Jon Spencer Blues
Explosion at |
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コンサート記 会場となったのは、シカゴ・カブスの本拠地リグレー・フィールドの近くに位置するメトロというライブハウス。ここは年代物のライブハウスと言った感じで、歴史を感じるところ。正直に言うと、汚く雑然とした古びたライブハウス。入り口では、くわえタバコのお兄ちゃんがチケットとIDをチェックし、その後ろでは耳栓を配っている。会場の方はというと、1階と2階に分かれており、さほど広くはない。言い換えると、かなりステージに近く、臨場感溢れるライブが期待できる。その日は、平日の夜10時開演というのに、すでにソールドアウト。超満員。もちろん、座席などは極僅かしか用意されていない。殆どが立見である。客層は20〜30代で、学生風の連中が圧倒的に多い。ちょっと危ない、イっちゃってるような人もチラホラ。 開演の10時になると前座バンドが登場。さすがにジョンスペの前座だけあってパンク色の強いバンドで、危ない感じのボーカリストが面白い。それにしても、ステージが近い。イヤ、近すぎる。音がスゴイのである。何がスゴイって、何を演奏しているか分からなくなるほどの大音響。頭がクラクラしてくる。そうなのだ。だから、耳栓を配っていたのである。ステージの作りは非常にシンプル。シンプルというよりも、ただ単に散らかっているだけ。ギターケースやトランク類がステージ上に積まれており、どこかの倉庫でライブをやっているような感じ。そして、前座バンドは出番が終わると、自分達で片付ける。さっきまで、ステージ上で飛び跳ねていた連中が、突然、素に戻ってギターやら何やらをケースに仕舞っているのである。この素朴さが良い。でも、前座とは言え、ジョンスペのコンサートである。あのジョンスペである。世界的なトップバンドと呼んでも良いジョンスペなのだ。こんなところで演るという彼らの姿勢には頭が下がる。 そして、遂にメインの登場。まず、ドラムのラッセル・シモンズがムスーッとした感じでイスに座り、突然、ドラムを叩きだす。とてつもなく力強い。そしてカッコ良い。呆然と見ていると、大歓声の中、ジューダ・バウアーとジョン・スペンサーの二人が登場する。ジョン・スペンサーの銀色のパンツが、このライブハウスには不釣合いな感じはするが、とにかく熱唱、熱演。そして、このバンド、曲間のMCが全く無い。無いというよりは、曲間が殆ど無い。最初から最後までメドレーで演奏しているような感じ。しかも時々、ジョンスペが他の2人に耳打ちし、曲目を指示しているように見える。何とライブ慣れしていると言うか、ライブ命のバンドという印象が強い。そして、ライブになると、やたら目立つのがドラムの存在である。ベースが居ないせいもあるかもしれないが、ドラムへの依存度が非常に高い。前述の如く、鼓膜が破れそうな大音響なため、正確に聴き取れるのはラッセルが刻むリズムだけ。そして、それがメチャクチャ良い。そして、このコンサートはドラムソロで始まり、ドラムソロで締めるという演出で、ラッセルが主役と言っても良いだろう。そして、始めは何故そんなに不機嫌なのかと思わせるほど無表情だったのに、最後にはスティックは投げるし、握手はしてるし、観客に手を振っていた。満足のいく演奏だったのだろう。 そして、このJSBXというバンドはパンクから始まって、ヒップホップ、ファンク、ブルースというジャンル分けがされるが、それには無理があるようである。彼らにはジャンルなどは無縁。強いていうならカッコ良いロックを指向していると言うべきか。あくまでも彼の感性に委ねている音楽性であり、誰々風という枠への決め付けは正しい評価ではない。ただ、ひたすら、ステージ上でカッコ良いことが彼らの目的のような気がする。だから、こんな小汚く狭いライブハウスでの演奏を選んだのかもしれない。スタジアムのような大規模な会場では観客の反応が感じられないもの。ただ、ちょっと気掛かりなのが、CDを発売する感覚が長くなっていること。今回の新作「プラスティック・ファング」は前作「アクメ」から4年振りというインターバル。これは何を意味するのかと言うと、自分達が何処に向かっているのかが見えにくくなっているのではないだろうか。それを見極めるの4年という歳月とスティーブ・ジョーダンというプロデューサーが必要だったのかも知れない。そして、行き着いた場所はストレートなロックンロール。これは絶対に正しい道程に違いない。そう、ツェッペリンが「プレゼンス」に辿りついたように。 |
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Jon Spencer Blues Explosion (1992) NYのアンダーグラウンド・ロック・シーンをリードしていたPussy Galoreのジョン・スペンサーがジューダ・バウアー(ギター)、ラッセル・シモンズ(ドラム)と組んで発表した記念すべきデビュー作。 |
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Extra Width (1993) この2作目では、彼らの基礎となっているパンクロックと黒人音楽との融合が結実。ギター2本にドラムという変則的な3人グループにも拘らず、力強い音を聴かせている。 |
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前作の延長線上に位置する作品。実質、この3作目で大爆発。ヒットチャートにも顔を出すし、音楽誌でも非常に高い評価を受けている。この頃から日本でもCDが発売され、クアトロ辺りに登場するようになった。 |
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Now I Got Worry (1996) 前作までは、パンク、ヒップホップ色が強かったのだが、本作では原点とも言えるブルース色が濃くなってくる。このアルバム発売と同時にオルタナティブロックの雄として君臨する。 |
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Acme (1998) 第1大爆発が「オレンジ」ならば、この「アクメ」が第2大爆発。とってもソリッドな音を引っさげて登場した本作は、あらゆる方面に反響を及ぼし、名実共にトップグループとしての地位を築き上げた。 |
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Plastic Fang (2002) 今までの作品とは趣向が異なり、ストレートなロックンロールというスタイルを披露。それも、そのはずプロデューサーは、キース・リチャーズのソロを担当したこともあるスティーブ・ジョーダン。そして、単一のプロデューサーが全曲仕切ったのは、このアルバムが初めて。 |