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友だちの部屋(小松静江)

  かくれんぼ

ちいさい弟がかくれるところ
いつもきまっている
二段ベッドの上の段
からっぽのおふろの中

あわててひいたカーテンが
まだゆれている
(きょうはベッドかぁ)
気がつかないふりでとおりすぎて
押し入れの戸をあける
ベッドの下をのぞく
カーテンをちょっとあけて
弟がみおろしている
うれしくてたまらない顔が
机の上の鏡にうつっている
もうすこしだけ
ほかのところをさがそう
どこをさがそうかなあ
弟がはらはらするところを考える

               〜〜1994年「現代少年詩集」・「台湾児童文学」P掲載  サピックス(問題集)国語3年〜〜


 十二歳


森にきて深呼吸をした
わたし
すこし大きくなった気がしてたら
梢の葉たちの声が聞こえてきた
「まだまだだよなあ」
三百歳
とか四百歳の
木にかこまれると
十二歳のわたしはかなわない
森の木は
テレビをみたこともないし
飛行機に乗ったこともないけど
胸をはって立っている
ここが一番という顔をして
空をみている

胸が重くなったとき
わたしは森を思いうかべる
深呼吸して 空をみあげる

          〜〜2001年「現代少年詩集」・「詩は宇宙」6年(ポプラ社)〜〜


 駅につくまで


電車がトンネルに入った
窓のむこうは四角い闇
おとなの間にはさまって
せのびして吊革につかまっているわたし
こわい顔してる
理科のテストできなくたって
おとなになれるんだから
にっと笑ってみる
電車はトンネルをぬけた
くらくらする菜の花畑
わたし駅につくまで蝶になる
花の上をとびまわる


          〜〜1998年「現代少年詩集」掲載〜〜


 とうめいにんげん


会社から帰ったパパは
かばんをさげたまま
あかんぼのとこへいった
コンビニの袋をさげたばあちゃんも
わたしの前をどてどてあるいて
台所へいっちゃった
せんたくものをかかえたママは
わたしの足をまたいで
あかんぼの部屋へ入っていった
ふん そうか わたし
とうめいにんげんになっちゃったんだ
マヨネーズとケチャップで
テーブルにおえかきしてたら
ママがとんできた


          〜〜1995年「現代少年詩集」掲載〜〜


 青空


雨がやんだ
うーんとのびしてでかける
オレはノラ 首輪のない犬
公園のすみっこに
大きな水たまり
青い空をごくごくのむ
すべりだいの下
オレを見ていた女の子
ちょこちょこ走ってきて
両手で水をすくって
のんじゃった
あーあっ
しーらねえっ
しーらねえっと
オレはすべりだいの下に退散
女の子がふりむいて笑った
のみこんだ青空がきらめく
しっぽがかってにゆれる


          〜〜「市川文芸」4号掲載〜〜(ここまで 09・3UP)



            仕事

  ゆかちゃんのおじいさんは
  ゆうびん局を
  ていねんたいしょくして
  植物園ではたらいている

  落ち葉を集めたり
  水や肥料をくばったり
  「ゆうびん局の仕事とにてるんだよ」って
  ゆかちゃんはいってる

                             〜〜「ネバーランド」8号(てらいんく刊)所収
〜〜


          三代目

  ぼくのうち 魚屋
  じいちゃんと父さんは
  毎朝五時に起きて
  太陽をおがんで市場へ行く
  
  夏休みにぼくも早起きした
  「よー三代目」
  じいちゃんが声をはりあげた
  太陽はぐんぐん天へのぼっていく
  ぼく ほんとうは
  宇宙飛行士になりたい

                             〜〜「ネバーランド」8号(てらいんく刊)所収〜〜



           みちくさ

  ちょっとどいてよ
  わたしたち
  おしごとちゅうなのよ
  れんげばたけに
  ねころんでたら
  みつばちがとんできた
  しゅくだいでたんでしょ
  ほうりだしたランドセルを
  のぞきこむ
  まごまごしてると
  ちくりとさされそうなので
  あわててたちあがる
  ランドセルをせおう
  ずっしりと重い

            
〜〜小松静江・詩集「古自転車のバットマン」(銀の鈴社)より。ピグマシリーズ(問題集)「三年国語」に掲載〜〜


       さくらもちとかしわもち

  はみだしているももいろが
  いとおしい
  うらがえしのコートが
  すてきだわ
  などと
  しょうさんしあっている


                        〜〜小松静江・詩集「さみしい桃太郎」(私家版)より〜〜



           位置

  にいちゃーん まっててー」
  大きなサンダルをつっかけて
  オレの後ろを追ってきた妹
  「いぬ こわいよー」
  オレの背中にしがみついた妹
  ついこのあいだまで
  いつもオレの後ろにいたヤツが
  今日はオレの正面にいる
  対等にむかいあって
  はさみ将棋しようときた
  「にいちゃんの番よっ」
  オフクロの口調だ
  追いこされる日もくるんだろうな

                        
〜〜2005年「日本児童文学」9・10月合併号掲載〜〜

           表札

  しっぽをたらして
  ぼくの後ついてきた
  のら犬
  しっしっとおいはらったら
  あとずさりして
  泣きだしそうな顔で
  ぼくを見上げた
  そいつがこのごろは
  ぼくの前を歩く
  しっぽをしゃんともちあげて
  ときどきふりかえって
  ぼくを見る
  ちゃんとついてこいよ
  なんて目つきで

  あいつがいばりだしたのは
  犬小屋に表札を
  かけてからだ

           
〜〜ユーモア詩のえほん・かぞくのうたC「ぼくの犬は無口です」(04年3月岩崎書店)所収〜〜
                                     小松静江・詩集「古自転車のバットマン」より


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