Backbone Dessection _ <First>
 見てもわかんなーい。という意見がけっこう偉鷹のもとに寄せられたんで、ばかな偉鷹がそれなりに独断と偏見のもとにまとめて見ました。

 事の起こりは、物語中の「現在」を遡ること15年前、ホジスン教授なる人物が「KIDS」という、PSY(サイ)―― 一般に「超能力」と呼ばれる力、作中では大抵の子供が極く微弱ながらも持っているもの、とされている ――の源たるエネルギーを複数の人物から集約するシステムの実験を行ったことから始まる。

 これが「ケンジントン実験」であり、結果は失敗で、暴走したシステムは、被験者である数十人の子供達ごと消滅することとなった。

 ホジスン教授はこの結果(子供達の消滅)に心を痛め、システムの設計図やその他もろもろを全て破棄し、闇に葬った(つもりであった)。

 その後10年ほど、表面上は何事もなく過ぎたかに見えたが、橘総研(たちばなそうけん)に勤めている研究者「英利政美(えいりまさみ)」が1つの思いつきにあたる。

 次世代のプロトコル ――ワイヤード(ネットワーク)で機械が通信するための約束事、作中では通信するために使われる基本プログラム自体を指しているように思われる―― プロトコル7(セブン)を研究していた彼は、このプログラムに幾つかの余分な機能を追加することで、自分が「神」となれる事に気付いたのだ。もしかするとこの時点ですでに彼は、ワイヤードのどこかに埋もれた(もしくは誰かが所持していた)「KIDS」の研究レポートか何かを手に入れていたのかもしれない。

・プロトコル7の付加機能1
 英利は「地球の脳波」といわれる電磁波共鳴である「シューマン共鳴」という現象を利用し、人類の集合的無意識を意識へと変異させるプログラムを作りだし、「レイン」という人格を作り出した。これが作中で「ワイヤードのレイン」と呼ばれる人格である。人格の初期作成時に統合されなかった無意識人格はネット上に偏在し、無数の「lain」となった。

・プロトコル7の付加機能2
 「KIDS」システムのエミュレーター(本来、専用の機械が必要なものをプログラムによって代用したもの)をワイヤード上に置くことで、世界中の子供達からPSYエネルギーを集め、この膨大な超心理エネルギーを使うことで、ワイヤードからリアルワールドへの干渉を可能にする土壌を準備。

・プロトコル7の付加機能3
 自分のパーソナルデータ(人格・記憶など)を電子化し、自らの人格プログラムもプロトコルへと織り込むことで、「英利政美」自身を電子化した(と錯覚した)。その後自殺。

 自殺する前に彼がやったことも幾つかある。バックアップ組織としての「ナイツ」の編成と「岩倉玲音」の作成である。

・ナイツ
 彼らは英利によって認められたハイレベルのハッカーであろう。世界中に存在しており、個々としてはどういう理由があるかは定かではないが、基本目的は「神」の直属のしもべとなること(または自らも「神」としてとりたててもらうこと)である。

・岩倉玲音の作成
 橘総研の重要人物(どういうポストに居るのかは不明、ただ、人間ひとりを作るプロジェクトを秘密裏もしくは堂々と行えることから考えて、かなり上の方に居る人物であろう)と取引をして岩倉玲音という少女の肉体を合成した。この後、玲音がワイヤードとリアルワールドの垣根を取り払うことを考えれば、橘総研にとっても市場の拡大と変質(しかもその変質は自社だけが予測できている)が、うまみとして取引材料になっても不思議ではないだろう。

 英利は「レイン」に肉体を与えることで、恩を売り、拘束するつもりであったのだろうと思われる。――造物主として。

 肉体として生み出された「岩倉玲音」彼女は常識的な記憶(中学生程度の学力など)を植え付けられた、せいぜい3才児ぐらいの人格を持つ。これが通常の「玲音」なのだろう。ワイヤードの「レイン」を受け入れるための器として用意されたのだとすればこれで十分なはずだ。

 この時用意されたのは父と母。この二人は橘総研の人物だと思われる。とすると姉は? そもそも必要があるかどうか怪しいのだが、それよりも「預言を実行せよ」のキーワードで彼女がおかしくなったこと(しかも「只今通信中・・・」などのセリフを発している)を考えると彼女は橘総研によって作られた「岩倉家」に対する「ナイツ」側からの間者だとするのが妥当だろう(本人には全く意識されていなかったとしても後催眠かなにかで処理されている可能性が強い)。

 ともかく、この状況のもとで「岩倉玲音」をとりまく「家族ごっこ」が始まった。英利にとって見れば、この状況のもとで「玲音」を追い詰めてゆき、最終的には「レイン」の意思も剥奪して、その「力」だけを手に入れようとしたのではないだろうか(太郎くんの口に「レイン」がつっこんだチップによって)。この段階でワイヤードとリアルワールドは垣根がとりはらわれ、ワイヤードの神は現実にとっても神になる。それこそが英利のねらいだったのだろう。

 だが、そこにひとつだけ誤算があった、「瑞城ありす」の存在である。彼女は玲音に少しずつであるが「あたたかみ」を与え、最後の局面で、玲音が英利に引き込まれることを防いだ。彼女がいなければ英利の計画は図にあたっていたことだろう。

 最後の最後で、英利を完全に拒否した玲音(この時の玲音はほとんど無敵モードですね。だってレインと玲音の人格は統合されているし、ありすの噂話を消すために自分の体にKIDSのエミュレータはダウンロードしてるし、ワイヤードでもリアルワールドでも直接的に玲音を傷付けることは誰にもできなかったでしょう。英利が最後に肉体化しようとしたのも、ワイヤードでは絶対敵わないのを知っていたからなんだろうけど、リアルワールドでもKIDS使えば最強エスパーだもんね)はオールリセットをかけて情報も物理的にもすべてなかったことにしてしまった。

 自分が居なかったことにした玲音は、ひとりぽっちで泣いていたんだけど、ここで「おとうさん」があらわれて、あたたかい言葉をかけてきます。これこそが「本当の神様」なのでしょう。

 リセット直前に玲音が英利に言っていたセリフ「あなたは誰かさんの代理の神様」から推察すると、「本当の神様」は玲音を待っていたのではないでしょうか。玲音は人類の集合的無意識の人格化。とすると神様は人類が進化して、自分と対話できる存在になることを望んでいる・・・と考えることができます。

 ここで神様と対話して「何か」を得た玲音は「自分」というものについて納得し、成長したありすに会いに来ます。ありすには玲音に関する記憶がほとんどありませんが、それを承知で会うというのは、自我が安定していなかったらできないのではないでしょうか。というわけで、自分を確立した玲音は、自分の居るべきところで自分のすべきことを始めた・・・ワイヤードとリアルワールドの掛け橋の象徴とも思える歩道橋の上で「いつでも会えるよ」とのセリフにおちついたのであろうと考えます。

ここまで読んでくれた方へ、お礼を申し上げます。
長々とありがとうございました。ご質問やツッコミ(これはちゃうよー)などあれば掲示板の方へどしどし書き込んで下さいまし。
ではでは、偉鷹仁でした。

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