Vol.160   再会

「乾杯」
「本当に久しぶりだな」
「酒を飲むのも久しぶりだ」
「まったく、こんな世の中になるなんて思いもしなかった」
 仲良し4人組で久しぶりの再会だった。長引くコロナ禍は3年目に突入したが、まだ収束しない。それでも今は蔓延防止とやらも解除されて、飲み屋で酒を飲むことはできる。
 俺たちは会社に入って、職場で知り合った、違う会社なのだが、同じ職場で顔を合わせ、何となく気が合って、飲みに行ったり、遊びに行ったり、旅行に行ったりもした。
 月日は経ち、職場が変わっても俺たちの付き合いは続いた。10年経ち、30代になっても変わらなかった。
 しかし、それから徐々に会う機会は減っていった。結婚でもして家庭が出来れば、自ずと合う機会は減るのだろう。なぜか4人とも独身のままだったので、たまには会っていたが、年とともに疎遠になっていくものだ。
 20年が経ち、40歳を過ぎると年に1回会うか合わないかという感じだった。命に関わるとうな物ではなかったが、順番に病気で入院もした。そんな時は見舞いに行った。
「俺たち、入院した時しか会わないな」
 そんなことを言うような状態だった。
 そんなところでのコロナ禍で、全く会えなくなってしまった。それでも2年の月日など簡単に埋まる。あの頃と同じように、他愛もない話しで笑い、飲み、あっという間に時間が過ぎた。久しぶりに楽しいひとときだった。
 今日は金曜日、明日は休みだが、朝まで飲み明かす体力はもうない。適当な時間にお開きとなった。
「じゃあ、また飲もう」
 駅で帰る方向が同じ2人づつに分かれた。
「久しぶりに楽しかった」
「ああ」
「しかし、あいつ変わらないな」
「相変わらずのめんどくさがり屋だよな」
 神奈川に住む1人は、ものすごいめんどくさがりで、東京に出てくるのを嫌う。それが集まる機会が減った一因でもあった。何をやるにも面倒なことは人に押し付けるので、誰かがやってやらないといけない。でもそいつのキャラが憎めずに付き合っているのだ。
「今日はよく出てきたよな」
「てか」
「おい」
 二人で絶句した。
「あいつ確か」
「ああ、そうだよな」
 そいつは、ちょうどコロナ禍が始まった頃だった。急に脳梗塞で倒れ、亡くなったのだった。お葬式にも行った
「こんな世の中を経験しなくてよかったかもしれないな」
 1周忌の日には、3人のLINEでそんなやり取りをした。
 今日だって、そいつの3回忌と言うことで集まろうということになったのだった。
 だけどそいつがフラリと現れた。その瞬間、そんなことは忘れてしまった。今までまったく気づかなかった。
 携帯が振動した。3人のLINEにメッセージだ。駅で別れたもう1人からだった。
「あいつって確かに・・・」
「そうだよ」
「今一緒なのか?」
「いや、横浜駅で分かれて、そうしたら思い出した」
「俺たちも今、思い出した」
 思いもしなかったことが起こる世の中だ。こんなことも起こるのかもしれない。

                       了


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