プロセスガイドラインを読む

作成日: 2003-08-11
最終更新日:

ITコーディネータになるための研修では専用の教材を使う。 この教材はITSSPという機関から出されたプロセスガイドラインに従っている。 また、プロセスガイドラインはITコーディネータを取得するための各種試験の基礎でもある。 当時のガイドライン(β版)を読んで、 いろいろ思うところがあるので書いた。それが下記の雑文である。

その後 http://www.itc.or.jp/about/guideline/ にある通り版を重ね、 現在は Ver. 2.0 である。電子書籍として購入可能であるが、私は見ていない(2014-09-21)。

共通:プロジェクトマネジメント

計画と実行の順序

計画を立てること、これが大事だといっている。 しかし、計画を立てることは難しい。 実際の活動を行うにあたって、次回の計画につながるように、 必要な計測を行うべきなのではないか。 つまり、プロジェクトを固定してPから始めるAで終わると考えずに あるプロジェクトのDから出発して、次のプロジェクトのPに結びつける と考えないといけないのではないか。

C?O

最近 C?O という書き方がはやっている。最初の C は Chief、終わりの O は Officer である。 ゆえに、最高?責任者と訳す. 真中の ? にはいろいろな英文字が来る。有名なところでは、 CEO, COO, CIO, CFO がある。ITC では、CSO という役職をもってきた。 真中の S は Senryaku ではなくて Strategic (戦略)の S である。 ゆえに、最高戦略責任者あるいは経営戦略責任者と訳される。 この CSO と協創して ITC は活躍するということである。 しかし、わざわざ CSO という名前をつけなくても、 社長で十分ではないかと思うのだが、どうだろう。 社長が情報技術についての理解がなければ、CSO や ITC やシステムがどんなに立派でも画に描いた餅になってしまう。

管理と監理

土木・建築関係以外の人は、あまり監理という文字はなじみがないと思う. 私もなじみがない。 監理は、管理にくらべて監督下におく、取り締まるという意味が強いようだ。 住宅建築関係の方に聞いたら,管理は現場の監督であり、 監理は設計まで含めて全体的に見ることをいうのだそうだ。 監理は監の字の一部をとって「さらかん」、管理は管の字のかんむりから 「たけかん」と呼ばれる。 モニタリングまで含めれば、監理という用語はふさわしいかもしれないが、 もっと適切な用語があればそちらにしたいとも思う.

なぜ Q,C,T か

プロジェクト管理をふだんの業務としている人が、疑問に思うのが Q,C,T である。 なぜ疑問に思うかというと通常は Q,C,D で挙げるからだ。D はDelivery の略とされる (Date とされることもある)。Deliveryは普通納期といわれる。 もし、Delivery が納期と訳されるのであれば、Delivery を嫌って Time としたのもわかる。 何も成果物を納める時期だけでなく、すべての活動で時間が重要な要素であることを意識するため、 と解釈できるからだ. でも、やはりQ,C,Dのほうがなじみがあるなあ。

なぜ PMBOK か

IT コーディネータの参考教材(リファレンス)は、 世界の優れた標準を採用するという考えと聞いた。 なるほど、PMBOK は世界的に知れ渡っていて、層も厚い。 プロジェクトマネジメントの考えを世界に広めた功績は大きいだろう。 しかし、PMBOK でなければならない理由はあったのだろうか。 PMBOK を生み出した母体 PMI(Project Management Institute、 プロジェクトマネジメント協会) はアメリカの営利団体である。 また、著作権の扱いにも厳しいということである。 PMBOK をほぼそのまま出した本があったが、 まもなく発売中止になってしまった、と聞いている. このような PMP の強い規制のなか PMBOK を広げるのは、 中途半端な扱いとなってしまい、効果がないのではないか。 いっそのこと、デジュールスタンダードの ISO 10006 を扱ってみてはどうだろうか。 PMP とは細部の違いはあるものの、 骨組みは同じと思ってもらってもいいだろう。 PMP にあって ISO 10006 にないものは品質のスコープがないことだが、 これは、ISO 9001 でカバーしているという考えと説明されている. 一方、 PMP になくて ISO 10006 にあるものは戦略決定プロセスであり、 この意味では、より ITC のプロセスに則していると考えられる. なお、日本発のプロジェクトマネジメントの考え方である P2M も考慮の対象に入れるべきかもしれない。

戦略情報化企画

フェーズの名称

この4つのフェーズの名称と順序は次のようになっている。

  1. 方針確定
  2. 評価
  3. 戦略計画
  4. 戦術計画

なぜ方針確定後にいきなり評価して、計画を立てるのだろう か. 計画を立ててから評価するのではなかろうか. こんなことを思っていた。 中身を見てみると、II 評価の主眼は「ベースラインを設定すること」 である。ベースラインということばはITのみならず、商売の分野でよく出てくることばである。 ベースラインとはわかったようなわからないようなことばである。 はっきりと意味を説明したものはないが、ここでは「仕事を進める上で、 関係者が合意すべき共通の土台となる仕様(計画、考え方など)であり、 その後の進捗にしたがって変更されるときも、このベースラインからの 差分として管理されるべきもの」と捉えておけるだろう。 ではなぜここで「評価」ということばで第IIフェーズとするのだろう。 納得がいかない。裏を返せば、このIIフェーズが「ベースライン確定」という名前であれば、 理解できるのだ。

情報化資源調達

誤植、誤訳など

全体的にガイドラインは、英語による元ネタがあって、それを訳しているように感じる。 情報化資源調達フェーズでも言葉遣いを見ると、とりわけその傾向を強く感じる。 たとえば、p.58 の本文で、2つの主要なフェーズとして、 調達アプローチの初期化と、ソリューションの選択がある。 ここで「初期化」ということばが出ている。これは、うっかり使ってしまったのだろう。 というのは、他では「開始」といっているからである。

p.63 では、フェーズ II-4 : ソリューションの選択−で、 考慮すべき事項の最初の項は「銘記」ではなくて「明記」であろう。 また、最後の項の、「仲裁、問題解決、訴訟、そして完結に対する対策を指定する」 とあるが、この「完結」の意味がわからない。

同じ p.63 で、「信任状」というのもわからない。 「成果について候補者リスト上の IT ベンダーについて、ソリューションと信任状を確認し、 評価規準を改訂」とある。 「信任状」とは、おそらく英語の accreditation をそのまま訳したからだろう。 国語辞書によれば、「信任状」とは、 「派遣される(外交使節|労働団代の代表)が正当な資格をもつことを証明する文書」 (新明解、第五版)である。ここでは「公的な承認(書)」と解すべきだろう。 なお、公的ということは、IT ベンダー自身が正式に認めた、という意味でよい。

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MARUYAMA Satosi