Vol.135   空を飛びたい

 一つだけ何でも望みを叶えてあげる。突然、そんなことを言われたら、皆さんはどうしますか?
 アラジンと魔法のランプを読んで、自分だったらどう答えるか、考えたことがある人もいるのではないでしょうか。大金持ちになりたい。素敵な彼女が欲しい。総理大臣になりたい。自分の夢をあれこれ考えたのではないでしょうか。そんなことはあり得ないとしても。
 私も考えていました。まさか本当に望みを叶えてくれるなんてことが起るとは思いもしませんでしたが・・・。
 それはまさに魔法のランプでした。引っ越しのため、押し入れの中のものを整理していると、まさにあの魔法のランプが出て来たのです。こんなものを何時、何処で手に入れたのか、まったく記憶にありませんでしたが、それは魔法のランプとしか思えない物でした。
 ほこりをかぶり、古びた様子も、それっぽかったのです。試しに擦ってみるのは当然の成り行きでした。
 すると、ランプの口から白い煙が出て、何と、ランプの妖精が出て来たのです。それは・・・彼女は、アラビア人の風貌、格好の美女で、まさにランプの妖精としか思えない人でした。
「ご主人様、願い事は何ですか?」そして、そう言ったのです。
 あまりの驚きに声も出ませんでしたが、私はアラジンと魔法のランプを読んだとき、自分ならこう答えるということを決めていました。
「空を飛びたい」だから、何とかそう答えることが出来ました。
 鳥のように空を飛んでみたい。それは僕が常々思っていることでした。富や名誉を得るよりも、自由に空を飛んでみたい。そう思っていたのです。
 ランプの妖精はニッコリと微笑みました。そして僕は空を飛んでいるのです。突然の出来事にも、自分の夢を叶えることができました。常に、空を飛びたいと思ってい良かったと思いました。
 しかし、今では後悔しています。鳥のように自由に空を飛びたかったのですが、言葉が足りなかったのかもしれません。私の思いとは違う形で、私は空を飛んでいるのです。
 ランプの妖精が微笑むと、私の体がみるみる膨らんでいきました。そしてフワフワと宙に浮いたのです。そのまま私は空を昇って行きました。今もゆっくりと上へ上へと昇っていきます。
 このまま昇って行くと、どうなんってしまうのでしょう?空気のない宇宙に出てしまうのではないでしょうか?そうしたら私は生きていられるのでしょうか?私は地上に戻ることができるのでしょうか?
 皆さん、一つだけ何でも望みを叶えてあげると言われたら、何と答えますか?本当によく考えておいた方がいいですよ。

                                            了


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