長田 弘:メランコリックな怪物 |
作成日: 2009-08-28 最終更新日: |
詩「メランコリックな怪物」、「生まれる前に死んだ子供」、「メランコリックな肖像」の3章を収める。
買ったまま読んでいなかった詩集である。 改めて、一つ一つ、ゆっくりと読んでみたい。 今回は、「メランコリックな肖像」のなかの「ディヌのことを憶えている」を見てみよう。
ディヌ、とは夭折のピアニスト、ディヌ・リパッティのこと。 彼の最後となる、ブザンソンのコンサートのコンサートを語っている。 いろいろなイメージが出てくる。現代詩だから、これぐらいのイメージと格闘しないといけない。
死とコルクのフーガについて むしろ羞恥に似た自負をこめて あのときあなたはたしかに語ろうとした
彼のブザンソンコンサートのプログラムを見る限り、 フーガは曲目にはない。おいかけっこ、ほどの意味だろうか。 それでは、コルクがここに出てくるのは何か。 著者は他の詩でもコルクを出す。 弾力性に富むことだろうか。水を通さないことだろうか。自然からできるものだからか。 独特の紋様を言っているのか、わからない。そのままにしておく。
今日あなたの火のピアノがおびただしい燠になる
燠(おき)、ということば何か。火勢が盛んで赤く熱した炭火、あるいは、 薪が燃えたあとの赤くなったもの、ということだ。どちらだろうか。 ディヌはほどなく死ぬのだから、やはり燃えたあとのものだろうか。 ピアノは巨大だ。どんな燠になるのやら。
そんなことで、ディヌのイメージを多様にできるかもしれない詩である(2009-08-27)
書 名 | メランコリックな怪物 |
著 者 | 長田 弘 |
発行日 | 1979年5月25日(初版) |
発行元 | 晶文社 |
定 価 | 980円(本体) |
サイズ | 170ページ、四六判 |
ISBN | 0092-3512-3091 |
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