Vol.18   黒雪姫

 昔、ある国のお妃に女の子が生まれました。肌は黒くくすんでとても醜い子でしたので黒雪姫と名付けられました。黒雪姫はスクスクと育ちましたが、少しも美しくはなりませんでした。
 お妃は秘蔵の鏡を取り出してこう尋ねました。
「鏡よ、鏡、この世で一番醜いのは誰だい?」
すると鏡はこう答えました。
「女王様、この世で一番醜いのは黒雪姫です」
 お妃はあまりの嬉しさに鏡を抱きしめて、小躍りしました。だって、これまでこの世で一番醜かったのはお妃自身だったのですから。
 お妃は黒雪姫の部屋に行くと、黒雪姫の頭をなでました。ようやく一人の女性として認められ、自分に変わって世界一醜い女性となった我が子が可愛くて仕方ありませんでした。
 ある日、黒雪姫が森を散歩していると、貧しい漁師が、黒雪姫を拐かし、王様から身代金を取ってやろうと黒雪姫に鉄砲を突きつけました。
 驚いた黒雪姫は泣き叫びました。その顔のあまりの醜さに驚いて、漁師は逃げ出してしまいましたが、怯えた黒雪姫はあてどなく森を歩き回り、迷子になってしまいました。黒雪姫は頭もあまり良くなかったのです。
 黒雪姫は小さな家を見つけ、中に入りました。そこには七人のこびとたちが住んでいました。こびとたちは自分の人並み外れた小さな体にコンプレックスを持っており、人目を避けて暮らしていましたが、黒雪姫の醜さに親近感を持ち、一緒に暮らすことにしました。
 平和な日々が続いたある日、黒雪姫は散歩しながら、木に生えていた毒リンゴをもいで食べてしまいました。なかなか黒雪姫が戻って来ないので、心配して捜しに来たこびとたちが見つけた時には、黒雪姫は死んだように動きませんでした。
 そこへ、ようやく黒雪姫を捜し当てたお妃が現れました。このままではまた自分が世界一醜い女性になってしまうと慌てたお妃は、世界中の賢者を集めて、黒雪姫の病気を調べさせました。その結果、王子様の口づけで黒雪姫が目覚めるということが分かりました。
 お妃は金に物を言わせて、黒雪姫と結婚するという王子様を捜し出しました。王子の口づけで黒雪姫は目覚めました。醜い親子は抱き合って喜びました。
 それから黒雪姫と王子は結婚し、黒雪姫によく似た醜い女の子が生まれました。お妃はとても優しいおばあさんになり、黒雪姫はとても優しいお母さんになり、そこそこ幸せに暮らしました。めでたし、めでたし。

                                  了


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