ナツメ社から、「フランス語・イタリア語・スペイン語が【同時に】学べる本」 (以下、同時本) という語学本が出ている。魅力的な題名なので、2008年10月26日に買った。 その後で、Amazon の書評を見ると、星が1つから5つまでと、見事にばらばらである。 さてどうしたものか。星が1つの書評では、その理由に誤植が多いことが挙げられている。 ナツメ社のホームページにも、 正誤情報 (www.natsume.co.jp)のお知らせがある。 これはいいのだが、見つかった版数、直った版数が書いていない。これはおかしい。 私が買ったのは2007年3月20日第8刷で、 この刷ではナツメ社にある正誤情報はすべて直っている。 では誤植がなくなったかというと、まだある。
ページ | 誤 | 正 |
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p.13 前から8行目 | クエスティオン | ケスティオン |
p.14 後から3行目 | Árica | África |
p.41 後から5行目 | A rivederci | Arrivederci |
なお以前は、 p.15 前から13、14行目のアンシエンヌマンはアンシェヌマンであるべきという記述をしたが、 これはもうどちらでもいいのかなと思っている。
エスペラントは、かなりラテン諸語の語彙や文法を取り入れている。 そこで、エスペラントとこれら3国のことばを相互に比較しよう。
エスペラントのアルファベットは28文字である。ラテン文字のうち4文字 q, w, x, y, はなく、 代わりに字上符のある6文字 ĉ, ĝ, ĥ, ĵ, ŝ, ŭ が使われる。
エスペラントの母音は 5 種類で、スペイン語やイタリア語と同じ。
エスペラントの子音は、次の通り。
シュʃ | ジュʒ | チtʃ | ヂdʒ | ツts | ヅdz | |
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フランス語 | ○ | ○ | × | × | × | × |
スペイン語 | × | × | ○ | × | × | × |
イタリア語 | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
エスペラント | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
エスペラント(文字) | ŝ | ĵ | ĉ | ĝ | c | × |
上の3語は、同時本を参考にした。しかし、同時本には必ずしも言及されていない項もあるので、 それは私が調べて補った。エスペラントは上記の通りで、それぞれの文字が1対1に対応する。 なお、dz に相当する音はないはずだが、例外は edzo (夫)である。 田中克彦は、この edzo を設計のミスと指摘している。
エスペラントは原則書いてある通りに読めばいいが、 アンシェヌマン(相当の規則)に気をつける必要がある。 たとえば、malamiko (敵)は、マラミーコではなく、マルアミーコと読まなければならない。 これは、malamiko は 反対を表す接頭辞 mal に続けて、友の意味の amiko をつなげたことばだからで、 これがわからないとマラミーコと読んでしまう。ドイツ語のようだ。
エスペラントには存在しない。名詞はすべて o で終わる。
エスペラントはすべて名詞にjを付ける。
エスペラントはすべて定冠詞はla。
エスペラントの形容詞は a で終わる。名詞の数に一致して、複数ではaj となる。 場所は通常名詞の前。
エスペラントに不定冠詞はない。
フランス語では、voici や voilà を使う。 イタリア語では ecco で間に合う。 スペイン語では aquí tienes (「きみ」呼びかけの相手) aquí tiene (「あなた」呼びかけの相手)や aquí están が取り上げられている。tiene(s) と están をどう使い分けるかは、 書かれていない。 エスペラントでは jen を使う。
エスペラントで estas は「…がある」「…に等しい」という意味である。
「~にある」という表現は、エスペラントでは estas を使える。
Libro estas sur la tablo. 本がテーブルの上にある。
この本で取り上げられた語のうち、イタリア語とスペイン語では、 「…がある」と「…に等しい」を区別する。
ヨーロッパの諸言語は、よく使われる動詞は不規則変化である、という法則が成り立つのではないか。 特に使われるのは be 動詞に相当する先の estas であったが、 もう一つエスペラントの havas にあたる動詞も不規則である。 スペイン語ではさらに、完了の助動詞としての英語でいう have と、 「持つ」という意味の本動詞としての英語の have は異なる。 完了の助動詞は haber 、持つという本動詞は tener である。もちろん、 フランス語、イタリア語、スペイン語すべての動詞で人称・単複の活用がある
ちなみに、エスペラントの havas には助動詞としての用法はない。英語で言う完了形がないからだ。 (2013-01-19)。
否定は ne を使う。
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