Layer:01 WEIRD


 言わずと知れた第1話です。すべてはここから始まりました(偉鷹がドハマリするのも・・・(^^ゞ)。

●まず、これ以降の話で、必ず出てくるイントロ。「電線と街の風景、そしてハム音(ヴーン・・・)と喧騒」です。この話ではここに、自殺した「四方田千砂(よもだ ちさ)」の声が「どうして? どうしてこないの?」と、被っています。千砂がこのシーンの「後」で自殺するのですが、千砂のこのセリフはのちのち玲音に何度もかけられることになります。これは千砂が玲音をワイヤードに誘っているという意味合いのはずです。ですが、千砂が死ぬ前にセリフが発されていますが、これに対する解釈は下記のとおりです。

 A.これは千砂の飛び降りる前の思考を表わしたものである

 B.後の話でもやっているように、時系列通りのシーンではなく、自殺した後の千砂の声である

 C.一見(一聞?)千砂の声に聞こえるが、違う人の声である

 D.すでにワイヤードとリアルワールドの境目は危うくなり始めており、千砂はその両方に意識を持っている

ぐらいでしょうか?

 ちなみにシナリオでは「若い女」ということになっていて「四方田千砂」とは書かれていませんでした。エンディングテロップのキャストには四方田千砂は武藤寿美さん、少女の声は川喜多美子さん、吉井恵子は根谷美智子さんでした。

●千砂が自殺する前に呼吸を荒くしているシーン。このときすでにlainワールドの「影」には赤い斑点が描かれています。千砂が自殺するんだからリアルワールドの可能性が高いんですけど、もし、ワイヤードとリアルワールドの両方に意識があるのだとするとこの情景もワイヤードの描写であることが考えられるんですよね…。千砂が映される直前のネオン街のシーンには「影」はたくさんあるけれど「斑点」1つもありませんし、千砂が映し出されているところの「影」には前述の斑点なしの影と同様のところは「斑点付」になっています。これに対する解釈は下記のとおりです。

 A.「斑点」は、そこがワイヤードである証

 B.影はそのシーンで主体となっているキャラクターの主観的描写の延長になっていて、キャラクターの心理状態が反映されている

●千砂が自殺するシーンの後(キーホルダー付の鞄が映される手前から)にはレーザーサイトのポインタであるかのような光があります。lainでこういうアイテムを使っていたのは、のちに「サイベリア」で自殺した男とMIB(黒服の男達)がいます。これに対する解釈は下記のとおりです。

 A.MIBは千砂にも目星をつけていて監視していた。

 B.「サイベリアの男」は千砂の知り合い(ワイヤードかリアルワールドで)で、自殺を見届ける関係にあった(でもこれだと銃を千砂に向けていたことになりますね(^_^;))

 C.上記のどちらかが偶然通りがかっていた(これもかなり無理がありそう・・・)

 D.ただの血の反射光であり、特に含みはない

●ここで初めて我らが「岩倉玲音」が登場します。周囲の家の風景から岩倉家に近づいていきますが、ここでも影には赤い斑点がついています。ここには誰の主観的感情もないはずです。次に岩倉家の玄関が映って、中から玲音が歩いてきます。ところが、その後電車に乗ると、電車の中では影に「斑点」はついてないんですよね。

 「岩倉家」がワイヤード上のヴァーチャルな空間であるといった見方もあるので、そのことを考えると、「斑点付き影」のあるシーンは「ワイヤード上の存在」可である能性が少し高くなってきました(これには、この時の玲音が電車の中に注意を払っていくて次に述べている「ワイヤード」へ注意が集まっているとすると電車内の影には注意を払っていないのだから印象がないので斑点がないという見方もありますが、岩倉家周囲の家の風景で斑点がなかった事実がありますし、その後玲音が出てくるので玲音の主観だ、というのはちょっと論拠が弱い気がしますね)。

●電車の中で玲音の声で「うるさいなぁ」「だまってられないの?」と声がしますが、当の岩倉玲音は一つ目のセリフには口の動きがありますが、二つ目はしゃべる動きはシーンチェンジのため見当たりません。初めて見た時には玲音が霊能力者なのかとも考えましたが、通して見るとそうではないのはみなさんご存知のとおりだと思います。喧騒がこもった音で入っているので、対象はワイヤードから聞こえてくる声でしょう。玲音がワイヤードの音(場合によっては画像やワイヤード上にいる人も)を聞ける(または見える)ことにはどなたも異存のないことと考えるので。これに対する解釈は下記のとおりです。

 A.動きはロング・ショットでは見えないぐらいであったが、声に出してしゃべった

 B.W/R(ワイヤードとリアルワールド)の境目がすでに危うくなっており、ワイヤード上からの発言がみんなに聞こえた

●学校の正門での登校風景。ここでもやはり影には「斑点」はありません。かわりに、玲音が見つめる自分の影にはマーブル模様が蠢いています。これはワイヤードが「影の中に見えている」状態だと思われます。それから校庭がホワイトアウトしてしまいますが、これもワイヤードが玲音の視界を浸食した現象だと考えています。まぶしいかのように目を細める玲音は、この現象に慣れっこになっているようです。

●場所が校内の自分のクラスに移りました。樹里が泣いており、原因は死んだはずの四方田千砂から電子メールが来て怖いということです。この時瑞希ありすがなぐさめるために樹里の頭をなでています。ありすが「姉」的な性格の片鱗を見せているというところでしょうか。

 ありすは玲音にメールが来たかを聞きますが、玲音はメールのやり取り自体好きではないようで「あたし、苦手だから・・・」と答え、ありすは「メールぐらい毎日チェックしなさいよ」と返します。続くセリフを聞くと、何人もの人物が千砂からのメールは来ているようです。

 千砂が死んだ後に千砂からのメールが来る。普通に考えればメール配信の遅延ともとれますが、これらのやりとりはこの時代、メールがあたりまえになっているツールであることも指しており、それは遅延ではないことを裏付ける何かがあったのだという証明にもなっています。こういった背景で樹里が怖がっているのは、物語に「謎」的な雰囲気を表面化させるイベントでした。

●授業中の風景。まず黒板の字が歪んで見えにくくなってゆきます。次に玲音の手から「エクトプラズム」状の白いもやが湧き上がって天井へと伸びて行きます。これらも玲音の視界がワイヤードとリアルワールドを同時に見ている描写なのだと考えています(この時点ではまだリアルワールドのほうが強く見えていると思います)。

●画面全体がCGライクなマーブル状になっていてセリフが文章としてかかれているシーン「死ぬとき? いたかったよー(笑)」。これはここまでにも幾つか出てきましたが、この文章でこれがワイヤードから発されているものだとの推測が成り立ちます。つまり死んだときの感想ですのでこれを言っている人物は死んだ後ということになります。続く話中で千砂が肉体を捨ててワイヤードの存在となった、ということと密接に結び付いている文章だと思われます。

●再び岩倉家へと続く、今度は帰りの坂道。ここでも「斑点」がでてきます。

●夕方の岩倉家リビング。誰もいません。

●玲音の部屋。この時点ではほんとーにがらんとしています。窓には(ここだけが)女の子らしく、ぬいぐるみが沢山並べてあります。勉強机の上にはNAVIがありますが、しばらく使っていなかったようで、後向きになっていて、手前には目覚し時計、鉛筆立て、小さなクマのぬいぐるみなどが無造作に置かれています。

 着替える前にNAVIを操作しようと上着を脱いだ玲音が机の前に座ります(この時NAVIの前にあるものをどけて、その中の1つである帽子を頭に載せます。これもクマ風の帽子ですね)。

 NAVIでメールをチェックすると、やはり千砂からのメールが届いています。「こんにちわ、元気?」までよみあげたところで一瞬画面が真っ黒になるんですが、これは玲音のショックを表わしているんでしょうか? それともメッセージは結構長いもので、その間を飛ばしたと言うことなんでしょうか? たぶん両方なのだと思いますが。

※補足 この暗転は本来A/Bパート境目の暗転で、ここでAパートの終わりになることで「>玲音のショックを表わして」となって、CMの間に「>その間を飛ばした」ということでしょうね。とのご意見を頂きました。ありがとうございますイヴュマーさん 1999.05.08

 続くメッセージで「玲音とは、一度だけ一緒に帰ったことあったよね。憶えてる?」「あたしはただ、肉体を捨てただけ。あたしはこうして、まだ生きてるって、説明できるもの」「だれかのいたずらメールだと学校ではうわさになっているようだけど、そうじゃないってこと玲音には解ってもらいたいの」「ここには神様がいるの」。このうち「だれかの〜」は玲音宛のこのメールは、千砂が死んだ後に届いたメールがにより学校で飛び交ったウワサを把握して書いているのだから、誰が書いたかは別として、事実上千砂が死んだ後で出されたものであるという感を強くします。また、「神様」これは重要なキーワードですが、この時点ではとくに意味を持たないですね。

●夕食風景。まずはテレビのあおりのアップからはじまります。残念ながら画面の文字は右上BOXの最下列がトライアングル(かな?)と読めそうなだけで、よくわかりません。父親のいない食卓で、母は黙々と食べるだけ、姉の美香は少し食べて「昼が遅くってさー」と早々退室、玲音自身は食事が食べ物に見えないと言う風にスープをかき混ぜています。冷めた家庭であるという印象がここで初めて出てきました。

※補足 このテレビの文字ですが、以下の文であることを教えてもらいました。ありがとうございますイヴュマーさん 1999.05.08

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○教育費の公私格差2.75倍
○南北次官級協議 議題で一致
○未払い賃金立て替え 増加
○トライアングル新人募集
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●再び玲音の部屋。ここで玲音は「クマパジャマ」を着ています。フードを下ろして自分のベッドに座っている状態ですが、最初の印象として、玲音の幼児性とその原因となっているのが冷めた家庭であるといったものがあり、着ぐるみという、防護膜をまとった玲音の心境と言うものがいかに脆いものであるかをあらわしているように感じました。

●父「康雄」の帰宅(車のライトが玲音の部屋に差しこんだので玲音がこれに気付きます。シナリオではタクシーで帰宅となっていてレインの部屋から見えると書いてありますが、そのシーンはありません。けれど岩倉家にはガレージがありませんでしたので、タクシーか誰かに送ってもらったことになるでしょう)。

 康雄は帰宅後、着替えもせずに自分のNAVIに付ける増設ボードを自分の部屋に持ってきており、早速マシンに取り付けます。このマシンの数の多さにびっくり。彼がヘビーユーザーであることがここではっきりしています。ここでの康雄は玲音に対して「この世界はね、玲音。リアルワールドでもワイヤードでも、人間はみんながつながっている。それで社会が動いている。玲音のような子でも、すぐに友達が出きるんだよ。怖がることなんて全然ないんだ」と言って玲音にワイヤードへのアクセスを勧めています。この時玲音の口がアップになって、何か言ってますが、音がないので解りませんでした。

 チャットに夢中になっている康雄はこの後の玲音の言葉をあまり聞いていないように見えますが、ひょっとするとこれも玲音に孤独感を与えるための「芝居であった可能性」もあります。この時点ではただの子供をあまりかまわない父親としてしか見えませんが。

●再び登校中の電車内。いつも同じところに玲音が立っています。そして突然の急停車。「ただいまこの電車は事故のため停止中です」とのアナウンスが車内に響きます。周りの人が「人身かなぁ」とか言っており、その直後立ちあがった玲音が窓から電線を見ると、電線に何か液体が伝っているのが見えます。さらに液体がアップになると、それが「赤い、粘性を持った液体」であることがわかります。事実だけで見ると、何か生物が電車にはねられたことがわかります。電車が急停車かけたことでもこれは猫や犬ではないでしょう。

 その後一旦モノクロ画面のようになりますが、これは血を見た(それによる事故の想起も)玲音のショックを表わしているのだと考えます。

●駅の出口に通じる階段の下で玲音が振りかえります。その直前に出口近くを歩いていた人々が出口の光に溶けるように消えてゆきます。さらにこの直後に学校の校庭風景が出てきて、真中に玲音らしき人影があります。光の感じからすると夕方のように見えるのですが・・・。そして室内に突然います(これはどこなんでしょう)。シナリオによると「抽象的イメエジ」ということで、「どこにいても玲音は一人」というのを表わす事になっています。ここはシナリオ通りの意図を作ったと言うことになると思います。

 さらに背景はいきなり住宅地の真中にうつり、ここでも玲音は一人です。まわりから立ちこめてきたもやと共に、また場所が変わり、踏みきり近くの線路の上に玲音が立っている場面になります。踏みきりをくぐって反対の線路には少女が飛び出してきて、電車が近づいて来る音もどんどん大きくなって・・・はねられる瞬間に画面がホワイトアウトして、場所は教室に戻ります。汗がぼたぼた落ちるほどに玲音は緊張して、そこに先生の「岩倉さん」という声がかかります。見た1回目ではもうわけがわからないですね、確かに。ここの解釈は下記の通りです。

 A.朝見た事故の痕跡(電線を伝わる血など)から、玲音は恐怖が刷り込まれていて、授業中にもそれを想起してしまい、怯えていた。

 B.これもワイヤードが玲音の視界を浸食している現象で、事故で死んだ少女のデータを垣間見てしまった

 この先生の言葉のあと、黒板を見るのですが、これも歪み、「早くワイヤードに来て」という文に化けてしまいます。

●また、帰りの坂道です。今度は「青い斑点」が影につけられています。玲音が歩いているところを真横から映すシーンもありますが、この背景は赤と青の斑点でまだらになっていました。そのすぐあとに四方田千砂がすれ違うのですが、すれ違った瞬間、玲音が「はっ」と気付いたと同時に千砂の姿は「ぱっ」と消えてしまいます。そして振りかえった玲音の目には、千砂が立っている姿が見えます。玲音が「そこ、どこ?」と聞くと千砂は「にっ」と笑った後、無表情に戻り、らせん状になって消えてしまいます。玲音が驚かないのはこういったビジョンには慣れっこになっているためでしょう。

to B continued

 


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