選べば 10 分以内に収まる。これも、演奏会に出すには派手さがそれほどないが、 私は好きだ。

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MARUYAMA Satosi