「シビれるVM、トロけるVM」山崎幹夫
今回の上映会でワタシの短編連作「VMシリーズ」を完結させることにします。
最初の『VMの夢想』は1989年のイメージフォーラムフェスへの招待出品作品。以後、目黒区美術館で展示上映した『VMの間奏』、当ラ・カメラで公開した『VMの歩行』以外はすべてイメージフォーラムフェスに毎年出品されたものです。VMシリーズとしてまとめて上映するのは今回が初めてになります。 Vはスペイン語でヴィダ(生)、Mは同じくムエルテ(死)を意味します。ここから派生する生/死、見えるもの/見えないもの、色/空、記憶/夢による消去、などのイメージによってつくられた映像群ですが、難解でアタマと目玉が痛くなるような映像ではないので安心してください。
これまで8本の「VMシリーズ」は、上映時間を総計すると1時間とちょっとになります。製作年代順に上映するのが通常のやり方でしょうけれど、それでは芸がないので、20分ほどの新しい映像を撮影して、より皮膚感覚的にイメージが連鎖するように、ある程度バラして上映することにします。音楽におけるトータルアルバム的な感じで再構成するわけです。
映画を観てドキドキしたい、これはほとんどの人の思いでしょう。キレイなだけ、ウマイだけではダメなのです。いい男いい女にドキドキもあり、あまりのエッチにドキドキもあり、物語のダイナミズムにドキドキもあるでしょう。そんな「映画を観てのドキドキ感」のひとつに、物語はないのだけれど、イメージの連鎖に身をひたしているうち、映画を観ているのだか映画を観ている夢を見ているのだかわからなくなってドキドキというのもあると思います。そんなふうな心の準備をして来ると、より楽しめるのではないでしょうか。ドラッグ無使用のナチュラル・ハイ体験ってやつですな。
山崎コメント
●VOL581997 9ヤマザキ、ヴィダ、ムエルテ
「V.M.」 山崎幹夫 1997 8mm+16mm 80分
ワタシはこれまでイメージ・フォーラムフェスの招待作を中心としてタイトルのアタマに「VM」とつく作品を8本ばかり作ってきた。それをまとめて、さらに15分ほどの新しいフッテージを加えたのが本作だ。短編としてバラして上映することもできるが、まとめて1本の長編として上映することも可能。ともかくもこのシリーズに決着がついた。しかし映写がメチャメチャややこしい。16mmの方はマグネありオプチカルあり、8mmの方は1トラあり2トラありカセット出しあり、さらにシングル8ありスーパー8あり、18コマあり24コマありと、同じ作者とは思えないほどのフォーマットのデタラメぶり。映写しながら、自分で自分に腹が立った。