Vol.3   Mの童話集

   狼少年

 昔むかし、あるところに1人の少年がいました。  あるとき、その少年が「狼だ。狼が来たぞ」と叫びながら走って来ました。村の人は驚いて逃げ まし た。しかし、狼などやって来ません。少年が嘘をついていたのです。村の人はカンカンに怒っ て帰って行 きました。
 それから2、3日して、また少年が「狼だ。狼が来たぞ」と言いながら走って来ました。村の人 も逃げ ましたが、やはり狼は来ませんでした。
 その次の日、また少年が「狼だ。狼が来たぞ」と言って逃げて行きましたが、もう少年の言うこ とを信 じる人は誰もいません。しかし、今度は本当に狼が来たのです。村人はみんな狼に殺されて しまい、少年 だけが助かりました。
 人の言うことを信じないと、ひどい目にあうというお話でした。

   アリとキリギリス

 アリさんはとても働きものです。夏の暑い日も、汗を流しながら、いっしょうけんめい働いてい ます。 「おい、何をそんなにいっしょうけんめい働いているんだい?」
 なまけもののキリギリスが、そんなアリさんを見て、不思議そうにたずねました。
「冬になると、食べものがなくなってしまうから、今のうちに集めて、たくわえておくんだよ」
 アリさんは答える間も手を休めません。
「ふーん」
 アリさんの立派な考えもキリギリスには理解できないようです。しばらくの間、いっしょうけん めい働 くアリさんのことを、ポカンと見ていましたが、そのうちどこかに行ってしまいました。
 結局、その夏、キリギリスは遊んでばかりいました。
 やがて冬がやって来ました。アリさんは夏の間、いっしょうけんめい働いていたので、食べもの に困る ことはありません。
 逆に、夏の間、遊んでばかりいたキリギリスは、食べものがなくなって、ひもじい思いをしてい まし た。
「やい、アリ、食べものをよこせ!」
 空腹にたえられなくなったキリギリスがアリさんのところへおしかけて来ました。
「悪いけど、僕の分しかないから、あげられないよ」
「何だと、いいからよこせ!」
「だめだよ。君がなまけものだからいけないんだよ」
「何を生意気な」
 キリギリスは逆ギレして、アリさんにおそいかかりました。
 結局、キリギリスがアリさんをやっつけて、食べものを横取りしました。そして冬の間も遊んで 暮らし ました。
 1対1なら絶対にキリギリスの方が強ええよ。

   桃太郎 その1

 昔むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。おじいさんは山へ芝かりに、お ばあさ んは川へ洗濯に行きました。
 おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が、ドンブラコ、ドンブラコと流れて来 まし た。
 おばあさんは、その桃をひろうと、家に持って帰りました。
 山から帰ってきたおじいさんとその大きな桃を割ってみようとしていたとき、刑事がやって来ま した。
「おじいさん、おばあさん、遺失物取得の容疑で逮捕する」

   桃太郎 その2

 昔むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。おじいさんは山へ芝かりに、お ばあさ んは川へ洗濯に行きました。
 おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が、ドンブラコ、ドンブラコと流れて来 まし た。
 おばあさんは、その桃をひろうと、家に持って帰りました。本当は、落ちている物をひろって、 警察に 届けずに、持ち帰ってしまうのは悪いことですが、誰にもみつかりませんでした。
 山から帰ってきたおじいさんとその大きな桃を割ってみると、中から元気な男の子が出てきまし た。
 その子は、桃から生まれたので桃太郎と名づけられ、スクスクと育ちました。
 ある日、桃太郎は、おじいさんとおばあさんに、鬼ケ島に鬼を退治に行くと言いました。
 おばあさんに作ってもらったきびだんごを持って、桃太郎は旅立ちました。
「桃太郎さん、そのきびだんごを私に下さい」
 途中で、いぬが桃太郎に言いました。
「よし、これから鬼退治につきあうなら、あげよう」
「わかりました。おともします」
 こうして、いぬが仲間になりました。
「桃太郎さん、そのきびだんごを私に下さい」
 今度は、さるが桃太郎に言いました。
「よし、これから鬼退治につきあうなら、あげよう」
「わかりました。おともします」
「桃太郎さん、そのきびだんごを私に下さい」
 きじが桃太郎に言いました。
「よし、これから鬼退治につきあうなら、あげよう」
「わかりました。おともします」
 こうしてさるときじも仲間になりました。
 鬼ケ島行きの船にのるため、港についた桃太郎を刑事が呼びとめました。
「桃太郎、誘拐の容疑で逮捕する」

  桃太郎 その3

 昔むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。おじいさんは山へ芝かりに、お ばあさ んは川へ洗濯に行きました。
 おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が、ドンブラコ、ドンブラコと流れて来 まし た。
 おばあさんは、その桃をひろうと、家に持って帰りました。本当は、落ちている物をひろって、 警察に 届けずに、持ち帰ってしまうのは悪いことですが、誰にもみつかりませんでした。
 山から帰ってきたおじいさんとその大きな桃を割ってみると、中から元気な男の子が出てきまし た。
 その子は、桃から生まれたので桃太郎と名づけられ、スクスクと育ちました。
 ある日、桃太郎は、おじいさんとおばあさんに、鬼ケ島に鬼を退治に行くと言いました。
 おばあさんに作ってもらったきびだんごを持って、桃太郎は旅立ちました。
「桃太郎さん、そのきびだんごを私に下さい」
 途中で、いぬが桃太郎に言いました。
「よし、これから鬼退治につきあうなら、あげよう」
「わかりました。おともします」
 こうして、いぬが仲間になりました。
「桃太郎さん、そのきびだんごを私に下さい」
 今度は、さるが桃太郎に言いました。
「よし、これから鬼退治につきあうなら、あげよう」
「わかりました。おともします」
「桃太郎さん、そのきびだんごを私に下さい」
 きじが桃太郎に言いました。
「よし、これから鬼退治につきあうなら、あげよう」
「わかりました。おともします」
 こうしてさるときじも仲間になりました。
本当は、分別のない動物たちを物でまどわせて、連れ出すなんて悪いことですが、誰にもみつかり ません でした。
 鬼が島に着いた桃太郎は、鬼を退治して、鬼の持っていた宝ものを持ち帰りました。
 港に着いた桃太郎を刑事が待ちかまえていました。
「桃太郎、強盗傷害の容疑で逮捕する」

                             了


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