Japanese

 

フリッパーズ・ギター 「海へ行くつもりじゃなかった」

 

 

   Subject: ボーイズ、トリコに火を放つ
     Date: Sun, 31 Jan 1999
     From: Kazuo Saito

 

  こんにちは。

  先日は楽しかったですね。

  お薦めのCDをおしえて、とのことでした。

  フリッパーズ・ギターの「海へ行くつもりじゃなかった」は

  とてもいいですよ。

  このフリッパーズのファースト・アルバムは、

  時間や場所など関係なく、

  小さな頃好きだったペパーミントのように、

  ちょっと特別な一枚。

  あのアルバムの中には、まだティーンだった頃の様々な想いが、

  つまっています。

 

  「はずせ、ぼくらのバッジをアノラックからはずせ

  引き出しの中にしまっておこう

  そしてぼくらは誓う、あの気持ちを決して忘れないと

  だから、さようなら」

 

  フリッパーズの2人(最初は5人だった)とは、

  たぶん同い年くらいで、聴いてきた音楽が似てるから、

  背景がなんだかとても分るような気がします。

  「オレンジジュースのファースト・アルバムをCD化するために、

  フリッパーズをつくった」といつか言っていました。

  このアルバムの中には、

  そんな彼らが大好きだったバンドたちへの想いが、

  たくさんあふれています。

 

  ネオ・アコースティックというジャンルがあって、

  音的には耳馴染みのよい爽やかなものなのですが、

  実はけっこうラジカルなものだったりもします。

  彼ら(モノクローム・セットやアズテック・カメラなど)が出てきた

  80年代初めの頃というと、

  エレクトロポップやハードロック(ヴァン・ヘイレンとか)が全盛のときで、

  そんな中あえてナチュラルな生音で語りかけるというのは、

  世界にたいする、

  静かな (そして確信的な)

  反抗でもあったのです。

  音だけネオアコ、というバンドばかりの今、

  実体のないネオ・アコ・ムーブメントは、

  どうも違う方向へ行ってしまったような気もします。

 

  フリッパーズはその点すごく意識的で、

  もうほんとに確信犯的。

  あのキャッチーでメロディアスなナンバーにのせ、

  醒めた感性と何もない

  (なくなってしまった)

  日常を歌います。

 

  たとえば上の「さようならパステルズ・バッジ」は、

  パステルズというバンドがあって、

  アノラックというジャンル (ネオ・アコに含まれる)で呼ばれていて、

  解散してしまった(その後再結成されたのですが)、

  世界はぼくらが聴いてきたものとは違ってきて、

  でもぼくらはぼくらの音を作り出していかなきゃならない、

  といったようなことを、

  曲を聴きながら感じます。

  かれらはその辺のバランス感覚とか

  シニカルなところとか、

  クールな視点というのがものすごい良くて、

  もう2度とそんなバンドは出てこないんだろうな、

  と思います。

 

  ちなみにフリッパーズ以外でお薦めの人たちを

  いくつか挙げておきます。

  聴いてみてください。

    ヴィーナス・ペーター

    ブリッジ (カジ・ヒデキがいた、たぶん)

    ネロリーズ

    ラヴ・マッシュルームズ

    コーネリアス (これはまあ当然ね)

    カヒミ・カリイ

    ロッテンハッツ (今のグレート3とヒックスヴィル)

  とまあこんなかんじかな。

  こう見るとだいたい解散しちゃってるような気もしますが・・。

 

  昨日は仕事が忙しく、

  またまた朝帰りでした。

  気づいたら土曜日は終わっていて、

  明日からまた仕事。

  海には行きたくても行けない毎日です。