Vol.80   いつか生まれ変わったら

「お嬢様、いけません」
「でも、私はお前のことが・・・」
「あっしはただの使用人。お嬢様とは身分が違います」
「そんなこと関係ないじゃない」
「そういうわけにはいかないんです」
「でも、お前も私のことを・・・」
「もちろん・・・好きです。でも、お嬢様とあっしでは身分が違うんです」
「お前と結ばれないのなら、死んだ方がましだわ」
「お嬢様・・・」
「一緒に死んでくれる?」
「へい、もちろんです」
「いつか生まれ変わったら、そのときは一緒になりましょうね」

「運命のいたずらよね。好きになった男がライバル会社の御曹子なんて」
「まさか君があの会社のお嬢様だったとはね」
「現代のロミオとジュリエットだね」
「でも、時代が違うんだから、その気になれば一緒になることだってできるわよ」
「家も会社も、すべてを捨てて、駆け落ちでもするか?」
「無理よね。だったらいっそのこと心中でもする?」
「本気で言ってるのか?」
「冗談よ。ねえ、いつか生まれ変わったら、私たち一緒になれるかしら?」

「どうしても無理なのね」
「ああ、いくら科学が発展したからといって、やはり違う星で生まれた者同士ではね」
「皮肉なものね。科学が発展しなければ、何万光年も離れたところに住む私たちが出会うこともなかったのに」
「見た目もまったく変わりない僕らなのに・・・もちろん、僕は君の外見だけが好きなわけじゃない。君のすべてが好きだ」
「でも、生態が違うから、私はあなたの子供を産むことができないのね」
「ああ、僕はこの星では長く生きられないし、君は僕の星では長く生きられない」
「いつか生まれ変わったら、そのときは私たちが一緒に暮らせる世の中になっているかしら?」

「幸せになろうね」
「ああ、何だか僕は生まれるずっと前から君と一緒になることを求めていた気がするよ」
「不思議ね。私もそんな気がしていたの」
「もしかしたら、僕らは不幸にも結ばれなかった恋人の生まれ変わりなのかもしれないね」
「そうね。生まれた星も違う私たちが出会って、結婚できるなんて、昔だったらあり得ないことだものね」
「ああ、その昔の人たちの分まで幸せになろう」

                             了


BACK