Vol.159   あぶのーまる・らぶ

「実は俺・・・」
 言えないよなあ。「実は俺、狼男なんだ」なんて
 別に人を襲ったりはしない。人よりちょっと、いや、だいぶ力が強いだけのことだ。生命力もだいぶ強い。それは月の満ち欠けに依存する。世間で言われている狼男の特性は概ね正しい。
 新月の時は人と変わらない。満月になると無敵状態である。ナイフで刺されても、いやナイフが通らないくらい皮膚が強くなる。例え銃でう撃たれても、傷はすぐに治ってしまうだろう。撃たれたことはないけど。
 僕の父親が狼男で、母親は普通の人間だ。だから僕はハーフの狼男というか、父親もやはりハーフで、祖父もハーフで、血はどんどん薄まっている。もしかしたらご先祖様は満月には狼に返信していたかもしれないが、僕はそんなことはない。ただ毛深くなるだけだ、かなりの剛毛が体中に生える。人前に出れないほどだ、
 両親は田舎に住んでいて、小さい時から自分たちは普通の人とは違うということを教えられてきた。だからスポーツをして、満月の時なら、あっさり世界記録を更新してしまうだろう。だから運動はしない。目立たないように十分にきをつけて生きてきた。
 でも、やはり高校を卒業すると、都会に出たくなった、満月のあたり数日は人前に出れないのは不便だったが、なんとか暮らしている。無事に大学を卒業して、仕事も制約があるけど、なんとか暮らしてきた。
 恋もした。何人かの女の子と付き合ったが、やはり満月の時に会えないというのがネックになって長続きしなかった。
 でも、今度の子は、満月の時に会えないことを疑ったりせずに、受け入れてくれている。ちょっと変わったところはあるけど、まさか狼女であるわけもなし。ヨーロッパの国のハーフだから日本人と少し感覚が違うのかもしれない。そしてハーフ特有の超美人だ。僕は結婚したいほど本気なのだ。だから僕の秘密を打ち明けなければと思っている。

「実は私・・・」
 言えるわけないじゃない。「実は私、吸血鬼なんだ」なんて
 別に人の血を吸ったりはしない。子供の頃はトマトジュース、お殿になった今は赤ワインが大好きだけど。
 吸血鬼といえばトランシルバニア。父はトランシルバニア生まれの由緒ある吸血鬼である。母は日本人で、海外旅行先で父と出会い結婚した。
 私はトランシルバニアの古城で生まれ育った。父は資産家で特に何もせずとも裕福な暮らしだった。やはり赤ワインを好んで飲んでいたが、たまに動物の血を飲まないといられないようだった。私と違って純けつの吸血鬼だからだろう。でも人に噛みついたりはしない。
 西洋のお城で優雅な暮らし。でも刺激が足りなくて飽き飽きしてしまう。日本の大学に入り、家を出ることにした、
 私はトランシルバニアと日本の、吸血鬼と人間のハーフというわけだ。視力、聴力は以異常に良い。勘も鋭い。身体能力も高い。吸血鬼の血を受け継いでいるからだ、何をやっても超一流になれる自信はあるが、目立たないようにきをつけている。
 でも日本人と外国人との方のハーフは、かなり目立ってしまうようだ。街を歩けばモデルにスカウトされる。男もどんどん言い寄ってくルけれど、なんだか誰も物足りないと思ってしまう。能力が違いすぎるのだ。
 でも彼は何か違った。すごい能力を隠しているような神秘的なところがあって、何か私と似ているところも感じる。
 本当に好きになったのかも知れない。となると僕の秘密を打ち明けなければと思っている。

「ちょっと話しがあるんだけど」
「あら、私もなの」
「え、何?:
「ううん、何?」
「あのさ・・・」
「うん?」
「あのね・・・」
「うん?」
「実は俺・・・」
「実は私・・・」

                       了


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