関東私鉄ストーリー

お待たせいたしました。ご乗車ありがとうございます。

こんどは関東の方々にも満足頂きましょう。さぁ出発進行!!


 ●地下鉄「つながりグランプリ」の謎

地下鉄銀座線ストーリーその3「新橋駅の謎」でも書いたが、地下鉄には思わぬところに線路があったりする。なにしろ暗いのでよく判らないだろうし、関心のない人にはどうでもいいコトかもしれないが。

でもその「思わぬところの線路」がもとで、普段その線を走っていないはずの電車が走るという光景がなくもない。

営団地下鉄(現:東京メトロ)銀座線と丸の内線は赤坂見附でつながっていて、隅田川の花火大会の時など、銀座線の小さな電車が丸の内線へ乗り入れている。しかしこれ以外にも営団線内で線路がつながっている線がある。

それは千代田線と有楽町線。千代田線霞ヶ関駅の国会議事堂前駅側には有楽町線桜田門駅の永田町駅側へとつながる連絡線が存在している。これは有楽町線がまだ部分開通だった頃、有楽町線の電車の新車搬入、検査を千代田線の綾瀬工場(ここではご存知のようにJR常磐線と直通運転だからレールはJRにつながっているのは当然)で行う必要があったからなのだ。今でも有楽町線の電車は綾瀬工場で検査を受けているという話だ。

最初は冷房がついていなかった両線の電車に冷房を載せる工事を行ったときには、有楽町線新木場工場で行ったという事で、こんどは千代田線の電車が有楽町線を走ったということになる。

それに加えて南北線が全通したが、有楽町線と接続している市ヶ谷駅では両線をつなぐ連絡線がつくられている。部分開通当時、南北線では王子神谷駅に隣接して地下に設けられた王子検車区で電車の検査を行い、搬入はトレーラーで連れてきた電車を1両づつ「穴」からレッカーで入れていたが、連絡線のおかげで新車搬入は綾瀬から千代田線、有楽町線経由で行うことが可能となり、検査は新木場工場で行うことになったという。

平成12年9月、南北線は都営三田線とつながって初の営団線と都営線の相互乗り入れが実現、東急目黒線との直通運転も開始された。これには平成13年3月に埼玉高速鉄道も加わった。ということはJR常磐線と営団千代田線と小田急、これに営団有楽町線と東武東上線または西武有楽町線、それに埼玉高速鉄道、営団南北線と都営三田線、東急目黒線が、実は「地下で」全てつながることだけは確かだ。
平成14年8月10日に晴海で行われた「東京湾華火大会」の時には、小田急線唐木田から有楽町線新木場へ、埼玉高速鉄道浦和美園から新木場への直通電車が走り、普段は考えられないような経路での営業運転が実際に行われている。

それ以前にも「実はつながっている」を利用したものもあった。

昭和39年12月に部分開業した東西線はその後中野で国鉄(当時)中央線とつながった。それまで東西線の新車搬入は九段下でレッカーを吊るしていたが、これで搬入や簡単な検査は中央線三鷹電車区、豊田電車区を拝借出来るようになった。しかし最初の8両の電車が重要検査時期となってしまい、これは自社で行う必要があった。しかし当時東西線の深川工場は出来ておらず、日比谷線の千住工場まで行く必要があったという。

そこで、その東西線の8両の電車は夜な夜な国鉄の三鷹電車区から中央線をそのまま新宿まで行き、ここで山手線に移って品川まで行ってそこで一泊。翌日朝のラッシュが終わった頃に起きだしてこんどは白昼の山手線を北上し上野へ。上野から常磐線に移って北千住へ。ここで東武伊勢崎線へ。さらに日比谷線に移り、めでたく南千住の営団千住工場入りしたという話が残っている。山手線の電車を待っていたら、突然地下鉄東西線の電車がやって来た…というのはさぞ驚きだっただろう。この回送は1年近く続き、のち千住工場での検査は竹ノ塚検車区に変わったという。

今ではとても考えられない話だ。

たまにある話では、東西線の電車を有楽町線新木場工場へ回送する場合。これはかなり大掛かりで、中野から西へ進み武蔵野線をぐるっと回って馬橋へ。ここで常磐線に移って松戸へ。そこから綾瀬へ行き、市ヶ谷連絡線経由で新木場へ行くというものである。しかしこれはJR線内(中野-松戸)は機関車で引っ張り、自力ではないらしい。

こんな例は営団地下鉄だけじゃない。例えば自社の線路が直接つながっていない東武伊勢崎線と東上線は、実は秩父鉄道が連絡線となっている。東武の一部の電車には秩父鉄道乗り入れ対応車ってのがあって、それを連結すれば両線の行き来が出来るという訳だ。


東京の地下に張りめぐらされている地下鉄には、意外なつながりがあって、さらに複雑なことになっているようです。

次回は、あの特急電車はいまでも第一線で活躍中!という話です

【予告】レッドアローの謎

【参考文献】

鉄道ファン 1991年9月号 特集:営団地下鉄50年/6000系電車20年
鉄道ファン 1994年1月号 特集:全国地下鉄事情

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