U2 / Boy (1980)
『 少年の見た世界 』 | |
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U2の、これがデビュー作。まだ楽器を持ち始めて僅かしかたっていない4人の若者が作った、ファースト・アルバムでありながら、すでにニューウェーブだった初期U2サウンドが確立されている、驚くべき作品。 ここでは、そのアルバム・ジャケット(アメリカでは少年愛を連想させるというので、ジャケットが刷りかえられている)とタイトルが示すとおり、少年のナイーブな内面と大人になっていくときの恐れ、葛藤が、瑞々しく赤裸々に綴られている。 だがなんといっても特筆すべきは、そんな恐れを抱きながら、それでも外の世界に向け飛び出して行こうとする熱気が、このアルバム全体を覆っていることである。そこに恐れという研ぎ澄まされた緊張感が相まって、ダイナミックな躍動感に転化され、非常に小気味良いリズムとなって迫ってくる。このビート感は、有無をも言わせぬものがある。 まだまだボノの声も若過ぎて微笑ましくもあり、サウンドも荒削りながら、このアルバムにはもう二度と表現できないような一瞬の結晶がある。少年や少女が大人になる少し手前、目の前に広がる広大な世界に立ち尽くし、どうしてよいか分らず、それでも第一歩目を踏み出したときの、きらきらとするような瞬間。それは誰にでも起こりうるけれど、決して誰にでも開いてくれる世界ではなく、だからこそこうやって音に刻みつけられた時、僕らは強く惹きつけられてしまうのだ。
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