デュープというのは現像済みフィルムをコピーすることと考えればいい。これをわざと不完全にやろうというのがこの技法のねらいだ。
もとになるフッテージ(現像済み8ミリフィルム)と生フィルムの他には、必要なものは画鋲とセロテープのみ。作業はすべて真っ暗闇ですることになるので、ものをどこに置いたかを確認してから始めること。
最初に生フィルムをカートリッジからひっぱり出す。どのくらい出すかは素材フッテージの長さや、作業する部屋の大きさによるだろう。引き出した生フィルムは、カメラ内で光が当たる側を上にして、その上に素材フッテージを乗せる。一応、画鋲を使って重ねたフッテージの端のパーフォレーション(フィルム送り穴)を合わせて固定し、画鋲が写り込まないようにセロテープでとめてから画鋲を抜く。
これでぴったりと生フィルムの上に素材フッテージが乗っていたら、やや画質の落ちるコピーができるはずだ。しかし、暗闇なので確認はできないが、必ずズレが生じている。フィルムとフィルムの間に隙間ができていれば、デュープした映像はボケる。ズレていれば映像は横すべりのような状態になり、パーフォレーションが写り込んだりする。
さらにこうした効果を高めるため、ライトで瞬間的に感光させるのではなく、ペンライトでじわじわ感光させてやろうじゃないか。フィルムとの距離や角度を変化させ、なめまわすように感光する。こうすることでさらに映像が複雑にブレさせることができる。
なお、ペンライトは白熱電球なので使う生フィルムがRT 200の場合は正常の発色に、R25の場合はセピアがかった発色になる。参考作品として後にあげているワタシの『VMの夢想』『VMの漂流』では、素材フィルムは白黒なのでこの点は注意されたい。また、この方法のみで作品をつくれば、素材フッテージさえあればいいので、ムービーカメラを使用せずに作品ができることになる。
感光させる時間については、各自で試してみる方がおもしろいだろう。ローキー(暗すぎる)になってもハイキー(明るすぎる)になっても、そこそこいい効果が出るはずだ。R25を使った場合、シネライトだと一瞬で感光するが、ペンライトだとフィルムの30B上あたりをゆっくりと往復させるぐらいでもハイキーにはならない。
最後にひっぱり出した生フィルムをカートリッジにふたたび収納することを忘れないこと。そのまま部屋の明りをつけるとそこまでの努力が一瞬で消えてしまうことになる。
この効果についてコトバで説明するのは難しいのだが、風にたなびいている白いカーテンに映写したような効果だと形容することができるだろう。映像がフレームのなかをゆらゆらと泳いでいるような感じ。作家によって精密に計算され、コントロールされたものではなく、人為を超えた自然の力によって動かされているような感じである。