多くの書を世に出して来たルソーだが、晩年は失意の時を送る。自省と諦観の中にときおり燃え上がる情熱を見せる美しい内省録。 原題は、Rêveries du promeneur solitaire。
感想はなかなかまとめられないのだが、この本を知ったきっかけについて記す。
私は学生時代、ある地方都市で塾の講師のアルバイトをしていた。講師室で休憩していると、大学で政治学を専攻している講師が私に話しかけてきた。
「ルソーの本は読んだことある?」
「いや、私は全然読んだことありません。名前だけなら『人間不平等起源論』とか『エミール』とかは知っていますが。」
「『人間不平等起源論』はカス。『エミール』はまだいいが、読むんだったら『孤独な散歩者の夢想』だよ。薄いからすぐ読めるよ。
ルソーだけじゃなくて、思想家の書いた本の中で、一番だね。」
この話はすぐに忘れてしまった。その後卒業してある会社に就職した。 会社員生活はつらく、退職して先の塾の講師を定職にしようかとまで思いつめた。 ある休みの日その塾を訪ねた。知った人がいたかどうかは今となっては忘れた。小一時間ほど講師の誰かや誰かと話をしてその日のうちに帰った。 帰りの電車の中で、塾に就職するのも楽ではなさそうだ、とぼんやり考えた。
その後いやな会社員時代は続けたが、ふとしたはずみで『孤独な散歩者の夢想』を思い出し、会社近くの本屋に出かけた。 この本屋は昔の本屋の典型で、狭く、薄汚く、ごみごみしていた。 取柄は昔の売れ残った本が多く残っていることだった。特に2階に上ると、古いままの岩波文庫が眠っているのだった。 この本は昭和 61 年ごろ買ったのだが、この本も含めておそるべきことに★のマークで定価が表示された岩波文庫がごろごろあった。
この本の読み手はたくさんいる。私が付け加える必要はあるまい。
書 名 | 孤独な散歩者の夢想 |
著 者 | ジャン=ジャック・ルソー |
訳 者 | 今野 一雄 |
発行日 | 昭和35年2月5日第1刷、昭和47年8月10日第14刷 |
発行元 | 岩波書店 |
シリーズ | 岩波文庫 |
定 価 | 不明(星2つ) |
サイズ | 文庫版 |
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