Aerosmith at Tweeter Theatre (September 1, 2002)

 

コンサート記

 

このバンドほど大きく変化したバンドはいないんじゃないだろうか。昔は非常にストイックな音を聴かせ、ジャック・ダグラスのプロデュースによる非常に暗く重たいサウンドが独特の世界を創作していた。そして、あの「ロックス」という最高傑作を発表し、「ドロー・ザ・ライン」でちょっと不協和音が見え始めた後、ジャック・ダグラスとジョー・ペリーがバンドが去ることになる。その後、ブラッド・ウィットフォードも脱退し、殆ど解散状態。しかし、1984年には、そのジョーとブラッドがバンドに復帰し、悟りでも開いたかのようにポップなアイドル・ロックバンドに変身していく。あのアルマゲドンの主題歌なんて、70年代の彼らから誰が想像できただろうか。しかも、スーパーボウルのハーフタイムショーでブリトニー・スピアーズと共演するなんて信じられない出来事である。この路線を見て、なぜジョー・ペリーって脱退したのか良く分からなくなった。今は楽しく演奏しているだろうか? 何を思ってバンドを存続させているだろうか? 大きなお世話だろうが、彼を見るたびにとても心配になるのである。そして、彼らのベストアルバム「O, YEAH!」では、ジョー・ペリーが居なかった時期の曲が全く収められていない。この辺りは、バンドとして触れてはならないところらしく、その時期を経て、今の割り切ったバンド活動があるのだろう。きっと、彼らの悟りとは、単純ロック野郎に徹すること。それは正しい選択なのかもしれない。だって、もう「ロックス」を超える作品なんて作れやしないのだから。

 

この日のコンサートも正に新生エアロスミスそのもの。オープニングでメンバー5人のシルエットが写し出され、しかもちゃんとポーズが決まっている。まるでスマップのようだと思いながら開演したコンサートは大熱狂。そして、ステージ上の彼らを見て思ったのは、スティーブン・タイラーって相当周りに気を使っている人。ジョー・ペリーはMCがヘタなのが彼らしく、朴訥としたストレートなヤツって感じ。ベースのトム・ハミルトンは結構、目立ちたがり屋なのかもしれない。ブラッドは職人という感じで、ちょっと近寄りがたい。ドラムのジョーイは、田舎のおにいちゃん風で憎めない。こうして見ると、完璧なロックバンドだし、演奏もしかっりしている。ただ、戴けなかったのは、ラスト。アンコール後、最後の曲はウォーク・ディス・ウエイ。前座として出演していたランDMCも飛び入り参加。それはそれで盛り上ったのだけれど、何となく尻すぼみで終わってしまった。この辺りがエアロらしい中途半端さ。どうせだから徹底的にアイドル路線で貫けば良いのに。ジャニーズにプロデュースさせるぐらいの割り切りが必要。こんな生き残り方を恥じているのか? ロックじゃない? 確かにそうかもしれないが、ロックに熱狂した70年代は、もはや再現できず、全てが計算され尽くした中で、熱狂している自分を演出しているような時代。観客がそういう人種になってしまった以上、エアロがアイドル化したのは必然であり、それは我々が望んだ姿なのである。ジョー・ペリーはそれに気がついているのだろう。もう、どこに行っても昔のようにロックに陶酔している人たちはいない。多分、エアロのメンバーだけが、そういう人種なのだろう。だから、ジョーがそこに帰ってきたのは必然だったのだ。彼はエアロのメンバーと演奏したいのであって、我々の前で演奏したいのかと言うとそうではないような気がする。なんとも羨ましい連中である。

 

 

Setlist

Toys in the Attic
Back In The Saddle
Same Old Song And Dance
Girls Of Summer
Sweet Emotion
What It Takes
Lord Of The Thighs

( LAWN STAGE)
Big Ten Inch Record
Dream On
Walkin' The Dog

I Don't Want To Miss A Thing
Last Child
Jaded
Blues Pink / Pink
Stop Messin' Around
Cryin'
Dude (Looks Like A Lady)

(ENCORE)
Draw The Line
Walk This Way (w/ Kid Rock & Run DMC)