Vol.104   初夢

 私くらいの年代の女性は多かれ少なかれ皆そうなのだろうが、占いが大好きだ。よく友達と占いを聞きに行く。話題の占い師がいると聞けば、一人でも飛んで行く。
 雑誌の占いにも必ず目を通す。ラッキーナンバーにこだわって、ラッキーカラーを身に付ける。家の中は風水グッズでいっぱいだ。
 これほど占いにはまったのは2年前に彼と別れてからだ。大学時代からの付き合いで、8年間、そろそろ結婚も考えていた。それが突然、別れを告げられた。
 それほど熱烈な恋愛をしていたわけではない。告白されて、特別嫌いなわけではないから付き合っただけだ。そんなにしょっちゅう会っていたわけでもないし、お互いに社会人になってからは忙しさもあり、恋人同士としてはより淡白な関係になっていた。
 それでも8年も付き合っていたわけだから、他に好きな人が出来たと言われて、突然別れを告げられて、途方に暮れてしまった。あまり取り乱しはしなかった。納得は出来ないものの淡々と事実を受け止めて別れた。
 以来、彼氏は出来ない。仕事はそれなりに責任のある立場になり、忙しい。そこそこのやり甲斐はある。来年には30歳になる。典型的な負け組に突き進んでいるのではないかという気がする。
 クリスマスも寂しく過ごし、あと1週間で新しい年を迎える。何としても来年は良い年にしたい。
 そこで、占いである。最近、占ってもらった何人かの人が揃って、初夢のことを言っていた。いい夢を見れば、良い1年を過ごせるそうなのだ。
 いい夢とはどんな夢か、占い師の言葉を総合すると、赤いドレスを着た私がお花畑で、四葉のクローバーを見つける。すると雨が振ってきて、熊が出て来るというものだ。
 何とも変な状況だが、夢なのだからそんなものなのだろう。初夢は何としてもこの夢を見なければならない。
 私は必死で思い通りの夢を見る方法を調べ、そのすべてを実践した。新年を迎え、ベットに入り、夢の内容を何度も頭に思い浮かべながら眠った。
 そして・・・希望通りの夢を見ることが出来た。これで今年は良い年になる。私は大いに喜んだ。
 でも、はっきりと目が覚めて、頭の中がすっきりしてくると、何でこんな変な夢を見て喜んでいるのか分からなくなった。
 そうだ・・・夢だったのだ。この夢を見ればいいことがあるという占いが出たことから夢だったのだ。
 こんな初夢はいい夢なのか、悪い夢なのか、早速、占い師に聞きに行かなければ。

                             了


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