近藤 次郎:オペレーションズ・リサーチ入門 |
作成日:2012-01-04 最終更新日: |
オペレーションズ・リサーチ(Operations Research, OR)の概論である。
次のように各言語による OR の名前を紹介している。
前者は企業経営学とでも訳すのが適当なようだ。
著者はソ連では OR のことを イスリェダバニエ オペラツィー というがむしろサイバネティックスの方が広く普及している。
と書いている。しかし、サイバネティックスは英語流の読み方であり、キリル文字による表記もロシア語の読み方も書かれてはいない。
実際には上記前者の通りである。後者は英語の直訳である。
日本の漢字では「運籌学(うんちゅうがく)」となる。運籌の語源は史記巻八、高祖本記からである。
公知其一未知其二/夫運籌策帷幄之中決勝千里之外/吾不如子房
から来ているとされる。読み下し文は次の通り。
公は其の一を知りて、未だ其の二を知らず。 夫れ
誰がこれを言ったのか、公とは誰のことか、子房とはだれか、
などについては、http://www.kokin.rr-livelife.net/classic/classic_oriental/classic_oriental_125.html を参考にしてほしい。
これを受けて「籌を帷幄の中に運らす」などの言い方がされる。籌も策も計画の意味である。帷幄は垂れ幕と引き幕を指し、転じて作戦を立てる場所を指す。
p.14 のイラストは、運籌学を実践していると思われる人の絵が帷幄とともに描かれている。さて、そこで引用されている高祖本記で「帷幄」が「帷帳」となっている。 もっとも、帷帳も帷幄と同じ意味である。
p.109 のイラストは将棋盤である。この将棋盤は先手が初手を指した局面に見えるが、その初手が何と▲8六歩である。角頭歩戦法というのは確かにあるが、 先手番なら▲7六歩△3四歩▲8六歩というように3手目に行う。後手なら▲7六歩に対して△2四歩である。いや、初手▲8六歩には参りました。 それでこのイラストに添えられている文句が「先手必勝」であります。
少し解説すると、初手▲8六歩というのは悪い手である。というのは、将棋の駒の角というのは直上部への働き、つまり効きがなく、 弱点だからだ。それを守るために歩があるのだが、それを最初に突き出すというのは考えられない。 もっとも、初手▲8六歩が一番悪い手かというとそうでもないらしい。林葉直子の研究によれば初手の最悪手は▲5八金左だそうである。
p.202 のイラストは、木に結わえられた縄でコンピュータが首つりをして苦しそうにしている場面である。 ちなみに、イラストのコンピュータはくびれている部分がないため首つりというより胴つりというのが正確である。 このイラストは何を言おうとしているのだろうか。
誤植は次の通り。
ページ/行 | 誤 | 正 |
---|---|---|
数式は ASCIIMathML を用いている。
書 名 | オペレーションズ・リサーチ入門 |
著 者 | 近藤 次郎 |
発行日 | |
発行元 | NHK 出版 |
定 価 | 円(本体) |
サイズ | 判 ページ |
ISBN |
まりんきょ学問所 > コンピュータの部屋 > コンピュータの本 > 数理計画法 > 近藤 次郎:オペレーションズ・リサーチ入門