真夏の夜の夢 2000.8.9〜10
(すみません。だいぶ「鉄」入ってます(笑))


JR西日本、夏の臨時列車には異色の特急「白馬アルプス」というのがある。
この列車は上りの片道運行なのだが、下りは夜行急行列車として運行される。またそれ以上に「鉄」の心を激しく揺さぶる列車でもあるのだ。というのは、大糸線の糸魚川-南小谷間の電化されていない区間に乗り入れるために、電車ではなくディーゼルカーを使用しているから。そのディーゼルカーは普段山陰地区で最後の活躍をしている181系という車両で、冬は「シュプール白馬・栂池」、夏はこの「白馬アルプス」として北陸線ではシーズン限定で走っている。

時刻表を見るなり、「これは乗っておかねば!!」と突如思い立ち、大阪行きを敢行した次第。

 ●特急白馬アルプス 西明石行き

金沢駅にして西明石行きとは

金沢18:02発ということで、定時に会社からダッシュすればこの列車には乗れる。大阪で1泊して翌日だけ休みを取って、サンダーバードのグリーン車で悠々と帰るのもまた良し。どうせ今年も夏休みはないんだから、この位のゼイタクもいいかも。許されて!!(嬉泣)

うまく指定も押さえ、ホテルもスンナリ取れてラッキー。

金沢駅3番線の発車案内には、北陸線には似つかわしくない「西明石行き」の表示が。まるで関西地区みたい。

この列車はもともと関西地区から白馬方面への臨時夜行急行。それは下りだけの運行で、上りは勿体無い話だが長躯回送されていた。それが98年夏シーズンからは上りも臨時特急として運行されるようになり、白馬方面から関西へ帰るためはもちろんだけど、北陸線特急「サンダーバード」「雷鳥」を補完する目的でもあった。

もっともこの時間帯には17:14発雷鳥40号、17:58発サンダーバード42号、18:31発スーパー雷鳥44号と、たて続けに大阪行き特急がある。ボクが乗ったこの日の白馬アルプスは北陸線内からの乗客は僅かで、殆どが白馬方面からの帰りとおぼしき装備を抱えた乗客ばかりで約六割の乗り。ただ、旧盆のピーク時には雷鳥系統からあふれた客も乗るので、満席になるという。(この列車は全車指定)

つかの間の金沢との別れ。エンジン音を轟かせ夕陽を眺めつつ定刻に発車すると出足こそ電車には及ばないものの、田圃の穂が実りはじめた加賀平野を快走。…と思っていたら早くも寺井辺りからスピードが落ち、福井県に入るまではチンタラ運転。こんなものなのか…??大阪までの停車駅は福井、敦賀、京都、新大阪だけなのに。

 ●俊足ターボ炸裂!!

それは臨時列車の宿命だった。定期列車の運行に支障しないようにダイヤが組まれていたからだったのだ。先行する武生行き快速を芦原温泉で抜き去ると、列車は俄然スピードを上げ、ターボ全開で加速!!電車特急と変わらない走りに変わった。これを待っていたんだよ〜〜!!(号泣)

この181系というディーゼル特急は中央線や奥羽線、伯備線、四国でハイパワーを武器に走ってきた。今では電車や新幹線などに置きかえられ、山陰地区で余生を送る生活だけど、ずっと金沢には縁がなく、その力強いフォルムと共にボクにとって幼い頃からの憧れの存在だった。そのハイパワーぶりをぜひ体験してみたかった。それがこの瞬間、叶えられた。

181系のスペックを(クルマ流に)並べてみると

エンジン型式

DML30HSE
水冷水平対向12気筒OHV
インタークーラー付ターボチャージャー搭載

排気量

30,000cc

出力

500PS/1600rpm

最高速度

120km/h

というもの。ただ、トランスミッションは2AT。変速段と直結段しかありません。でもクルマ並みの自動変速で、キックダウンも出来ます。

このエンジンは今でもディーゼルカー用としては国内最大出力を誇る。これが各車1台ずつ付いているのでその走りは想像以上だった。変速段で80km/h辺りまで引っ張り、直結段に切り替わって一気に最高速まで持っていく。その間ターボチャージャーの「キィーーーーン」という音が聞こえてくるこの快感!!

もっとも普通のお客さんにとっては、この列車がそんなディーゼル特急だとは知る由もなく、むしろターボの音が電車のモーターの音にも聞こえないこともないから、ただの電車と思われているというのが本音かも。

それにしても熱い、ホントに熱いその走りに、ボクはただひたすら感動していた。

 ●雨上がりの湖西路、そして大阪へ

下りの急行では米原経由のこの列車は、上りは湖西線経由。近江塩津で北陸線と別れ、485系クラシック「雷鳥」でお馴染みの電源切替はディーゼルなので勿論ナシ。ただ、こちらでも臨時列車の宿命で敦賀-京都間では休日ダイヤより5分も遅く、途中まではまたチンタラ運転。でも近江今津辺りから再び快走!!

気がつくと地面が濡れている。ここ数日全国的に大気が不安定で、各地で雷雨になっていた。幸い雨は上がっていた。

あっという間に琵琶湖タワーなんかが見えて堅田通過。5月に取材した京阪大津線の四宮駅が見えたらすぐ山科通過。フェルメール展を見に行った帰りにはその駅前の三条通で渋滞にはまっていたのを思い出した。程なく京都着。

ここでも臨時列車の宿命。停車時間が長いなと思っていたら、後から隣のホームに着いた新快速の網干行きが何と先に発車。悔しい〜。こっちは特急だというのに。ただし続いて京都を発車するとまたターボ全開で快走。後から後から新快速が追っかけてくるからだ。

新大阪まで最後の走りを堪能。新大阪を発車する時、ディーゼルの音に驚きの眼差しを注ぐ家路を急ぐ人たちが実に印象的だった。淀川を渡り、直結段に入るまでもなく大阪着。降りるのがちょっと惜しく思えた。

ホームではやっぱり「鉄」が数人。でも夜の駅とはいえストロボを使うのは疑問。運転士さんが信号を見づらくなったらどうするんだ。ボクは夜の駅では絶対ストロボは使わない。安全第一。さらに西を目指す白馬アルプス181系をホームで見送り、この夢のような3時間余りは終わった。

特急『白馬アルプス』西明石行き
これが『白馬アルプス』181系の勇姿

ホテル(新阪急ホテル)にチェックインすると、シングルで予約したのに部屋はツイン。ラッキー。そのホテルは○○年ぶりに甲子園出場を果たした札幌南高校の大応援団で混雑していた(ちなみにこの日初戦敗退)。すぐに外出して遅い夕食はまた焼売太楼で揚げ焼売にとろける。歩いているとパカッと写真を撮られたが何だったのかなあ。来月号あたりのLマガにでも載るのか??

 ●やっぱり散財

朝食のバイキングは焼きたてプレーンオムレツにウキウキ。目の前で焼いてくれるんだも〜ん(嬉)。チェックアウトして荷物を預け、まずは旭屋書店で「鉄」本を数点購入。ただ立ち読みしながらひたすら本に話しかけている「けったくそ悪い」ヤツに閉口。これだから「鉄」はキチガイ扱いされるんだよな。全く。

続いて豊中の「鉄」の店で再びバックナンバーを探そうと阪急宝塚線の客となったが、行って見ると店は休み!!(前回「またちょくちょく来て」と言っていたのにー)しかたなく梅田に戻ってHEPファイブへ。BEAMS、SHIPS、GAPと見て回りながらやっぱりお目当てはゴルチエ・オム。金沢にはないんだもん。何やら商品山積みになっているのでヘンだと思ったら、何とこの日から驚異の60%オフ!!結局カットソー2枚とパンツを破格値で購入に成功。

 ●早めの帰途は…

ホワィティでヘレかつを食べて、泊まったホテル1階のソニプラを覗いてタイムアウト。今度は余裕で(笑)荷物を受け取り、JR大阪駅へ。14:42発サンダーバード25号のグリーン車で早めに金沢へ戻る。もうグリーン車やめられましぇ〜ん(笑)。もっとゆっくりしていってもいいんだけど、帰ってそのまま駅のまん前のジムに直行したかったから。

ところが大阪駅では異変が。JR京都線の車両故障でダイヤが乱れているという。金沢方面定番の11番線ホームへ行ってみると、すでにサンダーバードは入線していた。定刻に電車は発車したが、どうやら新大阪-大阪間下りで電車がストップしてしまったらしく下り線では途中で「スーパーはくと」や普通電車が止まったままなのが見えた。我がサンダーバードは京都まではすんなり走ったものの、京都を出てからの湖西線ではダイヤの乱れを受けてノロノロ運転。漸く高島あたりからいつもの高速走行に戻ったが、敦賀着の時点で9分遅れ。金沢までは余裕を切り詰め飛ばしに飛ばしたが、それでも遅れは7分まで縮めるのが精一杯だった。

金沢に着くと隣のホームでは越後湯沢行き「はくたか17号」が乗り継ぎ客を今や遅しと待ち構えていた。そちらも2分少々遅れて出発していった。

遅れてスマン

後はまかせろ

特急サンダーバード25号

特急はくたか17号

お気に入りトートにジム用のウェアごと大阪へ連れて行ったので、そのままジムへ直行〜。着替えているとちょうど前日金沢を発った頃。あの「白馬アルプス」が、この日も西明石を目指しターボ全開で走り出したのを、ビルの11階のロッカールームから見届けることが出来た。
軽くバイク漕いで筋トレをしていたら#2も合流。いつものようにエアロに汗を流し、いつものように帰宅。

● ● ●

山岳路線でのスピードアップ、電車特急と同等の走りという過酷な条件を要求され、それらを実現してきた181系ディーゼル特急の走りは本物だった。「白馬アルプス」は臨時特急ではあったが、確かに電車特急「雷鳥」と全然変わらない見事な走りっぷりだった。ただ製造後25年以上を経過し、疲れが隠せないのも事実…。これは北陸線の485系クラシックも同様だ。この181系も置き換えが決定していて、早晩リタイヤすることだろう。ただ、その日まで、あのターボサウンドを響かせて特急車としての走りに最後まで徹してほしいものだ。

最後までがんばれ!特急『白馬アルプス』
金沢駅での『白馬アルプス』(7/21撮影)

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