予防保全と事後保全

作成日 : 2004-08-05
最終更新日 :

予防保全(preventive maintenance, PM)とは、 故障が起きる前に対策を講じてその後の故障が起きないようにすることであり、 事後保全(breakdown maintenance, BM)とは、 故障が起きた後に対策をとって復帰させることである。

どちらも大事なのであるが、バランスをどの程度にすればよいのか定量的に評価する試みがある。 考えてみよう。

例:システムの故障(トラブル)が全体で n 件あるとする。 そのうちの1件でも顕在化するとシステムを修繕する必要がある。 その費用は1件あたり c1[円/件]であるとする。 一方、一斉にシステムを修繕するとすれば、 その費用が1件あたり c2[円/件]で済むものとする。 一定期間 t で一斉にシステムを修繕し、 その間にトラブルの起こった個所はその度に個別に修繕するものとする。このとき、 修繕費用が最小となるような一斉取替間隔 t を求めよう。ただし、 このとき、このトラブルの顕在化に関する確率分布 p(t) が与えられているものとする。

この問題は、一斉取替問題とよばれ、解を得るための理論は取替理論(replacement theory)と呼ばれる。 私の見方では予防保全と事後保全をどのように組み合わせれば、コストが最小となるかを考える問題である。

なお、システムのトラブルの総数がわかるわけがない、とおっしゃる方がいるかもしれない。 その突っ込みは鋭い。その場合は、 「インターネットのウェブページでリンク切れを直す問題」など、 対象を変えて考えていただきたい。

以前は計算ボタンを載せていたのだが、何に対する計算結果であるかがまったく示されていなかったので、 計算ボタンは削除した。ただ、このままだと JavaScript のページに載せている意味がないので、 いずれは計算結果を再度掲載したい。(2021-04-25)

最適点検時間間隔

前に載せていた計算とは違うかもしれないが、予防保全の考え方を表す例題が文献にあったので、ここに掲載する。

真壁肇:信頼性データの解析」の p.183 にある問題と p.198 にある解答を考えてみる。 引用にあたり、多少語句を変えている。

問題:(時間あたりの)故障率 `lambda` のシステムは故障すると次の点検時までその故障は検出されないという. 1 回あたりの点検費用は `C_0` 円,システムが不稼働のまま放置されることによって生ずるペナルティは時間当たり `C_1` 円とする.
このシステムに対する最適点検間隔を見出すためのモデルを構築し,最適解を求めよ。

解答 : 単位時間当たりの総費用 `C(t_0)` は点検周期を `t_0` として、

`C(t_0) = (int_0^(t_0) C_1(t_0 - t) lambda e^(-lambda t)dt + C_0)/t_0`
となる.これを `del C(t_0) // del t_0 = 0` として解くのに,`e^-x ~= 1 - x + x^2//2` とすれば,`t_0 = sqrt((2C_0)/(lambda C_1))` となる.

故障率 `lambda` (毎時) 1 回あたり点検費用 `C_0` 時間当たりペナルティ `C_1`

最適点検時間間隔 `t_0` (時)

引用した文献では、`lambda = 0.003 (/時)`、`C_0 = 10000`(円)、`C_1 = 100` (円/時) という値が与えられている。これらを代入して計算すると、 `t_0 = 258.2` (時)を得る。1 日は 24 時間だから、およそ 10 日ごとに点検すればいいことになる。

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MARUYAMA Satosi