BLACK MAN'S BURDON

A:1.PAINT IT BLACK MEDLEY a)BLACK ON BLACK IN BLACK b)PAINT IT BLACK c)LAUREL & HARDY d)PINTELO NEGRO e)P.C.3 f)BLACKBIRD 2.SPIRIT B:1.BEAUTIFUL NEW BORN CHILD 2.NIGHTS IN WHITE SATIN T 3.THE BIRD & THE SQUIRREL 4.NUTS, SEEDS & LIFE 5.OUT OF NOWHERE 6.NIGHTS IN WHITE SATIN U C:1.SUN/MOON 2.PRETTY COLORS 3.GUN 4.JIMBO D:1.BARE BACK RIDE 2.HOME COOKIN' 3.THEY CAN'T TAKE AWAY OUR MUSIC


 このアルバムでまず注目すべきは、エリック・バードン&ジ・アニマルズ時代にもカヴァーしていた「黒くぬれ」の、見事なラテン・ヴァージョン。僕はてっきり、エリック・バードンがこの曲を演奏することを主張したのだと思っていたが、ハワード・スコットによれば

「私たちは、エリックと出会う前から『黒くぬれ』メドレーをクラブで演奏していたんだ。私たちはおもいっきりラテン風のアレンジを加え、エリックはそのアレンジに合わせて歌った」

ということだ。ちなみに、A面の「黒くぬれ」メドレーの中の一曲、P.C.3は「イギリス女王に対して下品な表現がある」という理由で、イギリスではちょっとした議論になった。イギリス盤では、この部分だけ後に削除されたりもしているということだが、僕はその現物を見たことが無い。今では、かえって珍しいのだろうか?A面の最後を飾る「Spirits」は、ウォー独特のまったりとした雰囲気に、エリック・バードンの引きのあるヴォーカルを乗せた傑作。個人的には、このアルバムのベスト・トラックだ。B面では、ムーディー・ブルースの「サテンの夜」を中心に組み立てられているが、A面の充実振りにくらべるとやや印象が薄い。2枚目は、1枚目のように1面でひとつのテーマをまとめるような作りを前面に出してはいないけれども、個々の楽曲のクオリティは高い。そして特に、ロック的嗜好の強いD面はロック・バンドとしてのウォーを堪能できる貴重な記録だ。


 ファースト・アルバムに比べると、このセカンド・アルバムはあまりセールスを上げなかったけれども、それは2枚組であったこととか、そのコンセプトがあまりにもどぎつかった(ジャケットの見開きには、白人女性が裸で横たわり、その向こうにはムチを持った黒人とウォーのメンバー達がいる、というものだった。ちょっとやり過ぎの感がないではない。エリックは裏ジャケットで黒人女性の股の間に寝そべっているのだが、これは「Mother Earth」の内容を理解していれば何故そのような構図になっているのか、容易に理解できるはずだ)とかいうこと以前に、次のような事情があった。


「あのとき、アメリカで問題だったのは、私たちは自分達のレーベル、MGMから離れようとしていたことなんだ。おかしなことになってしまった ―― エリックはMGMの監視役であることを辞め、そこから出て行きたがっていた。私たちはこれ(『Black Man's Burdon』)がここでヒットとなることを期待していたが、これは一種の知られざるアルバムになってしまった。」ジェリー・ゴールドシュタイン


 僕がこれまで目にしたことのあるアルバム評では、どちらかというとこの『黒い世界』の方が評価されていないようなのだが、僕が好きなのは『黒い世界』の方だ。エリック・バードンがあまり好きではない、もしくは最初から「黒人コンプレックスの持ち主だった」という意見を刷り込まれている人にはこのアルバムが「黒人になろう、なろう」とするエリック・バードンの思い込みと暴走に聴こえるかもしれない。しかし、ウォーというバンド名の由来、そして結成時からその楽曲に貫かれてきたコンセプト、メッセージ色を考えた場合、やはり「人種を超えた人間主義」を考えさせるための、少々過激な手段だったと考えた方が正しい。このアルバム・コンセプトがエリック・バードンとクレジットされているのは、ダテではない。ジェリー・ゴールドシュタインが言うように、このアルバムはもっと正しく理解され、認められるべき「隠された名盤」だと言えよう。

ちなみに、アメリカ盤オリジナルにはウォーコンサート1ドル引きチケットが付いてた。これがその写真。

ERIC BURDON

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