8ミリフィルム

●8ミリフィルムの種類

 8ミリフィルムは大別すると3つの種類ある。ダブル8(レギュラー8とも言う)、スーパー8、シングル8の3つ。

ダブル(レギュラー)8
 これはスーパー8、シングル8よりも古い形式の8ミリフィルムで、これから8ミリ映画をつくろうという人は考慮する必要はない。ただ注意しなければならないのは、間違ってダブル8用のカメラを買ってしまうことがないように。カメラのフィルムを装填する蓋を開けると、中に小さなリールが入っているのがダブル8用カメラだ。フィルムの入手は可能だが、あとで後悔すること必至。映写機については、ダブル8専用というものは中古市場でもたまに見かけるが、もうほとんど飾り物としての骨董品のレベル。

スーパー8
 コダック社が開発・製造している8ミリの形式。種類はエクタクローム64T(低感度カラー)、プラスX(低感度白黒)、トライX(高感度白黒)、ネガフィルムの200Tと500Tがある。大手カメラ量販店でも全種類を棚に置いてはいない。ヨドバシ、ビックのネット通販のラインナップにもない。しかしコダックが扱っているので、近所のカメラ店で注文すれば1週間以内に届くだろう。
 エクタクローム64Tは国内のミニラボで現像するため、長くても2週間ほどで戻ってくる。しかし現像料金は税込み2650円。ならばアメリカのラボなら9ドルなので、往復の送料と、その過程のどこかでロスとしてしまう危険性を考慮しても試してみる価値はあるだろう。海外送付については別項で。
 白黒フィルム2種については現在のところ「これだ!」とオススメする現像ルートがない。いくつのもの現像ルートはあるのだけど、それぞれ異なる弱点があるのだ。とりあえずは従来からのニューヨークのミニラボ「パックラボ」を後述項目で紹介しておくが、ここらへんはよりマシなルートの提案を待ちたいところ。
 ネガフィルム2種については、ネガテレシネしての利用を前提にしてつくられている。ネガフィルムなので自家現像でもいいし、広島の藤田商事という監視カメラシステムの会社で1ロール2000円で現像をしてくれる。

シングル8
 フジフィルムが製造、現像をおこなっているが、初心者篇に書いたように、フィルムは2007年3月出荷分をもって生産を終了する(現像は2008年9月まで)。
 種類はR25とRT200の2種類のみ。どちらもカラーで白黒フィルムはない。R25は低感度で太陽光線に色温度が合っている。RT200は高感度で白熱電球(厳密に言うと 300Wから 500Wあたりの写真用電球)に色温度が合っている。色温度というのはビデオにおけるホワイトバランスのようなものと考えてもらえばいい。ビデオと違って色温度の補正はフィルターでおこなう。
 東京都内の大手カメラ店では店頭に置かれているが、なくても注文すれば全国どこでも入手は可能だろう。ヨドバシカメラやビックカメラのネット通販を利用すれば1万円以上の購入で送料が無料になる。地方在住の人は便利だろう。定価は税込みでR25が1638円、RT200が2016円だが、ヨドバシおよびビックカメラではR25が税込み1312円でRT200が1617円。約2割引きになってポイントもつく。

●シングル8の通常現像

 どこのDPEから出しても現像はできるが、戻ってくるまでの期間と値段がいろいろだ。
 現像値段の定価は2006年5月に値上げになって、ビックカメラ価格ではサイレント仕上げで税込み1261円。アフレコ仕上げで1956円。
 現像が上がってくるまでの期間は、都内でも「中10日ぐらい」、地方だと「現像が上がってきたら電話します」と言われる。現像はフジカラー調布現像所で、週一回、水曜日におこなわれているので、離れていればいるほど時間がかかる。逆に都内では月曜日に出せば翌週のはじめにはできている。
 フィルムカセットの横の欄に○をつける方式で、マグネコーティング(磁気録音帯を塗布すること)をするかどうかを選択することになる。しないものは「サイレント仕上げ」、するものは「アフレコ仕上げ」と呼ばれる。○をつけないと「サイレント仕上げ」に分類される。
 サイレント仕上げにしたものに、あとでマグネコーティングするサービスはしていないので、ビデオ作品の素材映像として使うような場合はともかく、8ミリフィルムのまま上映する作品をつくろうとしている人は「アフレコ仕上げ」にしておいたほうがいいだろう。

●シングル8の自家現像

 最近は自家現像という手段をとる作家もチラホラ見かけるようになってきた。末岡一郎氏に別項で自家現像の方法を書いてもらったので、そちらを参照されたい。
 自家現像の長所は「昼に撮ったものをその夜に見れる」というスピードと、どんな発色になるかわからない意外性の効果狙いだろう。
 欠点は、自家現像だからといって安上がりになるわけではないこと。それから当然ながら、失敗の可能性がつきまとうことだ。また、マグネコーティングができないので、後から音声を入れることができないということ。こうした点には注意されたい。

●シングル8の現像所持ち込み現像

 調布のフジカラーサービスに直接、撮影済みフィルムを持っていけば、安くはならないが、現像仕上がりまでの時間が短縮される。現在、8ミリの現像は週一回、水曜日。アフレコ仕上げのマグネ塗布は金曜日に作業をしている。火曜日までに持ち込めば、サイレント仕上げもアフレコ仕上げも同じく金曜日の午後3時に仕上がる。
 住所は東京都調布市柴崎1-67-1。電話は0424-81-8049。
 京王線柴崎駅で降り、改札を出たら踏切を渡る。そのまま道なりに進んで甲州街道を渡ってなおも直進。電柱に「フジカラー↑」という表示がある。小さな商店街の理髪店と美容院の間を右折する。ここは見落としやすいので注意。そのまま進めばフジカラーサービスの裏口に出る。徒歩で7、8分ぐらい。写真ギャラリーへの階段を上がって建物内に入ったところに現像受付けがある。営業時間は午前9時から午後5時まで。土日祝は休みなのだが、おつりがないようにすれば、引き渡ししてくれる。

●スーパー8のいいところ悪いところ

 まずは欠点から。
1、スーパー8フィルムはサイレントだけ。つまり磁気録音帯を塗り付けることで、8ミリのまま、音と映像がぴったり一致した映画がつくれないということだ。しかし近頃の自主製作映画に多くみられるように、仕上げはビデオないしDVDであって、映像のもと素材として8ミリを使用するならば関係ないわけだ。
2、前述したように、シングル8よりも現像に金がかかってしまうということ。
3、フィルムがシングル8よりも弱い(傷つきやすい)。
4、これまた前述のように、もっとも使用されるであろうエクタクローム64Tの感度64に対応しているカメラがほどんどないということ(しかしカメラと使用者の感覚によっては問題とはならない)。
 長所も公平に4つ述べよう。
1、コダックがホームページで「スーパ−8はずっとつくり続けます」と宣言しているように、これからも長いこと利用できそうだという安心感がある。
2、使用できるカメラがじつに豊富であること。スーパー8の規格は、かつてはサクラ(現在のコニカ)やアグフアなども参加していたため、海外製の8ミリカメラはすべてスーパー8である。シングル8の方がフジを中心にした50数機種ぐらいしかカメラが存在しないのとは大違いで、映画作品をつくるのでなく、趣味としていろいろなカメラを使って楽しむ向きにはスーパー8で決まりだろう。
3、白黒フィルムおよびネガフィルムがあること。ネガフィルムは素人向けではない製品だが、白黒フィルムはその質感を求める作家にとっては「スーパー8で決まり」と言わせるだけの魅力がある。
4、どのみちシングル8がなくなってしまえば、長所短所の比較対象がなくなるわけだけれど、スーパー8フィルムをシングル8のカートリッジに詰め替えて、シングル8カメラで撮影することが可能であること。この方法によって、多重撮影がラクにできるようになる。

●シングル8とスーパー8はつなげても大丈夫?
 いちおう映写機にはかかる。だがシングル8とスーパー8はフィルムの厚さが異なるので、1本の作品のなかに混在させるとピントの位置がズレることになる。作者がかならず上映を自分でやって、その部分でピント調整を素早くできるというならOK。
 ワタシの経験ではもうひとつ、音声のレベルも違うことに気づいた。磁気録音素材の質が異なるのだろう。これについても作者がついていて調節すればいい。

●フィルムの保管は冷蔵庫の中?
 未開封の8ミリフィルムは冷蔵庫に入れる必要はない。直射日光が当たるような場所に置かなければいい。
 では、途中まで撮って取り出したフィルムは? これは冷蔵庫に入れた方がいいのだが、フィルム専用ではない、野菜などの食品と同居しているような冷蔵庫ではまるで無意味だとプロの写真家は言う。結局は風通しのいい、暗い場所に置くのがいいだろう。乾燥材と一緒に袋に入れ、袋の切り口はていねいに折り曲げておくこと。

●期限切れフィルムは使えない?
 期限が切れてもしばらくは大丈夫だが、発色はどんどん劣化していく。期限切れてから1年以内には使いたい。シングル8の場合、期限切れからさらに年月を経るにつれ、緑色に傾いていき、黒がしまらなくなってくる。回想シーンならいいかもしれない。

●8ミリにネガフィルムはないの?
 コダックから200Tと500Tのふたつの製品が発売されている。
 しかしこれはテレシネ(ビデオ化)して利用することが前提とされているので、16ミリや35ミリフィルムのように、ネガを編集してポジフィルムに焼きつけるというサービスはおこなわれてはいない。
 200Tはタングステン光でISO200、500Tは同じくISO500。標準価格はともに2079円。コダック正規ルートでの現像は3675円と高い。しかしさらに高いと思うのはテレシネで、ヨコシネDIAがネガテレシネのサービスをおこなっているが、1ロール数万円もするとのこと。
 なお広島にある監視カメラなどの会社、奥田商事にて1ロール税込み2100円で現像が可能。撮影済みフィルムを送付すれば、一週間ぐらいで現像済みフィルムが着払い宅配便で戻ってくる。その中に請求書が入っていて、こちらは後払いで銀行口座に払い込めばいい。
http://www.okudacamera.co.jp/okudasurveillance/index2.html