大規模小売業および小規模小売業における最適販売価格:日本応用数理学会誌2009年12月号

作成日:2009-07-04
最終更新日:

大規模小売業および小規模小売業における最適販売価格

難しそうだが、なんとか読めそうだ。まず、この論文の基礎となっているホテリングのモデルを調べてみた。

線分 [0, 1] 上のある点に、会社 X と会社 Y が出店を計画している。下記の条件を満たすとき、X と Y はどこに出店するか。

  1. 線分上の住民密度は一定である
  2. 出店する会社は X と Y のみである
  3. X も Y も売るのは差別化されていない商品である(例:同じ商品)。
  4. 住民は自宅から近い店に行く。等距離の場合は、確率 50 % でいずれかの店に行く。
  5. X も Y も利益の最大化を目的とする
  6. X も Y も相手の店の情報(存在、利益最大化)を知っている

上記の場合はX , Y のいずれも線分の中央 `1/2` に出店することが知られている。導出も可能である。 この結果を用いると、異なるコンビニエンスストアが隣接して立地する理由もわかる。

さて、このようなモデルは大学入学試験にも出ている。以下、引用する。(東京大学 後期入学試験 総合科目 II 第1問 B)

ある町に1本の大通りがありその通りに沿って1[km]にわたって均等に人が 住んでいる。そこに何軒かのコンビニエンスストア(コンビニ)が出店を考えている。 住民は 1 日 1 回,いずれかのコンビニに立ち寄る。また,その際, 住民は自宅に一番近いコンビニに行く。各店は自分の店に来る客の数をなるべく多くするように出店位置を決める。

以上の状況を数学的に表すために客が区間[0, 1]の上に均等に分布しており, 店の出店位置は, [0, 1] 上の1点で表されるものとする。問題を分析しやすくするために, 複数の店が同じ場所に出店することも可能であるとし,その場合には, その場所にやってくる客を各店が等分するものとする。たとえば,店がX,Y, Zの3軒あって, それぞれの出店位置を` x, y, z ( 0 <= x, y, z <= 1)`とし, 仮に`x = y < z`が成り立っていたとすると,来客数(の割合)は, XとYがそれぞれ
`1/2 xx (x + z)/2 = (x + z) / 4`
となる一方, zは
`1 - (x + z)/2`
となる。

(B-1) 店がX,Yの2軒のときを考える。それぞれの出店位置をx,yとする。

  1. `x < y` のとき, Yの位置は変えずに, X だけ適切に出店位置を変えれば X の来客数を増やすことができることを示せ。
  2. `x = y != 1/2 `のときYの位置は変えずにXだけ適切に出店位置を変えれば X の来客数を増やすことができることを示せ。
  3. `x=y=1/2` のとき X, Y のどちらに着目しても 他の店の位置は変えずに自分だけどのように出店位置を変えても 自分の店の来客数を増やすことはできないことを示せ。

c. のような状況―すなわちどの店に着目しても他の店の位置は変えずに 自分だけどのように出店位置を変えても自分の店の来客数を増やすことはできない状況― を「均衡」という。店が3軒以上の場合も同様である。

(B-2) 店がX,Y, Zの3軒あるときを考える。それぞれの出店位置を`x,y,z` とする。

  1. `x < y < z` の場合は,均衡にならないことを示せ。
  2. `x = y = z` の場合は,均衡にならないことを示せ。

(B-3) 店が4軒あるときを考える。このとき均衡は存在するか。もし均衡が 存在するとすれば, 4軒の出店位置はどのようなものになるか。理由を添えて述べよ。

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