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            2017年・虫の写真と詩

☆★☆

 

   カンタンの赤ちゃん

 皮を脱いだら 急に心細くなるようで
 体がぷにょぷにょして お尻が重いようで
 逆さまのまま じっと動かない

 皮を脱ぐなんて簡単ではないもの
 名前がどんなにカンタンでも
 皮を脱いだ後も簡単ではないもの

 カンタンの赤ちゃんは簡単そうに
 ふいっと 生まれたけれど
 大きくなるのは難儀難儀


                 ~~2017年7月19日~~

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   ナナホシテントウの幼虫

 「こんにちは 忙しそうな母さん」
 「こんにちは 太ったぼくちゃん
 ダイコンのアブラムシ おいしかったでしょ」
 「おいしかったけど もう1匹もいないよー」
 
 「そこらじゅう歩くのよ ぼくちゃん」
 「母さんみたいに ぼくも忙しくすればいいんだね」
 「忙しいのはムダよ 太ったぼくちゃん
 そこらじゅう歩くだけ あとはじっと待ちなさい
 きみは もうすぐ 瞑想に入るの」

 母さんは よく分からないことを言いおいて
 お空へ飛んで行っちゃった
 
 
                 ~~2017年5月16日~~

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   ニホンミツバチ

 きみの真下にしゃがんでいる
 いるいるいる わたしが
 振りまかれる聖水のような花粉の下に
 
 長かった冬のあとに
 こんなに明るい午後が待っているなんて
 思いもよらなかった わたしが

 くしゃみになりそうな嬉しさを隠して
 とうとう拝むような姿勢になって
 そんな自分をすこし嗤いながら
 きみに感謝を捧げている
 
 
                 ~~2017年4月3日~~

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   用心棒アリと♂の羽アリ

 用心棒ーー「あいや!しばらく。今宵は飛ぶな すぐに暗くなる」
 ♂羽ーーー「いいや 飛ぶ。飛ぶのだ」
 用心棒ーー「無駄死には よせ」
 ♂羽ーーー「一度っきりのチャンスだ」
 用心棒ーー「一度きりだからこそ 明日を待て」
 ♂羽ーーー「飛びたい 飛びたいのだ」
 用心棒ーー「飛ばせるものか 愚かな奴めが」
 ♂羽ーーー「女王を他の奴にとられたくないのだ」
 用心棒ーー「女王の飛翔は あすの午後だ」
 ♂羽ーーー「そうか。しかたがない。おまえを信じよう」
 用心棒ーー「それがよい」
 ♂羽ーーー「いっせいに飛び立ち 正々堂々と女王に挑むのだ」
 用心棒ーー「それがよい さあ、巣に戻れ」
 
 
 
                 ~~2017年2月4日~~


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   クリシギゾウムシ・赤ちゃん

  ドングリのなかから
  ころころと
  いきなりころころところがりでました

  さむい? こわい? はずかしい?
  まぶしい? さわがしい?
  めがまわる? などと

  やつぎばやに
  しつもんをあびせられ

  ドングリのなかへ
  ころころと
  もぐりこみたい わたし
 
 
 
                 ~~2017年1月14日~~

☆★☆

 

   ウスバ゙フユシャク・♀

  大寒のさなか
  凍てつく林のなかで
  産卵中のあなたに出会った

  天敵の少ない真冬を選び
  林の底冷えを気にもかけず
  ひとりだけの喜びに声も上げず
  産卵するあなたがまぶしい

  黒い目がわたしを見ている
  ならず者なのか そうではないのか

  どちらにしろ
  卵はつぎつぎに産むものなので

  そう語りかけながら
  真珠色の卵を並べていく
  あなたがまぶしい
 
 
 
                 ~~2017年1月12日~~


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