荒木 不二洋:統計物理の数理

作成日:2004-12-21
最終更新日:

はじめに

物理学で古典統計力学を学んでいて、わけのわからない熱力学が多少は体系付けられたような気がして、 わずかだがうれしかった。 しかし、この本の内容は、物理学の統計力学というより、数学の統計力学という雰囲気がする。 考えてみればあたりまえだ。応用数学のシリーズの一書物なのだから。 著者は、まえがきで「(第2章は)多少難解であっても,これを解読して, 統計力学の数理の真髄に触れていただきたいと念願する.」と記している。 著者の期待に応えられないのが残念だ。

まずはことばから

どんな学問でもそうだろうが、始めのうちはことばの定義を理解するのにひと苦労する。 統計力学では、エルゴード性とか、リウヴィルの定理だとかで頭がおかしくなる。 まず、エルゴード性とは何か、調べよう。

エルゴード仮説

時間平均と集合平均(アンサンブル平均)は等しいという考えを、エルゴード性をもつという。 これを仮定すると話がうまく進むので、たいていはこれが正しいとして進める。

では時間平均とか集合平均とかは一体何なのか、といわれると困ってしまう。 そこで、奈良先端大学院大学 (NAIST) の kaji 氏による説明を手掛かりに考えたい。

http://is-edge.naist.jp/Edge/2013/08/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%81%BF%E8%A7%A3%E3%81%8F%E3%83%AA%E3%83%86%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%BC/

ここでは、エルゴード性とは、「個々の情報源に個性がないこと」と理解する。一つの例として、

工場から出荷されるサイコロを無作為に 1 個選び出し,そのサイコロを 100 回振ったところ, 1 の出た回数が 17 回だった. この結果から,サイコロが 1 を出す確率を 17/100 ≒ 1/6 と推測した.

なるほど。そう考えればいいのか。この100 回のサイコロ振りが時間平均である。 では、アンサンブル平均は何か。上記の説明では触れられていないが、工場から出荷されるサイコロをすべて(たとえば 100 個)振ったところ、 1 の出たサイコロが 17 個あった、という事実があれば、時間平均とアンサンブル平均が一致する、というわけだ。

なお、エルゴードということばは、物理学者ボルツマン(Boltzmann)による造語で、 ギリシア語の ergon (仕事)と同じくギリシア語の hodos (経路)をもとにしているとのことである。

リウヴィルの定理

分布関数は相空間内のすべての軌跡に沿って定数である、というのがリウヴィルの定理である。もう少し自分のことばに直す練習が必要だ。

数式の記述

数式表現は ASCIIMathML を、数式表現はMathJax を用いている。

書誌情報

書 名統計物理の数理
著 者荒木 不二洋
発行日1994 年 8 月 4 日
発行元岩波書店
定 価3883 円
サイズ
ISBN4-00-010521-3
NDC

まりんきょ学問所数学の部屋岩波講座 応用数学 対象 > 荒木 不二洋:統計物理の数理


MARUYAMA Satosi