映写機
●8ミリ映写機の種類
1、サイレント
2、サウンド(1トラック専用)
3、サウンド(1&2トラック使用可能)
以上の3種類と考えてもらってかまわないだろう。
注意すべきは1トラック専用機と、2トラックも使える映写機の区別だろうか。中古カメラ店の人でさえもここらへんのわかっていない人が多いので困る。基本的には1トラックと2トラックの再生バランスつまみがついているかどうかで判断できる。
また、細かいことなので第2版までは省いていたのだが、1&2トラックの録音と再生が可能な映写機であっても、「録音」のところで解説している「ステレオ録音」が可能であるとは限らない。エルモGS1200やフジSD25は、ステレオ録音と再生ができるのだが、その他多くの映写機では不可能ということだ。
●入手方法
8ミリ映写機に新品はない。8ミリカメラと同様に、中古カメラ店やリサイクルショップを探すしかない。
その際に注意するのは、ちゃんと作動するかどうかを調べることだ。傷がついてもかまわないような現像済みの8ミリフィルムを1ロール持っていって、それをテストフィルムとして映写してみればいい。サウンド(音声再生機能のついている)映写機に対応するために、テストフィルムには音があらかじめ録音されていることが望ましい。
ボリュームをいじるとバリバリッとノイズが盛大に出るだろうが、これは気にしない方がいい。ボリュームは経年変化する部品なので、つまみをひねる時に出るノイズぐらいは見逃そう。
映写機のモーターが弱っているというケースもある。音声を再生してみればわかる。遅くなる場合もあれば、早くなる場合もある。映写速度調整がついていて、それで調整できる範囲ならいいが、速度調整機能がついてないような映写機の場合は修理しなくてはならないので注意が必要だろう。
テストフィルムがきちんと映写できて、音声も正常に再生ができた。だからと言って油断してはならない。なにしろ、8ミリカメラと同じく、8ミリ映写機はどれもこれもが10年以上前の製品だからだ。すでにメーカーには修理を保証する法律的な義務はない。
とりあえず動く。値段的にも納得できて買ったとする。家に持ち帰ったら、まず録音ができるかどうかをチェックしよう。まあ、この部分も店でチェックしておきたい部分ではあるが、そこまでするべきかどうかは判断しかねるところ。どうしてもチェックしたい人はマイク持参で映写機探しをすることだ。
もうひとつ注意すべきことがある。8ミリ映写機できわめて多いのが、ベルト切れという事故だ。店ではちゃんと動いているので、購入して家でいじくっているうちに、ぱったりと動かなくなってしまう。これはベルト(モーターの回転を駆動部に伝える部分)が切れてしまったというケースがほとんどだ。ほとんどの8ミリ映写機のベルトはゴムでできている。たいていの中古映写機は長い年月にわたって使用されていないので、ベルトのゴムが劣化しているケースが多い。店では動いても、家に持ち帰って動かしているうちに寿命がきてしまうというわけだ。さあどうしよう。
●ベルト切れの対処
ベルトとは、映写機のモーターの回転を伝えるために入っているゴムベルトのこと。ゴムだから経年変化により、やがては切れる運命にある。映写機のトラブルで一番多いのはベルト切れだ。
まずは裏蓋のネジをはずして、映写機をカパッと開いてみよう。本当にベルトが切れているかどうかを確認しなくてはならないからだ。映写機によってはベルトが2本ある場合もある。そのどちらが切れているかも確認すること。また、映写機によっては内蔵スピーカーの線がつながっていることもあるので、乱暴に開かないこと。
この修復には3つの方法が考えられる。
方法1 メーカー純正品で対応
ベルトは消耗部品だとメーカーもわかっているので、アナログレコードプレイヤーのベルトと同様に、保証期間は過ぎていても、メーカーに在庫があるかもしれない。国産映写機メーカーに電話したところ、次のような回答を得た。
エルモ…在庫がないものはFPシリーズのモーターベルトやGS800の巻き取りベルト。だいたい500円から750円ぐらい。例外はGS1200で1440円。東京支社03-3453-6471(港区三田3-7-16)エルモは本社が名古屋。札幌、仙台、大阪、広島、福岡に支店と営業所がある。
フジ…SHの7/8/9とSD20/25は共通のベルトなので在庫あり。他もそろえている。注意してほしいのはSH30で、アンプをはずさないとベルト交換ができない。値段は700円。東京フジサービスステーション03-3436-1315(港区海岸1-9-15竹芝ビル10階)他にも札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡にサービスステーションがある。
サンキョー…日研テクノにこの業務は委託されていて、サウンド映写機は大丈夫。サイレント映写機は機種によって不可能なものがある。値段は600円だが、宅配便で送るので、代引手数料が1000円以上かかる。東京営業所に来てもらいたい。日研テクノ東京営業所03-5410-0626(渋谷区千駄ヶ谷3-8-7)
チノン…在庫なし。
コパル…在庫なし。
方法2 ウレタンコードで自作する
そんな悠長なことをしていられないという人は、ベルトを自作してしまおう。コスト的にも、純正ベルトに比べて、自作ベルトなら 200円で済む。ワタシもおそるおそる2機種ほど試してみたが、今のところ何の問題も起きていない。
使用するのはウレタン製コードだ。東急ハンズでは工作素材売り場の「ゴムひも」のコーナーにある。オレンジ色で、直径4ミリのもの。メーカーはバンドー化学。品名はバンコード。地方在住の人はこのメーカーの卸会社(バンドー東販03-3639-0811)で個人向けにも切り売りして発送してくれるということなので、問い合わせてみるといい。
作り方は、
1、切れたベルトを映写機内部から出し、それと同じ長さにウレタンコードを切る。もとのベルトがボロボロになっていて長さが不明の時は、とりあえず長めに切って、映写機内に差し込んで少しテンションをかけて(引っ張りぎみにして)長さを決定する。
2、コードの切断面を、ろうそくの火やハンダごてで溶かし、溶けたらくっつける。
3、そのまま一晩、放置する。
4、はさみや爪切りでくっつけた部分のはみ出しているところを切ってきれいにする。
以上で完成だ。一晩放置するのがコツ。早く修理したい気持ちがあるので、コードがくっついて輪になったらすぐさま映写機に装着したくなる。それは人情だが、ウレタンの内部が完全に冷えて強固になるまでに一晩かかる。ここはじっと我慢すること。
さて翌日、映写機に自作ベルトを装着して作動するかどうかを確かめる。ベルトが長すぎるとすべって回転が伝わらないし、短すぎるとハメ込むことができない。こうなったら仕方ないのでもう一度やるしかないだろう。また一晩待つ。
方法3 Oリングを使用する
マルリングではなくオーリングという。
ゴムの丸い輪の専門的な呼び方なのだろう。
これはJIS規格によって多種多様な製品がつくられている。輪の直径で言えば5ミリ間隔で設定されているので、切れたベルトを持って行けば、それに合うようなOリングが見つかるだろう。残念ながら東急ハンズでは、小さいサイズのものしか置いていない。作っている会社あるいは工場に直接行くしかないようだ。
ひとつの値段は100円から200円ぐらい。
ついでのように書いておくが、アナログレコードプレーヤーにおけるダイレクトドライブ方式と同様に、8ミリ映写機でもベルトを使わない機種がある。ムエン通信あてにいただいたベル&ハウエル495を開いてみたら、ベルトがないので驚いたのだった。
●さてお値段は?
サイレント映写機はタダで人から譲ってもらおう。個人所有のサイレント映写機は、まだまだ大量に死蔵されているはずだ。リサイクルショップやフリーマーケットで買ったとしても5000円ぐらいに値切りたい(商売のこともわかるがそう思う)。
サイレント映写機で注意したいのが映写ランプだ。せっかくゆずってもらったはいいが、ランプがもう製造されていないものだとすると、そのランプが切れたら終わりということになる。
サウンド映写機は、1トラック専用機が2万円から3万円、1&2トラック機が4万円から6万円ぐらい。もちろんカメラと同様に、リサイクルショップではもっと買い叩けるだろう。店頭になくても、映写機のようにスペースをとるものは倉庫で眠っている可能性もあるので、本気で探す時は店の人に聞いてみるといい。
さて、カメラにフジカZC1000という空前絶後の機種が存在するように、映写機にも別格的な機種がある。エルモGS1200とフジSD25である。これらは中古完動品で10万円以上する。
エルモGS1200は映写ランプが 200Wと明るいので、上映会に適している。メカも比較的頑丈だ。ただ、この24V 200Wの適正映写ランプが、製造中止になってしまった。しかしこの場合に限っては16ミリ映写機に使われているランプ(型番はELCかEJL)で代用が可能。ELCの方が入手は簡単(つまり在庫が常にある)だというフィリップスの話だが、これは 250Wと50Wオーバーしている。しかしワタシの使用しているGS1200にELCを入れてしばらく使ってみたが、これといった問題は起きていない。たぶん大丈夫。
エルモGS1200には、受注生産品でクセノンランプの機種も存在した。これは超貴重品。クセノンランプは映画館の映写機で使われているもので、他の8ミリ映写機で使われているハロゲンランプよりもはるかに明るい。しかしながらクセノンランプの交換はもうできないかもしれない。
フジSD25は録音にすぐれている。走行スピードの安定性、コマ単位で録音のオンとオフを指定できる機能など、これまた「空前絶後」の映写機だと言ってもいいだろう。ひとつ前のフジSD20も、中古完動品だと10万円ぐらいの機種だ。ワタシはこれまでいろいろな映写機を使ってきたが、フジの映写機は総じて録音性能にすぐれていると感じる。
●映写ランプについて
現在はフィリップスおよび冨士電球工業から出ている。価格は3000円から5000円。両方から出ているランプの場合、冨士電球の方が安価。しかし、大手カメラ店などでは、フィリップス製品しか置いてないようだ。
首都圏在住の人ならば、秋葉原にある光東電気がオススメ。ヨドバシなどより2割ぐらい安く買えるし、冨士電球の製品も揃っている。お店の場所はJR秋葉原と営団地下鉄末広町の間ぐらい、どちらの駅からも近く、中央通りに面している。
「光東電気」東京都千代田区外神田4-5-1
電話 03-3255-3741
定休日は日曜と祭日。営業時間は、月から金が10:00~18:30、土が18:00まで。
近所のカメラ屋さんで注文する時は、型番を指定しないといけない。ヴォルトとワットだけでは混乱するおそれがある。映写機とそれにマッチしているランプの型番をリスト表示することにしよう。
型番 V/W 映写機
EFP 12/100 エルモK100SM
SC18
ST600/600D/180/800
GS800
フジカSD12
SH6/8/9/7M
フジックスシリーズ
MX50
M45
チノン6500/6600/7200/8000D
CP330/350
コパルCP70/77/301/501/505/515/525
サンキョーS600/650/700
ミノルタ6000/7700
リコー1200S/1200M
レイノックス3000
デュアラックス1000/2000H
東映パーフェクト8
ヤシカSPC-N/P810
ベルハウエル495/498
オイミッヒHQS
ボレックスSM80
オルチェデュオ
ノリスの全機種
EFR 15/150 エルモST1200/1200HD
フジカSD20/25
チノン8500/9000/9500
SS1200
サンキョーS850T
OMS880ST
EJM 21/150 エルモSPシリーズ
GPシリーズ
DNF 21/150 フジカSH10/30
MX70
MG90
キャノンT1
東映スーパーD2
ESC 24/200 エルモGS1200
(製造中止…ELCかEJLで代用可能)
EFM 8/50 フジカSH5
M25DX
チノン6000
コパルCP55/66
トリオスコープH
レイノックス2000/707TC
FP−GT 8/50 フジカM15/17/27/35
ミノルタオートデュアル
キャノンS400/ビジョン8
シネスターP8/400
さきほど述べたように8ミリ映写機ではエルモGS1200のみに対応するESCは製造中止になった。そんなふうに、対応する機種が少なければ少ないほど製造中止の可能性は高くなる。
映写ランプというのは寿命がある製品ながら、製造中止されてもデッドストックがある場合もある。とくにこだわりのある映写機の場合、検索するなり、インターネット情報のところの「8ミリメタディレクトリー」から始めて、リンクをたどっていくと、見つかることがある。
●リールのサイズ問題
映写機によって装着できるリールの限界というものがある。1時間を超えるような作品をつくろうとしている人には注意が必要だ。そんな長い作品はつくらないという人は以下の部分は読み飛ばしてもらってかまわない。
サイレント映写機は 400フィートリールが限界のものが多い。 400フィートという表記はフィルムの厚いスーパー8を基準にしているので、シングル8の場合は37分ぐらいになるだろう。
サウンド映写機の普及型は 600フィートリールが標準だ。これはシングル8をぎりぎりまで巻いてみたところ、56分まで巻けた。後の項目でも触れるが、現在日本で売られているリールは 600フィートまでだ。それ以上の 800フィートや1200フィートのリールは輸入品を買うか、自作するしかない。リールの自作については「周辺機材」のリールの項で書く。
前述のエルモGS1200、フジSD25およびSD20は1200フィートまでかけることができる。またエルモGS800やサンキョーOMS-850Tなどは 800フィートまでに対応している。
このような映写機がない、かつ、1時間以上の作品になってしまった時、上映の時にどうすればいいか。映写機を2台用意して切り換える。あるいは開き直って、リールチェンジの時間をいただくしかないだろう。
●映写機の掃除のしかた
「上映会(当日)」の項目を参照。
●音声選択の「光学」もしくは「OPT」とは何?
無視してかまわない。8ミリ映画をつくる上では、音声は「磁気」もしくは「MGN」で固定だ。
光学録音は個人レベルでは不可能と断定してかまわないだろう。これはビデオがなかった時代に8ミリフィルムによる映像ソフトが売られていて、そういうものは大量生産しなくてはいけないので、光学録音されていたということ。映写機としてもそのフォーマットに対応しなくてはいけないので、このような音声再生の設定があるわけ。したがって、8ミリ映像ソフトを入手したぞ、という場合のみ、この切り替えつまみを光学(OPT)の方にして映写すること。
●音声再生の方式で「パルス録音」というのがあると聞いたけど何?
これはオープンリールテープやカセットテープの1トラックに、同期信号を入れて、残りのトラックに音声を入れる方式のこと。確かにフィルムに塗布された磁気録音帯から再生するより音質ははるかにいいが、現在はハードディスクレコーダーというものがあるので、これを使ってシンクロさせながら再生する方がよりいい音が得られるだろう。このことは「録音」の項目を参照されたい。
●東急ハンズで売っているOリングがベルトになる映写機
東急ハンズで売ってるOリングと、ムエン通信所有の映写機とのマッチングを調べてみた。マッチしたものは以下の機種。
フジSH9/SD20…「Oリング1A P-50」で代用が可能。1つ120円。素材売り場のゴムベルトのならびにある。ベルトの装着はちょっと面倒なので慎重に。
チノン7200…「Oリング1A-P60」で代用が可能。1つ120円。装着は簡単。
サンキョーOMS-650…「Oリング1A P-50」で回ったが、内径55ミリぐらいが適当なサイズだろう。装着はじつに簡単。
●フィルムが流れた時にすること
基本的には映写機を止めるべきだが、その前に試みてみたいのが、フィルムのたるみの修正だ。これも各社各機種マチマチな方法なので、所有のサウンド映写機について、確認してみた。
フジSD20/SH9…フィルム挿入時に押し込む部分を押す。
チノン9500/7200…フィルム挿入口上部にある、四角い突起物を押す。
エルモGS1200/ST180…ピントつまみ下の「ループ」レバーを動かす。
サンキョーOMS-850T/OMS-650…フィルム挿入時に押す、黄色い部分を押す、
コパル515…フィルム挿入時に押す、オレンジ色の部分を押す。
ベル&ハウエル495…フィルム挿入時に、挿入口下のレバーを下方向に押すが、そこを再度押す。