Vol.151   ボーリング×ボーリング

 何だか息苦しい。そして体を動かそうとしても身動きが取れない。うわっ金縛りってやつか。
 明日の試合に備えて早くベットに入ったものの、相手チームのバッターを思い浮かべ、どういう球を投げるかなどと考えたりしてなかなか寝付けなかった。それでもいつの間にか眠っていたはずだったが。
 辺りは明るい。そしてどうやら僕は立っているようだ。直立不動の姿勢で全く身動きが取れなかった。なったことはなかったが、金縛りとはちょっと違う気ガスる。
 前の方からボールが、いや球だ。黒い球が転がって来た。球は僕の足にぶつかり、僕は倒れた。誰かにぶつかり、その人も倒れた。周りを見ると、何人か人が倒れていた。
 あっ、あれはサードのあいつ、キャッチャーもファーストも、センターのあいつもいる。何かの力で僕らは一度、その場から退かされると、何かに引っ張られてまた立たされた。横にショートの奴が立っていた。前にいるのはレフトの奴だ。そしてまた黒いたまが転がって来た。
 そうか。これはボーリングだ。さっきは僕が一番ピンだったのだ。今度は2列目にいるのだ。また倒れて、退かされて、立たされた。それが何度か繰り返された。他のピンはチームメイトだった。1人知らない人が混じっていた。野球は9人、ボーリングのピンは10本だから。
 全部のピンが倒れるとストライクという。ピッチャーである僕にとっては縁起のいい言葉だ。そんなことを思ったりしているうちに目が覚めた。何とも不思議な夢を見たものだ。

 そうだ僕はボーリングのピンになっているのだ。そして他のピンはサッカー部のチームメイトだった。球が転がって来て、倒されて、立たされてを何回か繰り返して目が覚めた。おかしな夢を見た。そういえばゴールキーパーのあいつがいなかったな。サッカーは11人、ボーリングのピンは10本だから。
 おっと、いけない。もうこんな時間だ。試合に行かなければ。
 ゲームセット。審判の声。僕らは笑顔でハイタッチを交わした。僕の調子も良く、見事に完封。みんなも良く打った。快勝だった。何かいつもよりチームワークも良かったような気がする。
「そう言えば、昨日変な夢を見たよ」
「えっ、お前もか」
 皆が同じボーリングのピンになる夢を見ていた。

 試合終了のホイッスルが鳴った。残念ながら敗れてしまった。かなり攻めていたのだが、点が取れず。逆にうちのキーパーの凡ミスで1点を取られてしまった。何だかちょっと試合に集中できていない様子だった。まあ彼1人を責めても仕方ないことなのだけれど。
「そう言えば、昨日変な夢を見たよ」
「えっ、俺も見たよ」
 皆が同じボーリングのピンになる夢を見ていた。
 キーパーも同じ夢を見ていたが、他のピンはチームメイトではなく、知らない人ばかり9人だった。
 そして何故か試合中にこんなことを考えてボーッとしていた。
「サッカー部辞めて、野球部に入ろうかな」

                                            了


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