Layer:04 RELIGION


●さて、第4話です。あいもかわらず同じ街の輻輳から物語は始まっています。今回流れているモノローグは、「親なんて要らない、人間なんて、たった一人なんだよ。誰とも繋がってなんか・・・ない。」と、なっています。この声は誰が言ったことになるのでしょうか、シナリオ集の通りだとすると「女の声」となり、キャスティングは黒崎彩子さん。

●サブタイトルの後は電線のアップ、そして玲音の部屋と場面は移ります。この時部屋のぬいぐるみがわりとアップになって出てきますが、これらは質感をなくし、モノトーンのテクスチャとなっています。これはこの時点の玲音にはもう、ぬいぐるみは用をなしていないアイテムということなのでしょう。

●部屋で様々なボードやチップを散乱させて、下着姿の玲音が床にうつぶせで何かのマニュアルを読みふけっています。それをドアの隙間から康雄が覗いているのですが、ドアを閉めるときの康雄の表情と間は何を意味しているのでしょうか。

 A.ついにこの時が来てしまった、とのあきらめ。

 B.同じく、期待

●冷蔵庫を開けて飲み物を取り出す美香。シナリオ集ではワインのデキャンタから中身を飲むということになっています。たしかに前動作としては「ミネラルウォーターのボトルを取ろうとして」と、同じなのですが、画面ではオレンジ色の飲み物に見えます。シナリオ集通り、母親の目を気にしているらしい動きもするのでカクテルか何かのお酒なのでしょう。余談ですが、この美香お姉ちゃんはなんかとっても普通で可愛らしいので偉鷹は特に好きです。

●美穂(母親)はリビングで座った康雄に、「どうでした?」と声をかけます。すぐ後に美香が「玲音、おかしいよ。まあ、今日に限ったことじゃないけど」と告げます。対する康雄は「いいや、おかしくはないんだ」とだけ答え、再び持っていた新聞に目を戻します。美香は不満そうに去ってゆきますが、このことからも美香がこの時点で橘総研の計画などは知らないという感じが強くなります。

 それから、美穂は「そうなのね」とつぶやき、康雄は「そうなんですよ」とこたえます。この夫婦が共通の秘密を持っていることはこのやりとりからもうかがえるでしょう。また、このあと美穂が康雄の頭をなでにいった「能動的行動」からも、美穂が康雄と夫婦であることは美穂にとって望むべきことであるといえます。

●マンションらしき建物の廊下を怯えながら逃げ惑う、「ちょっと老けた感じの」少年。あるドアにたどり着き、必死で持っている鍵でロックをはずそうとしますが、慌てるあまりなかなか入りません。ゆっくりと追いかけていたはずの少女はいつのまにかすぐ近くまで迫っています。

 そして少年の肩越しに(少年は立っており、少女の身長は少年の胸より下ぐらいまでしかないにもかかわらず)見下ろして、「ガッチャ」とつぶやきます。シナリオ集によると「ガッチャ」とは「捕まえた」の意であるらしいです。これは子供向けの鬼ごっこソフトで遊んでいるつもりの少女が、リアルワールドの少年に干渉しているという状況です。

 これは後で似たような状況が出てきますが、そちらの方がさらに互いの立場が入り混じっていることを考えると、この時点ではまだそれほどワイヤードとリアルワールドの境界が揺らぎきってはいないということでしょう。

●学校、先の少年が自殺したという噂話をありす、樹里、麗華がしています。玲音が話しに加わりますが、一瞬ありすは無口になります。玲音の雰囲気が変わっているのを他の少女達より敏感に感じ取ったのでしょう。続いて麗華がそれに気付き、玲音に言います。

●帰り道、街中でクレープを食べながら歩いている4人。玲音は今までになく朗らかにしゃべり、そしてNAVIを早く完成させたいと言って一人で先に帰ります。玲音の変化を心配そうに見送るありす。こう言った状況からは「ありすはナイツのメンバー、もしくはナイツの関係者である恋人の教師の指示で玲音に干渉している」という説はありえないように見えます。

 ここでありすに先の「ガッチャ」の少女がぶつかります。このことで少女が実在の人物であることが証明されるのですが、「ううん、あたしのほうがわるいの」と言った声は「ガッチャ」の時の声とは全く違ったものであることも事実です。とすると、先の声はこの少女ではないのでしょうか。

●再び電線のアップ、玲音の部屋。パワーアップした自分のNAVIでメールを受けています。メールのないようはプシューケプロセッサを用いた、マシンの設定方法らしいですが、ここでアドバイスをくれた人物など、短期間でずいぶんネット上の知り合いを作ったようです。

●サイベリア、JJ。ディスクの整理をしている彼に玲音の声でゲーム「ファントマ」についての質問が投げかけられます。JJは答えますが、玲音は当然そこにはいません。「俺も空耳聞くようになっちまったかよ・・・」とJJがぼやきますので、彼は本来デバイスで繋がっていない人なのでしょう。にもかかわらず玲音が平気で声をかけることができたと言うことは、外部からのコントロールでここにいる人にアクセスできる方法があるということでしょう。誰かはその方法を用いて「サイベリアにいたワイヤードの玲音」を出現させたのかもしれません。

●夜、どこかの屋上、猫シャツの少年。リアルワールドにいるはずなのに彼の目にはダンジョン型RPGのコースが映り、ぼんやりと下着姿の玲音がみえます。怯えた彼は持っていたガングリップ型のNAVIを床に叩きつけ、壊しますが、そのあともダンジョンは見えつづけます。先の「ガッチャ」といい、これらはワイヤードから繋がっていない人にアクセスする方法が実際に使われていることの現時点での証明になります。

 さらに恐るべきは、このあと少年がゲーム内の機能で追って来た少女達に発砲するのですが、次の場面では明るくなった屋上にひざを抱えて座る少年の前には3つのシーツに包まれたカタマリがあったと言うことです。これらが少年を追っていた子供達だとすると、この時点で肉体の転送まで行われたことになり、少年のプレイしていたゲーム「ファントマ」に施された仕掛けはテレポートまでも具現化したことになります。第6話で出てくるKIDSシステムのエミュレーターが仕掛けだとすると、充分あり得ることですが。

●その少年を寂しげに見つめる玲音。彼女の輪郭はぼんやり輝いています。これはワイヤードを通じて彼を見ているからなのでしょう。

 少年は非合法のサーバーからこのゲームをダウンロードしたといっていました。

●玲音がファントマを調べていると、康雄が入ってきます。彼はワイヤードに慣れはじめた玲音を頼もしそうに見ますが、一言忠告します「リアルワールドとワイヤードを混同してはいけない」と。しかし玲音はそれに異を唱え、「そんなに境界ははっきりしていない」と言います。この時康雄の顔は非常に真剣なものになり、玲音は「心配しないで、あたしは、あたしだもの」と、康雄は「そうかな」とつぶやきます。

 このときの玲音のまなざしは非常に冷たいものです。さらに口元は小さく笑っていさえします。ということはこの玲音の人格はやはり、あのぼんやりした臆病な玲音のものとは違うようです。康雄が慌てなかったのはこうなることを薄々でも予測していたからと思われます。しかし、康雄が喜んだ風でもなかったことから、この現象について「予測もしていたし、そのために色々画策したが、個人的にはそれを必ずしも望んではいなかった」ということなのでしょう。

 康雄という人物は何とも不思議なキャラクターです。彼についてですが、これまでのところを総合すると、彼は橘総研のやっていることを知っていて、それについて直接働きかけることはせず、しかも玲音がワイヤードになじむことを望み、それどころかそのためなら彼女が別人になろうともそれを拒否せず、しかしそれを心から喜んではいない、という人物像なのです。とすると、彼は何か使命感のようなものを抱いているとも思われます。

●ワイヤード上の情報を眺めている玲音。その中には「−れいん、どうしてはやくこっちこないの?!」という声もあります。その時彼女は部屋の中に動くレーザーポインタの光に気付きます。その発信源が外にいるMIBだと気付き、急いで駆け下りてゆきます。なぜかこの時の玲音は非常に怒った顔をしています。「あっちへいけ」と玲音がつぶやいたとき、MIBの林がカールになにか話しかけていますが、声は無いのでなんといったかは不明です。

 次にもっと大きな声で「あっちへいけっ!!」と叫びますが。その瞬間ガラス窓に波紋が広がり、林のゴーグルがはじけ飛びます。この玲音はサイコキネシスを使えるのでしょうか。

 A.玲音はもともとPSY能力を持っていて、この人格はそれを自由に使える

 B.ファントマを調べているうちにKIDSシステムのエミュレータプログラムに気付き、それを介してサイコキノとして使った

 C.玲音はもともとKIDSシステム自体を身体能力として与えられている

 どれもありそうですが、この場合はCのような気がします。玲音が第1話から(実際には以前からずっと)、まだファントマの話が出ていない頃からワイヤード上の情報を「電波声」として見ることが出来たこともそれを裏付けるのではないでしょうか。

●あわててMIBは車に乗り去って行きます。玲音の背後ではNAVIが「イントルーダー、インタラクティブ(侵入者を阻止しました)」とメッセージを発しています。これはこの時に何者かのハッキングがあったことを示しています。現実でもサーバーを開設しているとひどいものでは日に数万アクセスのハッキングがかけられるらしいので、一つぐらいあっても不思議ではないのですが、このタイミングはちょっと気になりますね。

to B continued


 すっかりお待たせしてしまいました。最近ますます時間が無くなってきて、ああ、どこかにコピーロボットでも売ってないかしらんと真剣に考えてしまいます。とりあえず第4話をお送りしましたが、あくまでこれは私の考えを順に追っていってるものですので、見落とし勘違いなど多々あるかもしれませんが、疑問点がありましたらどうぞ遠慮無くおっしゃってください。その方が私としても助かります。

 ここまでくると、少しずつですが各キャラクターの立場というものが固まり始めます。それとともに玲音という少女がいかに何かの計略の中にはまっているかということもはっきりしてきます。が、それが何であるかは全く見えてきません。物語の主旨は玲音という少女を感じることとはいえ、このミステリアスな展開は次が気になってしょうがありませんでした。


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