「虹と雪の挽歌」宇々田公三
山崎はかなりズルい。今回の上映プログラムでは、その仕組みがよくわかるような作品が組まれている。
『ダイナマイト・ロード』は山崎が大学生の時の作品。主人公を絞殺する役を演じているのが、のちにオウム真理教の文部大臣となる杉浦茂だということが今となっては見どころなのだが、ヴァイオレンス・アクション映画としての出来は悪い。ところがこの作品がなければ『極星』は生まれなかった。語るべき物語を失った山崎が旅に出る。行き着く先は『ダイナマイト・ロード』に出演していた女性の住む北陸の街だ。彼女は幼い子どもを連れて海辺で微笑んでいる。その間にあるのは5年の歳月。歳月と言えば、山崎の亡き父親のホームムーヴィーがそのまま挿入されているが、そこには17年の歳月が横たわっている。
小動物を使うのもズルさの定番だ。『極星』のうさぎと『猫夜』の仔猫。さすがに猫にカメラは渡さなかったが、『猫夜』では登場人物たちに8mmカメラを渡し、それぞれの日常の光景を撮らせている。考えてみれば手抜きではないか。ズルい。8mmカメラを渡されたカーコとリョウ、そして山崎が最後には一緒のフレームにおさまると思わせておいて、そのまま映画は終わってしまう。ところが『だはん2』を観るとこの3人、脳天気にかくれんぼをしているではないか。このカットがなぜ『猫夜』から排除されたのかを考察するのはおもしろい。
無理を承知で言ってしまえば『虚港』のルーズソックス女子高生やミッキーマウスとミニーマウスについても、小動物の範疇に入るのではないか。ミッキーマウスは『散る、アウト。』にも登場している。12年も先行する『散る、アウト。』中の邪悪そうなミッキーの呼びかけに対して『虚港』では、死にかけたミッキーと援助交際に耽溺するミニーが応えているように見えるのもおもしろい。
映画がまた別の映画をはらみ、応えたり裏切ったりする。これもまた、目もくらむほど広大な映画の王国(クイーンズランド)の辺境で起きるひとつの出来事なのだろう。