Vol.27   永遠の愛

 遥か昔・・・
「こんなワタシのドコがいいの?」
「ナニもかもだよ」
「だってワタシはアナタのテノヒラにのるくらいのオオキサなのよ」
「そんなコトはカンケイないよ」
「ワタシだってアナタのことがスキ。でも・・・」
 まだ人類は誕生したばかりで、体の大きさもまちまちだった。男は身長20メートル。女はわずか30センチだった。
「フツウはオナジくらいのオオキサのヒトをスキになるのに」
「シカタないだろう。スキになってしまったんだから」
「でも、こんなにカラダのオオキサがチガッタら、ムスバれることはないわ」
「イッショにいられるだけでいい」
「それもムリよ。アナタがクシャミをしたらワタシはフキトバされるわ。アナタがネガエリをうったらワタシはツブされるわ」
「そうだなあ。でも、オレは・・・」
「ワタシもアナタがスキよ、でも・・・」
「コンド、ウマレてくるときは、カナラズ、イッショになろうな」
「ええ」

 昔・・・
「私たち、こんなに愛しあっているのにどうして?」
「お嬢さん、あっしはしがない丁稚奉公の身。お嬢さんとは身分が違い過ぎます」
 時は江戸時代。身分の差が絶対的な意味を持つ時代だった。大問屋の一人娘とそこに奉公する地方の貧しい農家の三男坊が愛し合うなど許されることではなかった。
「どうしても認められない仲なのね。だったら一緒に死んでおくれ」
「お嬢さん・・・」
「今度生まれてくるときは必ず一緒になろうね」
「へい」

 少し前・・・
「会ったこともない人なんだからあきらめもつくだろうに」
「会ったことはなくたって、結婚すると決めた人だし、それに運命を感じたんです。前世から結ばれることになっていたという気がするんです」
「そんなこと言ったって戦死してしまったのだから仕方ないだろう」
 戦時中、親に言われるままに身も知らぬ人と結婚することは当たり前の時代だった。結婚してすぐに夫に赤紙が来ることもままあった。結婚する前に招集され、そのまま帰らぬ人となる悲劇も珍しくはなかった。
「どうしてもあきらめきれないんです。私もあの人の後を追いたい。そして生まれ変わって一緒になりたい」

 現在・・・
「出会うのが遅かったんだよ」
「そんなこと言ったって、私はあなたが好きよ」
「俺だって君が好きだよ」
「だったら」
「女房には何の未練もない。でも、娘の顔を見ていると・・・」
 結婚に対する考え方もだいぶ変わって来た現代だが、まだ家族の絆には大きな意味があった。
「どうして俺たちはもっと早く出会わなかったんだろう」
「悔しいわ」
「今度生まれて来るときは必ず一緒になろう」

 未来・・・
「どうしても帰らなければいけないの」
「ああ、僕は地球に戻らなければならない。母国の土を踏むことが僕の夢だったんだから」
「こんなにあなたのことが好きなのに」
「僕だって君が好きだ」
 科学の進歩で人口は増大の一途をたどった。もはや地球はパンク状態となったが、宇宙開発も進み、他の惑星への移住が可能となった。それでも人口増加はとどまるところを知らず、深刻な環境問題となっていた。
 人々はコンピューターによって住むところを管理されおり、指示に従わなければ厳しい処罰が待っていた。地球以外の星で生まれ、死んでいくのも当たり前だった。人々は母なる星である地球に住むことを夢みたが、その希望がかなうのは奇跡に近い出来事だった。
「ああ、君と出会うとわかっていたら、地球への移住希望なんて出さなかったのに」
「今度生まれてくるときは必ず一緒になりましょう」

 遥か未来・・・
「それじゃ僕たちは・・・」
「ええ、残念ながら不適合です」
 人類の宇宙進出はさらに進み、他の惑星に住む知的生物とのコンタクトも持たれるようになった。そして男と女が存在する以上、異星の人同士が愛し合うこともあった。
 しかし、言ってみれば別の生物である。生物学的に結ばれることが不可能な場合もあった。
「もし、私たちが結ばれようとしたらどうなるのですか?」
「化学反応を起こして爆発します」
「ああ、この世に神はいないのか」
「今度生まれてくるときは絶対に・・・」

                                  了


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