Animals' Spirit / Eric Burdon (BMG/ARG RECORDS : 74321 79967 2)

1.We Gotta Get Out Of This Place 2.Don't Let Me Be Misunderstood 3.It's My Life 4.House Of The Rising Sun 5.When I Was Young 6.Nights In White Satin 7.Tobacco Road 8.Mother Earth 9.The Real Me 10.Home Dream 11.Stop 12.Paint It Black 13.Have Mercy Judge 14.A Day In The Life 15.Ghetto Child 16.Train Thing Medley

 エリック・バードン、70年代半ば程までのレコーディングを集めたコンピレーション。1〜5、9、11、15はエリック・バードン・バンド、6〜8、10、12、14、15はエリック・バードン&ウォー、13はジミー・ウィザースプーンとのレコーディング。ほとんどの録音はこれまでに何度もリリースされているものだが、15と16は未発表だった。もっとも、15に関してはプライヴェート盤などで出回っていたり、ブートに収録されていたりもしたので、聴いたことのある人も多いだろう。幻のアルバム、Mirageに収録される予定だった曲のひとつだ。

 このコンピの目玉は、なんと言っても16、「Train Thing Medley」。このタイトルでは何のことかわからない人も多いと思うが、これはエルヴィスの「Mystery Train」。もっとも、この場合はカヴァーというよりも「Mystery Train」を題材にしてジャムっていると言ったほうが適切だろう。一部プライヴェート・ビデオやテープにこの曲のライヴ演奏が残されているのは知っていたが、まさかスタジオ録音が残っているとは思わなかった。期待していなかっただけに、喜びも大きい。これほど嬉しい発掘音源に出会ったのは久しぶりだ。エリックだけでもなく、ウォーだけでもない。エリック・バードン&ウォーの「ジャム・ロック」の魅力がこの録音に詰め込まれている。

…「ジャム・ロック」なんて言葉があるはずがない。何を言いたいのかわからない人も多いだろう。できればわかってもらいたいので、以下、当サイトの『War Heros』に記載した次の個所を再びここに掲載しておく。

『 エリック・バードンと一緒に演奏することによって、ウォーのメンバーは自分たちの演奏をさらに力強い、柔軟性のあるものに進化させることができた。それは別に、エリックがそう教えたというわけではなく、異なる音楽性を持っていたエリックとウォーが、一緒に演奏することによって得られた予期せぬ成果だったと考えるのが正解だろう。

活動を始めてから何ヶ月かのアメリカ、ヨーロッパ・ツアーでのショウを振り返って、ゴールドシュタインはこう語っている。


「彼らは、全くアニマルズの曲はやらなかった。エリックは、何か全く違うことをやっていたんだ。それはまるでジャズ・バンドのようなもので、エリックは即興でヴォーカルを乗せることができた。毎晩、同じ曲が違う長さになった。時として、それは3〜4時間ものセットになった。まさしく、マジックだったよ。」 「グループの連中はしばらくの間に経験を積んできたから、自分達が演奏しているものを録音するのに、いくらか余裕をもって、やりやすくなってきた。即興で歌うエリックとともに、彼らはジャズ・バンドへと変化していた。」


 ウォーのメンバー達もまた、次のように語っている。


「私たちは、以前にはできると思わなかったようなやり方でエリックと即興演奏することができた。時として、私たちはステージ上で、45分もの間休みなしで演奏した。グルーヴのある演奏を始め、そしてそれから、一度のブレイクもなしに音楽的にも詞的にも違う方向へと進んだ。そして、誰かが意表をついたら、私たちは譲って、そいつに続けさせた。そいつらが自分のやりたいように即興演奏をしている間は、ソロでも何でも、私たちは新しい局面に入るようにかまえていたものだった。」「時として、私たちは休みなしに45分もの間、ステージで演奏し続けた。そしてその間、ずっと即興でやっていた。エリックには、本当に驚かされたよ。」ロニー・ジョーダン


「私たちがショウが始まる前にバックステージにつくと、エリックはまさに歌詞のアイデアを歌い始めていた。私たちがステージに立つと、エリックはそのまま続けて歌い、聴衆たちにちょっと変わった物語を語ったものだった。それはまるで、私たち全員旅に出ているかのようだった ― 私たちはまさにグルーヴを演奏し始め、そしてエリックが歌いだすと、それは歌の形を取り始めるんだ。」ハロルド・ブラウン


「エリックは、歌のアイデアと、絵を描いたノートやスケッチをスタジオに持ち込んできたものだった。私たちがレコーディングを始めると、彼はスケッチブックを広げ、何か面白いものを見つけ、そして私たちは曲作りを始めたんだ。」ジェリー・ゴールドシュタイン


「私たちが『タバコ・ロード』のような曲をやったとき、エリックは私たちがジャムるのを聴いて、それを曲のアレンジに組み込んだものだった。」ハワード・スコット


これらの発言からわかることは、エリック・バードン&ウォーの演奏スタイルは、決まった曲をきっちり演奏するというよりも、なにかひとつのテーマをもとに、ステージ上でジャム・セッションを行うものだった、ということだ。

エリック・バードンもまた、次のように語っている。

「ナイトクラブのバンドからロックバンドへ変更させたっていうか……。ブルースもやらせようとしたんだが、やつら全然やる気なくて。ラテンジャズをベースにしたバンドのイメージが残っててさ。だから、たまにステージへ上がる前に何を演奏するのか全く教えずに、キーだけ決めてパーカッションのやつに勝手にやらせてね。ジャムセッションをステージでやったんだ。』