テレシネ/ブローアップ
8ミリはリバーサルフィルムである。つまり我々が通常使ってる写真のフィルムのように、容易に焼き増しができるようなものではない。
ということは8ミリフィルムで映画作品をつくったとして、フィルムの状態ではそのプリントが世界でただ一本だけということになる。編集や映写で傷がついてしまったら、それはもう取り返しがつかないということになる。
同じ8ミリフィルムでなくてもいいから、なんとかしてバックアップが取れないものか。
方法はおおざっぱに言ってふたつある。ひとつはビデオに変換すること。これをテレシネと言う。もうひとつはあくまでフィルムからフィルムの焼き増しにこだわる方法。どちらにするか、あるいはこの世に一本しかないという8ミリならではの「はかなさの美学」にこだわるかは作家しだいだ。
●テレシネ(フィルム→ビデオ/DVD)
おそらくもっとも手軽に注文できるのは、フジフィルムがおこなっているテレシネサービスだろう。どこのDPEでも受け付けが可能で、8ミリフィルムからDVD(もしくはVHSあるいはminiDV)に変換することができる。このサービスは「エフ8ミリディスク」と言う。
料金はDVDにする場合、10分まで8400円、それ以降は10分ごとに2100円。
http://fujifilm.jp/personal/print/conversionservice/f8mm/index.html
この「ご注文」のところで検索すれば、近くの店が発見できるだろう。
高品質でのテレシネを希望する場合は、現像所のヨコシネを利用するといいだろう。作業料金が加算されていくが、作業に立ち会って細かい指定をしていくことができる。
http://www.yokocine.com/
現像所なので料金が書かれていないのがコワイ。素人でも相手にしてくれるが、できれば過去にヨコシネと取引のあるプロダクションを通して割引きしてもらうのが賢いかも。また、HDフォーマットへのテレシネもできるのは強みだろう。
●簡易テレシネ
通称、簡易テレシネと呼ばれているのは、自宅などでフィルム作品をスクリーンに映写して、それをビデオカメラで撮影する方法を言う。昨今、DVカメラが普及していて、じつは結構きれいにビデオ化できたりするのだ。
以下、その方法と注意点を列記してみよう。
使用するビデオカメラはやはり3板方式(3CCD)のものであってほしい。そこでソニーVX1000を使うと想定して書いていく。
映写するのは正式のスクリーンよりも白のケント紙でいい。ケント紙でなくても、ツルツルしていなくてしわのない白い紙ならなんでもいい。大きく写す必要はないから、せいぜいB4くらいのサイズで映写すればOK。
ビデオカメラは映写機の前の方がいいだろう。映写機からスクリーンまでの直線上からあまりズレないように、しかしカメラの影が映写画面に入らないように設置する。もちろんカメラは三脚に設置する。
やってみるとすぐわかることだが、縦と横の比率が合わない。専門用語で、この縦横比率をアスペクト比と言う。これはもう標準規格の問題なのでどうしようもない領域の話。つまり、フィルムの方のスタンダードサイズは1:1.38。ビデオ、つまりテレビの方は1:1.33。このわずかな違いが、簡易テレシネの時に判明するわけだ。
ホワイトバランス設定については、ワタシじしん試行錯誤している。理論的には、スヌケのフィルム(完全に感光したほぼ透明状態のフィルム)をかけて映写し、ビデオカメラのホワイトバランスをマニュアル設定するのが正しいのだろうけれど、どうも満足できる結果にならない。
映写機のランプはハロゲン電球というものが使われていて、これの色温度は太陽光線、蛍光灯、白熱電球のいずれとも異なるのでマニュアルでのホワイトバランス設定が必要なのだが、テストフィルムを映写して、テレビ画面で色が合っているかどうかを確認すると合っていない。結局、あきらめてオートにしてしまっている。うまい方法を知っている人はご教示願いたい。
VX1000は色がやや青っぽい。これはフジフィルムの発色の傾向と一致してしまうのでマズい。そこでメニューのマニュアル設定で色を「濃い」方向に設定しよう。ワタシは最大限まで濃くしてしまう。
ホワイトバランス以外はすべてマニュアルで設定するのが原則。だからピントもしっかりマニュアルできめておこう。シャッタースピードは1/30にし、さらにテストフィルムの画像を確認しながら絞りも固定しよう。F4とかF5.6あたりでいい明るさになればベストだがそう神経質になる必要はないだろう。0dB以上にしなければ問題はないはず。
VX1000は音声のライン入力ができないので、撮影モードは「フォトスタンバイ」にしておく。カメラをスルーした画像をS端子でビデオデッキに入力する。音声は映写機からデッキへとラインでつなげばいい。2トラックも使っている作品だったら、映写機とデッキの間にミキサーを入れて1トラックと2トラックの音声を混合すること。
次に映写機の映写スピードの調整。そう、簡易テレシネの最大の弱点はここにある。通常の18コマなり24コマなりの映写では、ビデオ側の30フレームとは合わないことからフリッカー(チラつき)が出てしまうのだ。これを解消するために速度微調整のついている映写機で、18コマ/秒の作品は早く、24コマ/秒の作品は遅くして、テストフィルムのテレビ上の画像を見ながらチラつきがおさまるポイントを捜すこと。
さて、これで映写をスタートし、ビデオデッキの方も録画をスタートすればOK。VX1000にはカラーバー出力機能がついているので、ビデオの頭のところに入れておけばそれっぽくなる。ちなみにコマンドは「スタンバイ状態からRECとフォトを同時に押し、電源をON」である。
筆者はまだ使用したことがないのだが、2002年末に登場したDVカメラ、パナソニックAG-DVX100はシャッタースピードがじつに細かく設定できる。このため、映写機のスピードをじっさいよりも速くしたり遅くしたりする必要がなくなった。18コマ/秒の場合はシャッタースピード1/54秒のあたり、24コマ/秒の場合は1/72秒あたりで調整していくとフリッカーが消える。簡易テレシネの最大の弱点が克服された感がある。業務用という位置付けのカメラなので、気軽に借りるほど普及するものではないが、現在のところ最強と断定してもいいだろう。
●ブローアップ(フィルム→フィルム)
テレシネするとフィルム固有の質感はそこなわれてしまう。これがガマンできないという人は頑張ってデュープ(8ミリから8ミリへのコピー)か、ブローアップ(8ミリから16ミリないし35ミリへのコピー)をするしかないだろう。当然ながら金はかかる。
8ミリから8ミリへのコピーは、国内では無理だが海外のミニラボでやっている。ワタシの手元にあるのはカリフォルニア(LAの近辺らしい)のスーパー8サウンド社というラボの料金表で、1993年とちょっと古いが、8ミリから16ミリのネガフィルムへのブローアップが、単純計算すると1分あたり1万円ぐらいでできる。8ミリで18コマ/秒の作品を16ミリの24コマ/秒へのステップアップも可能だし、35ミリへのブローアップも同様に出来ると書かれている。しかし現在、同社のホームページではこの作業についての記述は見当たらない。8ミリの増感(push)と減感(pull)はできるとあるので、デュープは確実にできる。興味のある人は問い合わせてみるといい。西海岸往復の航空券は格安のものがあるので、現地での滞在費を含めても意外に安上がりになると思われる。
金銭のことだけを考えれば、いったんテレシネしたものを今度は16ミリに焼き付ける(これをキネコという)方が安上がりなのだが、フィルムの良さが失われ、ビデオの良さもまた出てこない。発色も異なってしまう(特に赤、薔薇の花の真紅色が出ない)ということを考えれば、ちょっとばかりの無理ならば、フィルムからフィルムへのダイレクト・ブローアップを選択すべきだと思う。