初心者のための山用品の選び方

【登山靴 -- 軽登山靴〜プラスチックブーツまで】


運動靴はあくまで平地で使用するものなので、傾斜や石ころの多い登山道ではくるぶしを傷めてしまう。やはり登山用に設計された靴を手に入れたい。末永く使うつもりの投資ですね。必ずしも、昔ながらの登山靴である必要はない。荷物が少なく、無雪期で、登山道が整備された山域であればトレッキングブーツでも充分対応できるものがある。最近は軽登山靴とトレッキングブーツ、トレイルブーツの線引きが難しいくらい種類が豊富なので、自分が期待する山行内容に合わせやすくなっている。
 登山靴には、ナイロンアッパー(布+革)とオールレザー(革製)とがあり、革を使うに従い重くなる。1 足で2kg以下のものを軽登山靴と総称するようだ。
 ここで主要素材の革について説明する。牛の革は厚いので外側のトップグレインとスプリットグレインの二枚にそがれる。トップグレインのつやのある方を表に出すのが「表革」、裏返して使用するのが「裏出し革」と呼ぶ。登山靴の主流はトップグレイン使用の裏出革で、裏出しにオイルやワックスを縫った方が耐水 性がいいとされる。たまに裏出し革のまま履いている人を見かけるが、あれでは意味がない。
 スプリットグレインは一見、裏出革に似ているが表面を削がれているので耐水性、耐久性に劣る。価格も安くナイロンアッパーの補強用やハイキングブーツ、運動靴に使用されている。柔らかく軽いが型くずれしやすいので重い荷物を背負うには向かない。
 革製の登山靴なら一枚革のものが縫い目が少ないので耐水性、耐久性に富む。ただし一枚革は原価自体が高い。なお、アッパーと靴底については、靴底縁にステッチのある接合法が高級で、激しい使用にも耐える。

軽登山靴(ナイロン)

 ナイロンアッパーの軽登山靴は、軽量で歩きやすく、履き心地もソフトで価格も手頃。日本の3000m級では小屋泊まりなら無雪期はこれで充分とさえ思え、昔からの重い登山靴に戻りたくなくなるくらい。
 しかし、重大な欠点がある事を報告しておかなければならない。雨に弱いことと耐久性に劣ることである。近年はゴアテックスブーティ内蔵によって、浸水性と保温性はかなり改善され、その分価格も革靴並みに跳ね上がった。しかし、ゴアテックスとはいえ使用しているうちにナイロンと補強用の革との縫い目から水が浸透してくる。縫い目にシームシーラー(目止め剤)を塗っても効果は一時的で、歩いているうちに剥がれてしまう。よく手入れされた革製登山靴に比べると耐水性が圧倒的に劣ってくるのである。ナイロンと革の縫い目が切れやすく、そこから小石が入る事も。
 また、一般的にナイロンアッパーの製品は靴底がセメント圧着式が多い。アッパーと靴底を縫い付けていないものは、接着剤が古くなると破れる時は一気に靴底が抜ける。かつて、下山途中で靴底のビブラムが剥がれ、テーピングしてなんとか下山口までたどり着いた事がある。靴底のビブラムも比較的柔らかいタイプ が使用されているのでかなり消耗が速い。使用頻度にも因るが寿命は5年が限界か。長期の幕営山行には向かない。

革製登山靴

 革製登山靴は手入れに手間はかかるが耐久性や保温性に富む。靴底も消耗しても張り替え可能なものがある。ナイロンアッパーに比べ足になじみにくいが、そんな時は思い切ってぐちゃぐちゃに濡れた状態で長時間歩けば、足の形に革のほうが馴染んでくる。濡らしてダメになるような革なら諦めるしかない。
 靴底が厚いものは重荷で着地した際の衝撃が軽減され、足への疲労度が底の薄い軽登山靴とは絶対的に異なる。靴底が固く、曲がらないものは、縦走用というよりもむしろ岩稜のクライミング向き。
 革製登山靴は手入れによっては、撥水性、耐久性、保温性をそこなわずにかなり長もちさせることが可能である。アッパーや靴底も固いのでアイゼンやワカンも対応できる。
10年、20年モノとして使える。
 軽登山靴では、比較的柔らかな革を使用したゴアテックス内蔵のものがでており、軽く蒸れなく快適である。厳冬期以外なら多少の雪でも縦走用としてかなり使い勝手が良い。重い革製登山靴よりともすれば価格が張る。予算や山行スタイルと相談して熟考するしかない。

靴のサイズの合わせ方とソックス

 ウールソックスを履いて、紐はしめずに軽くつま先立ちしてみる。踵と靴の隙間に人さし指がやっと入るサイズがよい。革靴は縦方向には伸びないが、横幅は履いているうちに伸びてくるし、機械で広げる事も可能である。靴のサイズをきめる時はソックスのはき方を計算した方がよい。踵の形も人によって千差万別なので、踵にマメができやすい人は薄手、中薄手ソックス二枚重ねが良い場合もある。
 登山用ソックスはパイル地オーロン製品(化繊)が現在は主流。乾きが速く肌触りが良いが、磨耗しやすく簡単に穴が開く。高くても丈夫なウール製品を選ぶのなら、目の細かいものを。編み目の粗い物をじかに履くと足が縄文土器になる●〜*
 ソックスは個人的にロングを勧める。岩場で弁慶の泣きどころをぶつけた時の青タン防止になる。夜寒い時には腕にかぶせて寝る。マフラー代わりになる。余分な衣類をつめれば枕にもなる。もちろん予備のソックスでやるんですよ。足の臭い人にはつらいもの。穴が開いても踝から先をちょん切って、工夫次第で再利用も可能。

*シューズ・一口メモ*

お気に入りの一足をさらに完璧にするためにすこし小道具を紹介しましょう

靴の中敷き

中敷きは変えてみると履き心地は確実に変わります。そっくり取り替える時もあれば、かかとにだけ増やしたり。
靴は必ずなじむに連れて多少大きくなります。どんなに買うときに慎重に選んでも これは仕方のないことですし避けられません。ソックスの調節だけでは難しくなってきます。 中敷きはそんな時でも有効です。そして優秀な中敷きはソックスのクッション性とは 比べものになりません。中敷きだけに限って言えば登山靴メーカーより 専門メーカーの方が優れた物を出しています。 また登山用品店よりもスポーツ用品専門店のほうが品揃えも豊富です。 エアータイプ、ジェルタイプ、形状記憶変形タイプなど様々な物が発売されてます。 特に重登山靴では靴自体のクッション性よりも堅牢性が 重要視されてるので交換するとその効果に驚か されます。 軽登山靴ハードを蒸れ予防に薄い靴下で履くときも有効です。 皆さんも是非試してみてください。

ソックス

ソックスのクッション性も大切ですが、ここでは噂の「五本指ソックス」について。
騙されたと思って買ってみたこのソックスが、今ではなくてはならない 物の一つになっています。確かに疲れにくくなりました。 足の指が動く感じがよくわかるのです。 さらにシルク製の物はどんなに汗をかいてもサラサラです。 夏山も足が蒸れずに快適そのものでした。僕はこの「五本指ソックス」を アンダーソックスとして使用し、さらに中厚のクッション性を重視したソックスを もう一枚履きます。
ただし...欠点が一つ。靴ずれの起こしやすい靴で履くと シルクと肌がすれて普通のソックスよりも靴ずれがひどくなることが最近判明(^^;)


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