旅 漂
日本人の美意識の源流に雪月花があります。自然と人間の生そのものを一体化して見る感性の価値観です。これが日本人の旅、見の旅へと駆りたてていくのです。
西欧においても昔から現代につながる多彩な旅があります。ピレネー山脈を超え、スペインを縦断し、途中多くの小聖地を経て、星る降る町と呼ばれる最後の聖地、サンティアゴの大聖堂に至る巡礼の旅は代表的なものでしょう。
"旅漂"この言葉は私の造った新語です。私の旅での行動から自然に出てきた言葉です。私が旅に出るということは、遠い異国、見知らぬ土地に自らを投げ出して、その過程で体験するすべてが創作への土壌となっていくからです。
異国の国々を旅することは楽しいこともありますが、おおかたは辛いことや、不安の連続です。時には命の危険にさらされたことも何度かありました。
しかし、私は根っからの性善説者ですから、行くところの土地々々で多くの友人ができ、親切に助けられてきました。
意外だったのは、どの外国に行っても、自分と同年代の人達は、共通した人生観を持っていたことです。第二次世界大戦の中で受けた戦争体験。戦後の荒廃の中を生き抜いてきた同体験から生まれた同じ価値観です。
飄々として、漠として、時には偶然に期待しながら、未知とひとりぽっちで、到頭いま、地球最北の町、白夜のムルマンスクまで来てしまいました。

ウクライナ共和国 オデッサにて、 ピオネールの子供達と 1985年夏