アニマルズ、本国でのファースト・アルバム。1964年10月、意外なことに米盤『The Animals』(内容、ジャケット違いの米ファースト)よりも1ヶ月後のリリースとなる。当初は『Animal
Farm』という野暮ったいタイトルが予定されていたが、最終的には米盤と同じ『The Animals』としてリリースされている。
曲目のほとんどはブルーズ/R&Bのカヴァーで、唯一エリック・バードンの名前がクレジットされている「Story of
Bo Diddley」もボ・ディドリーのジャングル・ビートに乗せて当時のロック・シーンを語り、挙句には「A Hard Day's
Night」まで歌うというもの。オリジナル・ナンバーと言うよりも、ボ・ディドリーへの、そしてエリックがこよなく愛したR&Bへのオマージュだと考えた方がいい。シングル曲では、この時点までに「Baby
Let Me Take You Home」「The House Of The Rising Sun」「I'm Crying」と、他のビート・バンドに比べていかにも個性的な作品を発表してきたアニマルズだが、このアルバムの選曲自体は決して珍しいものではない。『Animal
Tracks』の著者、シーン・イーガンが指摘しているように、ブルーズ、というか、スピリチュアルと言うべき「Bury My Body」にエリックのマニアぶりが垣間見られるものの、選曲自体は当時のビートバンドの典型と言ってもいいものだ。オリジナル・ドラマーのジョン・スティールによれば、「特に深い考えはなく、適当に思いついたものを演奏しただけ」だということだ。いかにも、ライブ・バンドとして叩き上げてきた若者達らしさを感じさせる話だ。もっとも、当時はどのバンドも、そんなノリでアルバムを作っていたのかもしれない。
デビュー・アルバムの一曲目がいきなり当時としては破格(?)の5分半、しかも内容は歌というよりもジャムにのせた語りに近い作品だというのは、少々妙な気がしないでもない。しかし、実はエリックの真の魅力はこのような即興演奏にのせたヴォーカルにある。そう考えると、やはりステージでのエリックのアドリブから生まれたと言うこの曲が一曲目に来るのはいかにも相応しいことのように思える。エリックが当時夢中だった黒人音楽やロックンロールへの憧れを語った後に、ファッツ・ドミノのニューオリンズ風サウンド(これはまだ歌いきれていないように思うが)、チャック・ベリーのR&Bにジョン・リーのブルーズ等…が詰め込まれたこのアルバムは、まさしくエリックが…そして、アニマルズのメンバー達が憧れ、愛したアメリカの音楽への一つのオマージュ・アルバムだった。
ちなみに、国内盤とアメリカ盤は、このイギリス盤とは違う
ジャケでリリースされ、それぞれ選曲も違っている。
まず、英国盤よりも先にリリースされたアメリカ盤。
次に、写真は米国盤だが内容は英国盤に近い国内版。『朝日のあたる家』というタイトルだった。
米国盤と国内盤の違いが微妙です。