11月20日

    やはり10時頃に目が覚めた僕は、今日一日をどうしたものか、
    と考えた。夕方には、エリック・バードン&ニュー・アニマルズ
    のステージがある。ほかにも、タートルズとベンチャーズが出演。
    タートルズには、ちゃんとフロー&エディもいる。楽しみだ。

    そういえば、日本にタートルズを名乗るグループがいたけれど、
    ありゃあ何なのかな。今本物のタートルズが活動していることは
    知らずに、名前を盗んだのだろうか。多分そうだな。

    香港へ来る前には、フロー&エディにも接触してやろう、
    などと意気込んでいたけれど、この時点では既にそんな気は
    失せていた。ただ、もしかしたらサウンドチェック時のバンド
    に接触できるかもしれないから、会場には早く行くつもり
    でいた。

    それまでの間、どこへ行くか。実は、香港へ行く前から
    目を付けていた場所が一箇所あった。

    「キャット・ストリートへ行くかな。」

    キャット・ストリート。なんでも、ガラクタ屋から骨董品店
    まで、古道具屋がひしめきあっている通りなのだそうだ。
    僕が狙っていたのは、やはりレコード。もっとも…

    「一枚5ドル(この場合、日本円で100円もしない)
     とかなら、買うかな……。」

    最初からあまり買う気はなかった。荷物になるし、
    本当に金ないし。

    キャット・ストリートのある上環に到着した僕は、
    地図をざっとみて方角を決め、目的地へと向かった。
    道すがら、小学生らしき少年が僕に道を尋ねてきた。
    何故だ。言葉が通じないとわかって、去っていった
    けれど……。同化してきてる?そういえば、昨日も
    「えっ、中国人じゃないの?」と、中国人に言われた
    っけか。……はは、まさかね。きっと僕が安全そうに
    見えたから、つい話し掛けたのに違いない。

    十分ほどうろついて、キャット・ストリートに到着。
    
    「……ここは本当に香港か。」

    まず最初に覗いたガラクタ屋。店先には、いきなり
    セーラームーンとGTOのCDがあたりまえのように
    転がっている。うずたかく積まれたダンボールの
    てっぺんには、ニンテンドー64のコントローラー。
    その下には、サクラ大戦のゲームらしき箱。右手
    を見ると、ドラゴン・ボールや名探偵コナンの
    コミックスがずらり。海賊本なんだろうな、これら。

    まるで日本の古道具屋。

    もうちょっと通りの奥へ入ってみよう。

    「お、これは日本では見ないなあ。」

    骨董品店のどまんなかにそびえたつ、毛沢東の像。
    しっかりライトアップされている。

    うーん、こういうのが沢山あったんだねー。

    ……。

    さらに奥へ進んでみよう。

    「おー、これはいい感じだ。」

    店先の板(ドア一枚分くらいの大きさ)に貼り付けられた、
    ブルース・リーの写真や切手、シール類。お店の主人は、
    ヌンチャク振り回して「アチョー」と言っていた。

    この人がヌンチャク振り回します。嘘だけどね。

    …ちょっと嘘だが。

    そこまで奥に踏み込むと、さすがにレコードを置いてある
    店も見つかった。しかし、たいしたものはない。ロッド・
    スチュアートのライヴ盤とか、ビー・ジーズのベスト盤
    とか、日本でも買えそうなものばかり。

    「おっ。これはちょっと欲しいかも。」

    発見したのは、ボ・ドナルドソン&ザ・ヘイウッズ
    のベスト盤。「悲しみのヒーロー」のシングル盤は
    持っているけれど、他にどんな曲をやっているのか、
    ちょっと興味がある。ほぼ買うことを決心して、
    じっと曲目を眺めた。ところが……。

    「……アバ?え?」

    レコードのタイトルは、ベスト・オブ・ヘイウッズ。
    写真もヘイウッズのみ。でも……。

    「ヘイウッズなんか一曲しかはいっとらんやんけ!」

    しっかり、オムニバス盤だった。これはこれで珍しい
    ものかもしれないが、僕的にはノーサンキューな代物
    だ。わざわざ日本へ持ち帰る気にもならない。

    
    キャット・ストリ−トで収穫のなかった僕は、このほか
    にもいくつかの街のCD屋さんを見てみたが、なんだか
    洋楽に関しては日本と似たようなものだった。一店、
    2階でレコード売っていた店があったのだけれど、
    そこは立ち入り禁止。どうも、レコードの扱いをここ
    最近のうちに止めてしまったようだ。くそ。

    昼の4時くらいになったころ、僕はワンチャイへと
    向かった。もちろん、その夜のショウを見るために。
    会場へ向かう途中、ヨーロッパ人らしき人に道を
    たずねられてしまう。
 
    「フェリーはどこから乗れますか?」

    刀舟「ああ、この道をまっすぐ行って、2本目の道を左。そこから
       ずっとまっすぐ歩けばいいんですよ。僕もそっちの方へ
       行きますから、途中まで一緒に行きましょう。」

    答えてしまった刀舟。きっと僕が、フェリーに乗る観光客に
    見えたんだろうな。うん、きっとそうだ。

    最終日には、フェリーにも乗った。

    5時くらいに、会場に到着。いや、もっと早かったかもしれない。
    ダメだろうなとは思いながらも、ゲストとして呼ばれているのだ
    けれど、などと受け付けのお嬢さんに尋ねてみる。……が、ダメ。
    やっぱりね。

    控え室まではガードも固く、どこをどういったら近づけるのか
    わからない。前日にプロモーターらしきおっさんからもらった
    名刺(僕のやっすい名刺と交換したのだ)を見せて関係者の
    ふりをするという手も考えたが、やめた。なにより、アポも
    ないのに行って邪魔になったらつらい。いや、絶対邪魔になる。

    しょうがないので、受け付けのお嬢さんに教えてもらった楽器店 
    へ行って、チケットを素直に購入。日本円にして9000円ほど。
    高い……。

    これがチケット。高いよー。

    しかし、60年代に人気の高かった3バンドが一同に会するとは、
    いったいどういうイベントなのだろう?その疑問は、ショウが
    始まってから解消されることになる。

 続く