クラシック音楽を聴き始めたのは、小学校でピアノの稽古を中断したときからである。 クラシック音楽の世界がこれほど豊かなのかと思い、次から次へとエアチェックをしていった。 そのなかにはフォーレのレクイエムがあった。 この世のものならぬ清澄な響きは私を魅了したが、フォーレについてはそこで終わっていた。
その後、深く理解したいと思い高校2年のとき図書館で借りた名曲解説集を借りた。 その中にフォーレの「主題と変奏」があった。 気になってエアチェックした。何度聞いてもわからなかった。 高校3年のとき今度は「ピアノ五重奏曲第二番」をエアチェックした。 こちらも何度聞いてもわからなかった。 それからのちに、吉田秀和による「私の好きな曲」にこのフォーレのピアノ五重奏曲第二番について収められていることを知り、 この賛を読んだ。 それから聞いてもわからなかった。
大学に入ってから、独奏版「バラード」を先輩の弾くピアノで聞いた。 それから後にこんどは別の先輩の弾く「夜想曲第六番」を聞いた。この二曲の演奏が気に入って、 これからフォーレと一生つきあっていこうと決心した。 高校時代にわからなかった二曲がしみじみとわかるようになったのはこの決心からである。
フォーレの歌曲の伴奏もそこそこ練習した。 たまたまテナーのDさんがピアノ弾きを求めていたときに何かのタイミングで私が当ったのだった。 Dさんは私にオペラをいろいろ教えてくれた。 一方私はフランスものもいいですよといってフォーレを初めとするいろいろな歌を教えた。 今となれば得難い体験だったので、そのときのことを少し書き付ける。
なんでもない曲である。それなのに愛着が深い。単純なので苦労した。
Dさんが好んで歌っていた曲である。青い気分が漂っていて懐かしい。
ろうろうと歌い上げるこの曲はDさんの得意だった。なかせる旋律である。
本当に甘い歌ですっきりしている。この曲の陰影を出すのは苦労した。
そのほか、インターナショナル版にある曲はほとんどやった。 「ネル」「イスファハンのばら」「秘密」など、今思い出すだけで懐かしい。 今度Dさんとやる機会があれば中期から後期の渋い曲、たとえば「沈黙の贈り物」「夕暮れ」「九月の森で」をやってみたい。
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