Betsy Beyer, Niall Richard Murphy, David K. Rensin, Kent Kawahara, Stephen Throne :サイトリライアビリティハンドブック

信頼性を高めるのは大変だ

作成日:2021-04-11
最終更新日:

概要

「SRE サイトリライアビリティエンジニアリング」の副読本である。

感想

この本は、私には難しい。

計3部からなる。第Ⅰ部が基礎で1章から7章まで該当する。 第Ⅱ部が実践で、8章から16章までが割り当てられている。 第Ⅲ部がプロセスで、17章から21章まである。

トイルの撲滅

6章は「トイルの撲滅」という表題である。トイル(toil)はこの章で、 「サービスのメンテナンスに関係し、繰り返され、予想可能で、定常的なタスクの流れ」と定義されている。

私も現役時代、所属部門はシステムの運用が本務ではなかったにもかかわらず、 自分が運用に責任がもてないシステムの運用をしていた。運用に責任がもてないから、 自分がいかに運用作業に労力を割いたとしても、なんらの評価も受けなかった。 なんというばかばかしい作業だったことか。 そのころを思い出している。

オンコール

8章の表題は「オンコール」である。わかったようなことばであるが、いざ定義すると難しい。 この章では、「オンコールになるということは、一定の期間対応可能な状態にあり、 その期間中に適切な緊急度をもってプロダクションのインシデントに対応する用意ができていることを意味します。」 とある。

この伝でいくと、世の中の多くのシステムは、オンコールになっていない、ということである。 ある組織でシステムをオンコール状態にするためには、きっと山ほどの書類を作り、 山ほどの書類を書かなければならなかったことだろう。

この章で、ページャーということばは何回も出ている。ページャーとは何だろうか。 昔、ページャー(pager)というと、日本でいう「ポケットベル」を意味していた。 本章を読んでいると「ページャーがうるさく、チームは幸福ではありません。」(p.157) と記されている。 きっと、システムの異常や警告などを知らせるもの、という意味だろう。それならば、 「ポケットベルのようなもの」でいいはずだ。ポケットベルで知らせる主体は人間であったが、 この章でいうページャーで知らせる主体はシステムなのだろう。

検死

10章では、「ポストモーテムの文化:失敗からの学び」という表題で、事後検証のよい例を悪い例について述べられている。 そう、ポストモーテムとは事後検証という意味だったのだ。私はポストモーテムを文字通り「検死」と捉えていた。 もちろん、実際に人間が死んだ現場に立ち会うことはなく、システムの事故を人間の死亡のように扱って、 その後に事故の原因を扱うことだと思っていた。だから、検死ということばに代わることばが思い浮かばなかった。 世の中では、ポストモーテムの訳語として事後検証ということばが一般的だから、それでいいのだろう。

昔、私が経験した事後検証はひどいものだった。私が起こしてしまった、他部門に関する事故について、 私の部門の長とその他部門の長が「自分の部門に非はない」ということをともに主張し続け、 延々と闘い続けていたのだった。私は「偉くなる人はこういう無駄なことをしつこく続ける元気がある人なんだ」 と冷めた目で見ていた。

ドメイン固有言語

15章は「設定の詳細」という題で、設定システムの落とし穴について語られている。 その落とし穴はいくつかあるが、最後の落とし穴は「既存の汎用スクリプティング言語の利用」とある。 つまり、対象(ドメイン)固有言語を使わずに、Python、Ruby、Lua のような既存の汎用スクリプティング言語を使うと、 問題が生じるというのだ。その問題はここには書かない。 落とし穴を回避するためには、HOCON、Flabbergast、Dhall、JSonnet などの再利用可能な設定のためのドメイン固有言語(Domain-Specific Language, DSL)を使うといいという。

本書ではこれらの DSL のなかで JSonnet について記述がある。勉強してみようかな。

人柱

16章は「カナリアリリース」という題されている。「炭鉱のカナリア」などということばがある通り、 この名前が意味することはわかるだろう。私などはカナリアなどという気取った言い方よりは、 「人柱」という、物騒なことばを好む。

書誌情報

書 名サイトリライアビリティハンドブック
編 者Betsy Beyer, Niall Richard Murphy, David K. Rensin, Kent Kawahara, Stephen Throne
監訳者澤田 武男、関根 達夫、細川 一茂、矢吹 大輔
訳 者玉川 竜司
発行日2020 年 6 月 12 日 初版第1刷
発行所オライリー・ジャパン
発売元オーム社
定 価4600 円(税別)
サイズ
ISBN978-4-87311-913-7
その他越谷市立図書館で借りて読む
NDC

まりんきょ学問所コンピュータの部屋コンピュータの本品質保証 > Betsy Beyer, Niall Richard Murphy, David K. Rensin, Kent Kawahara, Stephen Throne(編):サイトリライアビリティハンドブック


MARUYAMA Satosi